2015/07/29

掌の中の小鳥

掌の中の小鳥 (創元推理文庫)
東京創元社 (2012-10-25)
売り上げランキング: 22,904
kindle版
■加納朋子
加納朋子の作品を読むのはかなり久しぶり。
上手い作家だという記憶もあり、今回、Amazonのレビューで評判が高かったこと、センスの良い女性バーテンダーが出てくるというので興味を持って読んでみた。
結論から先に言うと、日常系ミステリで、ミステリとしては悪くない。
ただ時代をけっこう反映している描写が多く、価値観など含めていささか古い感じが否めない。
また、決定的だったのはヒロインのことがどうしても最後まで好きになれないどころかどんどん嫌いになってしまったことで、読むのが苦痛だった。
この話、このヒロインを褒めている感想が多いから、わたしは少数派らしい。

連作短篇集。メインの登場人物は思っていたのと異なり、センスの良い女性バーテンダーはごく控えめに登場するだけだった。
第1話「掌の中の小鳥
最後まで読んだ身にはこの話のSCENE1だけ他のと設定が違うなあという感じ。
語り手は「僕」。名前は第2話で判明するが、冬城圭介という。若いサラリーマンの男性(大学時代から4年後らしいから26歳前後か)。
この話に出てきた容子という女性と先輩の佐々木氏がこの後も絡んでくると想像していたら第2話以降いっさい登場しなかった。
「僕」は「容子」を買いかぶりすぎじゃないのかなあ、芸術家としてだけではなく、ひととしての良心とか倫理観の面でも甘いわねえ。しょうもない女としか思えないんだが。思わせぶりに電話してきたりしてねえ。「殺されている」とはよく言えたもんだわね!

文中で「僕」が「グリーンのカード電話に寄り掛かり」電話をかけるシーンがあり、「ああこの時代は携帯電話まだ普及してなかったんだなあ」と思った。その後も若い女性の服装や髪形の描写などがバブル期のそれのイメージそのもの。
後でみたら初出は1993年~で、単行本が1995年7月刊。そりゃ古いわけだなあ! 文庫は2001年2月刊。
この話のSCENE1のラストでこの本のメイン・ヒロインとも言うべき女性が登場する。これがなんと鮮やかな赤のワンピースを着ているときた。「僕」はこの女性にどうやら一目惚れしたようなのだが、読み手はすまんが真っ赤なワンピースを着る女性という時点でなんだか苦手だなあ、と思ってしまったのだった。

第2話「桜月夜
バーEGG STANDと女性バーテンダー・泉さんがようやく登場。
(この話以降のお馴染みのキャストに彼女とセットで登場する「小柄な初老の男」がいるのだが、いつも花瓶である大きな壷の後ろから登場し、仙人じみた雰囲気を持っていることから通しで読んだらなんらかの種明かしがあるんだろうと思って読んでいったのだが…。)
ちなみに第2話でヒロインの名前も判明するが、これがちょっとした謎かけと絡んでいるのでここでネタバレするわけにはいかないのである。

第3話「自転車泥棒
この話の種明かしには「んなあほな…」と思ってしまった。ちょっと苦しくないスか。

第4話「できない相談
これは有名なミステリに似たトリックがあるなあ。話の本筋からそれるが、若い女性が子ども時代以来という久しぶりに会った異性の同級生の「知り合いのマンションに行く」のに付いていくっていうのはこの話が書かれた当時はどうだかしらないが現在では考えられないくらい危機意識が欠如している、とか思っちゃうのはやっぱりわたしが彼女を好きになれないからかなあ。

第5話「エッグ・スタンド
これもバブルっぽい話だなあ。150万の指輪が結果的に2つね…。
犯人の初恋の相手に対する感情はわからないでもないけど、いや、あかんでしょそれ。窃盗してどうするか。しかものうのうと別の相手と結婚してるし…。

読了後調べてみたら、わたしが加納さんの著作を初めて読んだのは2001年以前に数作、このブログ上に感想が残っているのは2002年9月に読んだ『沙羅は和子の名を呼ぶ』、2003年11月に読んだ『螺旋階段のアリス』。その感想を読んでみたら、すっかり忘れていたが、こんなことを書いていたのでびっくりした。
【以前加納さんのをまとめて数冊読んだときになんとなく感じたササクレ】
【今まで加納さんの著作を読んでいて「このひと私好みの作風だし、道具立ても雰囲気も悪くないんだけど、なんっかイマ一歩足らないというか……」と思っていた】
【加納朋子さんのを読むのは4作品目で、この人の創る世界は決して嫌いではないはずなのに、どこかぼんやりと合わないところがあり、よってファンに至らないという作家さんです。たぶん、それはちょっとしたトゲというかササクレみたいなもの。毒がダメってんじゃないんだけど。例えば若竹七海さんの毒なんか好きだし。なんなんだろうなあ。上手な作家さんなんですけどねえ。】

そうか、そうだったのか。昔も肌があわなかったのか…。
加納朋子は評価が高い作家さんである。ミステリとしてはわたしも好きなのでもっと読みたいのになんなんだろうなあ、相性ってやつなのかなあ。残念。