2015/04/27

ランチのアッコちゃん

ランチのアッコちゃん
ランチのアッコちゃん
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双葉社 (2014-02-05)
売り上げランキング: 2,560
kindle版
■柚木麻子
単行本が本屋で表紙見せで並べられているのを見たときから気にはなっていた。が、スススと寄って行ってはハッとなり「ちがうわたしは美味しそうなお弁当に惹かれただけでこれは小説! 食べられないよ~」と自分に言い聞かせていた。なんせ読んだことが無い作家さんなのでいきなり単行本はハードルが高かったこともあるし。妙にプッシュされているのもよくわからなかった。
でもまあずっと気になるし、文庫化したし、kindle版も出てるし。
というわけで読んでみた。
「ランチのアッコちゃん」というタイトルで装丁が可愛らしいお弁当の写真なので(なんだかお子様向けみたいなおかずだしなあ)、アッコちゃんと呼ばれて親しまれている二十代前半のOLさんが主人公かな、とぼんやりイメージを持っていた。
そしたら語り手の名前は澤田三智子で、派遣社員だった。
そしてアッコちゃんというのは45歳の独身女性で、営業部長のバリキャリウーマンだった。身長が173センチあって敦子という名前で髪型などから和○アキ子を連想させることから「アッコさん」「アッコ女史」というあだ名(面と向かって呼ぶ勇気のある社員はいないらしい)がついたと。
アッコちゃんなんていう可愛らしいタイトルのくせに全然違うアッコさんの設定にしてあるなんてどういうことだろう、とか思いつつも読みやすいのでさくさく読んでいくとアッコさんは会社とは違う面をお昼休憩(ランチ)のときに行く先々の店で見せており、そこでは「アッコちゃん」と呼ばれ皆から親しまれているということがわかってきた。仕事モードと休憩モードでは肩肘張ってないから人受けが違うってこと、かなあ。でもそんな極端に変わるかなー。

この本は全部ランチのアッコちゃんシリーズなのかと思ったらそうでもなかった、というか4篇収録されていて、表題作と「夜食のアッコちゃん」はくっきりシリーズものの作りだが「夜の大捜査先生」は主人公(語り手)が肉食系の30歳独身女性(十代から夜の町で遊びまくっていた不良タイプ)で終盤ちょこっとだけアッコさんが超脇役で出てくるだけだし、「ゆとりのビアガーデン」に至ってはもはや通行人として澤田三智子嬢が走り去る描写のみ。うーん本書の続篇『3時のアッコちゃん』というのが近著にあるくらいだから1冊全部2編目までの感じかなと思ったんだけど違うんだなあ。

でも小説としては最終話「ゆとりのビアガーデン」が一番面白かった。良いなあビアガーデン。
4篇ともかなりドリームというかそんなにうまいこと行くのかなあって感じがしないでもないけど、まあ、こういうタイプのお話はリアリティよりも楽しさだ、はったりでも呑気にプラスのパワーをくれたらそれで良い。この小説を読んで社会人生活の参考になるかといわれたらまあそのままではとても無理だけど。
「ランチのアッコちゃん」というタイトルのわりにランチのバリエーションが少なくてちょっと拍子抜けした。
「夜食のアッコちゃん」はポトフの話で、ポトフだけでひとがそんなに喜んでくれるものなのかとびっくりしたけどまあこれもファンタジーよね。
「夜の大捜査先生」は主人公のキャラがちょっとひどくて辟易した。

それにしても普通の会社は副業ダメなところが多いんじゃないのかなーまあ仕事じゃないからいいのかなー日中フルで働いて昼休みだけ手伝いとか夜中だけ手伝いとかすごい体力だなあと驚きながら読んだ。

あっというまに読み終わってしまったが単純にこの本はページ数が少ないのだった。kindleでは同条件なので総ページ比較がしやすいが、本書はkindle版でトータル1871、吉本ばなな『キッチン』は薄い本だけどそれでも2190ある。『草枕』もそう長くないけど2747あるし、『さらば愛しき女よ』は4386、『八百万の死にざま』は7336である。
そういえば単行本が出たときに編集サイドがあえて短めにして早く単行本の形にまとめたかった、というような記事をどこかで読んだことがある。単行本だったらある程度の長さがないと、しかも単価千円越えてるのに損した気がするけどなと思ったことを覚えている。

本書は読むと元気が出るということでかつて本屋大賞にもノミネートされた(落選)ということだが、この本を読んでそのまま会社生活に反映させよう、それできっと上手くいくぜと思える社会人はまああんまりいないだろう。いろいろ問題が起こってるところまでは「あるある」と思っただけに「そんな簡単に単純に解決するかなあ?」って、まあ肩肘張らずに気楽にエンタメ、ドリームを楽しめたから「元気」をもらえたということになるのカナ?