2015/06/14

芸人と俳人

芸人と俳人
芸人と俳人
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又吉 直樹 堀本 裕樹
集英社
売り上げランキング: 1,663
■又吉直樹・堀本裕樹
ピースの又吉さんが俳句の本を出す、「初めての俳句入門」というアオリ文句をネットで見てまず思ったことは「『初めて』かあ、『初めて』かなあ? 又吉さん『カキフライが無いなら来なかった』とか『まさかジープで来るとは』とかいう自由律俳句の本を出してはるし、きっちりした「俳句」は初めてにしてもめっちゃ素養ある「初めて」やんなあ」ということだった。つまり最初から「このひとは『出来る』初心者やろな」とハードルは上がっていた。あと表紙の写真がめっちゃオシャレでセンス良いな~とも思った。
しかし句集はほぼ買わないのでどうかな、スルーしようかなとも迷った。実際、発売して間もない先週に地元の書店に積んであるのをぱらりと中身を確かめて「あ、句集っていうか対談形式で学習過程を読んでいく形なんや、これは親しみやすいな」と思ったけどその場では買わなかった。しかしずっと意識のけっこう真ん中辺にとどまり続けて気になるので「やっぱり読みたい」と昨日同じ書店に行ったら残り1冊になっていたので焦って購入。俳句の本なんてあんまり売れないだろうとタカをくくっていたが又吉さんの人気をナメたらアカンのだった。

俳句とか短歌というのはどの流派、どの先生に教わるかでいろいろ違ってくると思う。この本の先生、堀本裕樹というかたについては何の予備知識も無かったが読んでいくと結構きっちり昔からの型を大事にする派なのかなという感じがした。又吉さんは1980年生まれ、堀本さんは1974年生まれで年齢の差は6歳、同世代感覚もありそうな、わりと近しい感覚の師弟かなという感じ。先生が親世代なのか、兄弟世代なのか、親よりもっと上なのかで教わるスタンスとかも変わってくると思うので…。
「俳句を習う、というのと同時に俳句に親しむ、という感じでこの先生なのかな」とかも考えた。
実際に読んでいくと、句の解釈をする中で恋愛の絡んだ思い出話とかに触れる箇所とかでそういうのが感じ取れた。読んでいるほうも気軽な気持ちで構えずに楽しめた。

帯に「2年の学びを経て」と書かれており、「2年もかかって又吉さんが少しずつ得られたものを1日で読んでしまう罪悪感」みたいなのを最初に持ったがしかし単行本1冊を2年かけて読むという読み方はわたしは出来ないので大事に丁寧に活字を追ってそれでも申し訳ないけれども1日(正確に言うと昨日の午後から今日の昼前)で読ませてもらったがすごく中身が濃くてでもわかりやすくて難しさが無くて、最初に思った通り又吉さんのレベルが高かった。具体的に1回の連載ごとに句を作っていくのだけど最初は定型句じゃなくて自由に作ってあって、3回目から指定されて定型句になる。それと、「季語エッセイ」というのが4つ2章ごとに挟まっていて、春と秋が又吉さん担当なのだけどこれも独特の視点で奇妙な凄みみたいのを感じる雰囲気を放っていた。

第8章で「句会」に挑戦するのだけど、そのメンバーがまた豪華! 又吉さん、堀本さん、中江(有里)さん、穂村(弘)さん、藤野(可織)さん。さすがのハイレベルな句会ですごかった。単純に穂村さんのファンなので嬉しかったし。
あ、ファンといえば直接は出てこなかったけど長嶋(有)さんのお名前が本書に出てきて「おっ」と思ったね、句会に参加されてたらもっと嬉しかったんだけどまあ難しいか…。

本書の初出は「すばる」2012年10月号から2014年10月号「ササる俳句 笑う俳句」という連載。
目次
第一章 俳句は「ひとり大喜利」である
第二章 五七五の「定型」をマスター
 季語エッセイ 春│蛙の目借時│又吉直樹
第三章 「季語」に親しもう
第四章 「切字」を武器にする!
 季語エッセイ 夏│子蟷螂│堀本裕樹
第五章 俳句の「技」を磨く
第六章 先人の「句集」を読む
 季語エッセイ 秋│灯火親しむ│又吉直樹
第七章 「選句」をしてみよう
第八章 いよいよ「句会」に挑戦!
 季語エッセイ 冬│狼│堀本裕樹
第九章 俳句トリップ「吟行」
第十章 芸人と俳人
 単行本特典 芸人と俳人の十二ヶ月

俳句を学習していくスタイルの本というと以前『他流試合 兜太・せいこうの新俳句鑑賞』というのを読んだことがあるけどあれをまた読み直してみたくなった。