2015/04/07

朝霧 【再々読】

朝霧 (創元推理文庫)
朝霧 (創元推理文庫)
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北村 薫
東京創元社
売り上げランキング: 7,196
■北村薫
『太宰治の辞書』を読んだらこのシリーズを振り返りたくなり、『朝霧』を。
「山眠る」
「走り来るもの」
「朝霧」
の3篇。
この1冊の中で主人公は数年を経る。最初はまだ大学生、卒業論文をまとめにかかる夏、「ワープロを買った」というところからはじまる。パソコンじゃなくてワープロなところが「時代」だなあ。
「時代」といえば今回読み返していて、前に読んだときも思ったけど書き留めていなかったことをまた思った。それは、主人公のお母様の娘への話し方である。
おねえちゃんに、お客さんが来るから、お前も会っておきな」だとか「途中で、ちょっと顔だけ出してくれればいいさ
これは――最近の母親ではあんまりいないんじゃないかと思う。お父様ならありそうだけど。わたし自身は関西弁の圏内に育ったのであまり参考にならない。だけど、母親に「お前」と呼びかけられた記憶はない。
こういう部分を読むと、北村さんの年齢を考えたりする。昔に比べて親の子どもへの接し方が甘くなっているらしい、というのはよく聞くので……。北村さんの奥さまはお子様にこういう話しかたをされるのかしら?

あと、『太宰治の辞書』で主人公が結婚していたが相手についての情報が少なすぎていったいどういう職業だとか年齢だとかいっさいわからなかったのだが、『朝霧』を読み返してみたらそうそう、〝ベルリオーズの君" とでも呼びたくなるこんなひとと出会っていたんだよね。普通に続篇が書かれていたのならなんらかの関わりが『朝霧』の次で出てきそうな、そういうロマンチックで知的でお似合いな感じだった。読みたいなあ、でも「いまさら」だし著者が「娘の結婚相手なんか書きたくない」ッてんだからなあ…。

主人公は恋から遠い、遠ざけられていたけれど、この作品を読んだら男の子っぽい雰囲気の正ちゃんが海を眺めつつなかなか隅に置けないナ、ってな感じの台詞を云ってたりして、ふーんと思った。それにお子さんの年齢から計算するに、主人公も20で結婚したみたいだし、なんのかんのでとんとん拍子に進んだってことかしらねえ。

『朝霧』を読んでいるといろんなことが「ああ、続いているんだな」と思い当たるところがあちこちにあり、シリーズものならではの愉しみというものも味わった。変わったこともいろいろありそうだけど。落語が『朝霧』は濃厚だけど続篇はそうでもなかったなとか。
『朝霧』単行本は1998年。わたしは文庫で読んだので2004年(この文庫化も遅かったんだよなあ)。
一緒に歩んできたような気持ちで、今回も懐かしく親しんだ。やはりこのシリーズは特別だ。