2015/06/28

俳句という遊び ――句会の空間 【再読】

俳句という遊び―句会の空間 (岩波新書)
小林 恭二
岩波書店
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■小林恭二
俳句関係の本続けて。
これは小林恭二がプロデュースした2日間の句会のはじまりから終わりまでを記録した本。
1日目を読んでいるとき、句会で飛び交った会話中心ではなく、小林恭二の後からの解説が多いのがちょっとどうかなあと思わないでもなかった。せっかく俳人がこれだけ集まってるのにね。でも2日目は俳人のやりとりが多く記されているんだけどみんな意外なほど口数少ない感じで、なるほどこれだけじゃ「本」にはならないかと納得。
構成的に、参加した俳人の紹介が間々に入るのがどうかと思った。こういうのは最初にまとめてやってほしい。

句会は、1990年4月中旬に行われた。参加者は、
三橋敏雄、安井浩二、高橋睦郎、坪内稔典、田中裕明、岸本尚毅、小澤實、山梨県境川村の自宅を第1日目の会場とした飯田龍太で俳人計8名、そして黒衣(くろこ)の岩波新書編集部の川上隆志氏、プロデューサーとして小林恭二。

俳句とは関係ないところで、飯田邸で俳人たちをもてなすために奥さまが手料理をふるまわれるのだが、そのなかに鯉こくがあり、その鯉が【自宅で飼っている鯉を二週間前から網ですくって、盥で断食させ、しこうして、身をしめ、泥臭さを抜いた上で、ようやく調理するというたいへんなしろものであった。】というのがすごい。ほかも初堀りの筍、煮物、手作りのこんにゃく、豚肉を蒸したもの、などなどということで、たいへん手間がかかった心づくし。こんなの並べられたら恐縮だなあ。

句会であるが、1日目は10の題にそって各々が詠み、それぞれを清記したあと、この句会では1題につき2句ずつ選ぶ、それも「一番良いと思ったもの」を正選としプラス1点、「一番劣る」と思ったものを逆選としマイナス1点として計算するというルール。
題は、「春」「金(銭も可)」「枝」「種」「坂」「甲斐」「闇」「いか(烏賊も可)」「眼鏡」「まんじゅう」

2日目は太宰治の「富士には月見草がよく似合う」で有名な天下茶屋にて。
一人10句ということだったが飯田龍太が9句だったので全79句。これを各々良いと思ったものを8句ずつ選んで、というやり方。

とにかくこの二日間はたいへんな緊張感だったようで、【ある人は後になって、句会がおこなわれている二日の間「ほとんど発狂状態だった」とわたしに言われました。】などと「はじめに」に書いてある。

句会で詠まれた俳句のほかに、参加者の紹介の部分で自薦10句が載っているので俳句がたくさん読める本であると同時に、句会がどんな段取りで進みどんな雰囲気なのかも読むことができる面白い本である。よくわからない句も、良いなと思う句も、自分で選んでみてその後プロの型の選評を読んで我が意を得たり「そうかそうなのか」と教わったり。

小林恭二は今回はクロコに徹してひとつも詠まなかったけど、詠んでも面白かったんじゃないかなー。
1991年4月岩波新書刊。2005年11月にアンコール復刊したときに新刊書店で購入した。現在は絶版。