2015/06/26

犬が星見た 【再々読】

犬が星見た―ロシア旅行 (中公文庫)
武田 百合子
中央公論新社
売り上げランキング: 20,048
■武田百合子
これは紙の本。キンドルでは電子書籍化されていない。
3回目の通読。
1969(昭和44)年に約1ヶ月かけて夫婦でロシアをめぐるツアーに参加したときのメモ書きをもとに執筆し、1979(昭和54)年に出版されたもの。
なお、百合子さんは1925年生まれ、夫の泰淳さんは1912年生まれなので、単純計算すると44歳と57歳のときの旅ということになる。
随分年の離れた夫婦だなあ。一回り以上違う。
読んでいて、夫君の妻への暴言の数々に「昔の旦那さんってこんなのが普通だったのかな」と驚きつつも「でも字面だけじゃわからんね、根底にお互いの信頼とかあるから平気なんだろうな、百合子さんも怒ってるふうじゃないし。」
読み終わってからふたりの年齢を調べてさらに納得。
泰淳さんのわがままぶり・お子様ぶりには「これは情が無ければとてもついていけないなあ」。でも全然ふつうのこととして描いてあるからふだんのほかの面とかで全部帳尻が合ってるのかもなあと。
夫婦のことはハタからみててもわかりませんね。

前もそう思ったんだろうけど今回好きだと思ったシーン。
朝のガラ空きの広場で百合子さんの背後で起こった交通事故、証言を求められて。
  〈ロシア語が話せない人間である〉ということと、〈私の背後で事故が起った。ドッカーンと音がしたので振り返ったのであるから、事故の起きる直前の車の状態は見ていない。だから証言は無理である。何しろ、ドッカーンと音がしたので振り返ったのであるから。〉ということを、私は婦人にわかってもらいたい。うしろ向きになって歩いたり、「ドッカーン」と発声して、はっと驚く仕草をしたり、心をつくし手をつくして、私が証人になれないということを説明する。結局、私は「ドッカーン」「ドッカーン」だけくり返して言っているばかりだ。

イイよなあ、よく考えるとユーモラスなんだけど、百合子さんご本人が至って真剣に大真面目にやっておられる、その気持ちで書いてあるのを読んでいるから読んでおかしく思ったりはしない、でもこの几帳面さ、異国で言葉が分からないということを全然卑下していない・卑屈になっていない、その純粋さがすんごく素晴らしいなあ、素敵なひとだなあと思う。

初読みの時の感想再読の時の感想