2015/05/17

東京百景 【再読】

東京百景 (ヨシモトブックス)
又吉 直樹
ワニブックス
売り上げランキング: 6,540
■又吉直樹
近著『火花』を面白く読み、モデルはどういう方なのかなあとか思っていろいろネットなどを見ているうちに、書評家の大森(望)さんがエッセイの『東京百景』に同じエピソードが書いてあったりする部分もあるとおっしゃっていて、細かいことは忘れていたので再読してみた。そしたらコーデュロイのパンツの件は鳥籠パークの橋本さんという先輩との話(四十*三宿の住宅街)だった。また、後輩に奢ってお礼を言われたときに後輩のほうを見ずに「全然、全然」といつも言うのはチャイルドマシーンの山本吉貫さんという先輩との話(八十二*ルミネtheよしもと)だった。

前回はそんなに気にしなかったが、意識してみればこのエッセイには何カ所も花火についてふれる箇所があった。「花火が好き」とはっきり書いてあるし、夏の記念に花火を買ったり、そもそも又吉さんの最初の漫才コンビ名は「線香花火」だったとか。
あと、「おっしゃった」を「仰った」と漢字で書かれるのもわりと珍しいような。

本書はエッセイ集なのだけど、ところどころ虚構の世界が混じっている。既にこのときから「フィクション」を書いておられたのだとも云える。
正直、又吉さんの芸人さんとしての「笑い」はよくわからないのだが、書かれるものは素直に良いなと思う。
今回読み返していてもっとも美しいと思った部分を書き写す(九十三*湯島天神の瓦斯灯)より。なお、この部分の前のターバンのくだりもパロディ風で面白いのだが書き写す部分が長くなりすぎるので…。

  夏の間、火をつける機会がなかった線香花火が鞄にあった。暮れなずんでいた陽がようやく落ち、瓦斯灯が境内をほのかに照らした。線香花火に火をつけると、じりじりと火花が風景を剥がし、その下に描かれた秋を浮き彫りにした。もう贋作の夏さえも終わろうとしている。瓦斯灯がチカチカと点滅していた。

前回の『東京百景』感想はこちら。/ 『火花』の感想はこちら。