2015/05/04

おべんとうの時間 3

おべんとうの時間 3 (翼の王国books)
阿部 了 阿部直美
木楽舎 (2015-04-15)
売り上げランキング: 324
■阿部了(写真)・阿部直美(文)
いつのまにか出ていた(2015.4.15刊)と一昨日の夜知り、昨日(4/28)帰りにあわてて買ってきた。
最初にやっぱり写真だけを順番に最後まで見てしまう。お弁当の持ち主さんの写真と、お弁当の写真が見開きで、次のページでそのひとがお弁当を食べているシーンの写真と、お名前と職業が種明かし(?)されて、左側のページはインタビューを受けて書かれた、そのひとの口調で書かれたまるで口述筆記みたいな阿部直美さんによる文章。一巡目は写真と文章をちらちら見ながらページを繰って、二巡目は写真を確かめるようにして文章を読んでいく。
お弁当についてのインタビューでもあるんだけど、そのひとの職業とか生活とか誰がお弁当を作っているのかとかの話。お弁当紹介っていうよりは人物紹介の色が濃い。あれ?このひとさっきの子のお父さんだ、なんていうつながりも面白い。

日本中にはお弁当を食べているひとがたくさんいるんだろうけどたとえば普通の会社員とかはこの本にはあんまり出てこなくて、変わった職業の方の、そして都心部じゃなくて地方の方のが多いっていうのはやっぱり「お弁当であればなんでも」じゃなくて「こういうひとのお弁当が撮りたい」というコンセプトというか写真家(阿部了さんの)興味・関心の先がどこにあるかっていうのがメインにあるからであって、そしてそれは時期によって移り変わっていくものである、らしい。このシリーズにはお弁当の記事以外にもこの本の仕事にまつわるエッセイが載っているんだけど、「村の移動販売」というタイトルのそれの内容がなかなか興味深くて、取材のきっかけが小学校5年生の娘さんが書いた「いどうはんばい、なんもく、あんどうさん、おにぎり」だったっていうのも凄いし、
一瞬わからず捨てそうになった。我に返って、丸めたその紙を見つめる。そうだった。テレビを見た娘が「安藤さん、おにぎり食べてたよ」と以前言ったことがあった。「安藤さんって誰?」と聞けば、「車で食べ物を売ってる人」と言う。いや、そんな会話をした気がする。それもかなり前の話だ。当時の私は、他の分野の人探しに夢中になっていたようである。メモを前に、さすがサトルの娘だと感心した。弁当情報をノートにマメに書きこむ父を見て、我が娘は育ったのだった。
というのが面白い。
お弁当を食べる習慣のある変わったひとの情報が入ってきてもそのときに関心が無いジャンルの人のことだったらまったくスルーしてしまうという、その感じが、ああ、なんていうか職人というのか芸術家肌というのか……でもって子どもさんのほうはもっと視野広く「あ、お弁当食べてるひとがいる、お父さんが興味あるかも?」なんつってちゃんとメモしてるわけで……それが後々実際役に立って仕事に結びついているわけで、ああ凄いなあと。

ふだんの記事ではそのひとに集中しているから書けない裏話的なものが間にある「エッセイ」で書かれるわけだけど、例えば「パラソルの下で」では取材の約束をしてそのときに「こんなふうに本になるんですよ」みたいに見本を見せたら奥さんが張り切って重箱におかずをたくさん詰めて持ってきたっていうエピソードがあって、以前の本にもそれに近いことが書いてあったけど、でも本当にこれはありそうな話で、だって自分ちのお弁当が写真撮られて名前と顔も出て雑誌に載るわ、ゆくゆくは本になって記録に残って誰が見るかわからないけど日本のたくさんのひとが見るかも知れない――ってなったときに本当に普段通りのそのまんまのお弁当出せるかって、やっぱりその多少に差はあれどチカラ入ってしまうだろう、って思うもん。もし自分のお弁当が載るとなったらとりあえず自分史上最大の気を使って「普段っぽいけどさりげなく良いお弁当に仕上げたい!それにはどういうおかずがイイだろう?色合いは?」って考えると思うもん。かといってアポなしでいきなり来て写真撮られて「本にしてもイイか?」と聞かれても結局は「いや、ちょっと待って、それなら別の日にちゃんとしたのを用意するからそれを撮って欲しい」ってなるだろうし。

百歩譲ってテレビの取材なら「流れていくリアルタイム」ということでオッケーになるかもしれないことが、「単行本になる」という前提だとやはりいろいろ、あるんじゃないかな。お弁当だけなら、そこまで無いかもしれないけど名前と顔が出るので、でもそれなしに、単純にお弁当の写真だけだったらこのシリーズは全然違うものね。やっぱり、「ひと」にスポットライトがあたっているから、そこに重点が置かれてそのうえで「そのひとの、お弁当」なのだから。

お弁当の具を見ていて、やっぱりダントツに入っているのは卵焼き。プチトマトとブロッコリーは彩り的に便利なこともあり、頻度高し。食べる側の人気が高いんだろうな、っていうのは塩鮭ね、これは冷めてもご飯がすすむから美味しい、わかるわかるー。おにぎりは案外少なくて、でも白ごはんそのままっていうのも少なくて、ふりかけだったり梅干しだったりお漬物的なものだったりが添えられている。1つのお弁当箱のひともいるけど、ごはんとおかずは別っていうのも多くて、中には3つとか4つとか入れ物があるひとも何人か。

作ってくれるのは自分、あるいはお嫁さん、お母さん、おばあちゃん。
それぞれに個性があるんだけど、ああでも日本のお弁当だな、美味しそうだな、って感心する。こういう場合のだからかもだけど、見るからに冷凍食品っていうのは無いかな。
いろんなものを、ちょこちょこ詰めていく、美味しく、見た目もきれいに出来たらきっとわくわくする。
毎日忙しい中で習慣化してしまうとついつい楽な方に楽な方に流れがちだけど、たまにこういう本を見て「理想」を思い出すというか、純粋に刺激を受けるというか、やっぱ美味しそうだよなあこういうの。見ているだけで楽しくなる、嬉しくなる本。

3冊だし、区切りかな、どうだろうと読んでいったら最後の最後に「おべんとうの旅は、これからも続きます。」と書いてあって、こころのなかで思わず小さくガッツポーズをした。

※本書にはレシピは載っていません。