2015/04/21

鍋奉行犯科帳

鍋奉行犯科帳 鍋奉行犯科帳シリーズ (集英社文庫)
集英社 (2014-02-07)
売り上げランキング: 25,205
kindle版
■田中啓文
田中啓文といえば駄洒落の小説を書かれたり落語にお詳しかったりするが、この作品タイトル(シリーズ)を見たときにああこれは一定量の面白さは絶対にあるなと確信できた。
「鍋奉行」は現代にも主に冬場を中心に活躍し喜ばれているのか迷惑がられているのかあやしいところだが、本書の鍋奉行は本物のお奉行さまである。

江戸時代の、大坂が舞台。

主人公、村越勇太郎は21歳、大坂西町奉行所の定町廻り同心を代々務める家の嫡男。
いや、主人公はタイトルにもなっているから大坂西町奉行・大邉久右衛門釡介なのかなあ。ちなみにこの御仁が花街で頂戴したあだ名は「大鍋食う衛門」だったというからだいたいのことは察せられよう。良く言えば食通だが単なる食い意地のはった駄々っ子という気も…。
そういえば同著者の落語家さんの話、笑酔亭梅寿謎解噺シリーズもタイトルには梅寿という名前が来ているが、メインの視点で書かれるのはその若い弟子の梅駆(バイク)である。そのパターンと思ったらいいのかな(本作品中に伊丹の銘酒『梅寿』というのが出てきて思わずニヤリ)。
同心が中心的な話だと江戸の町が舞台で八丁堀などが馴染み深いが、こちとら関西人。知ってる地名出るかな、むかしの大阪についていろいろ書いてあるのか知らん、などと興味津々で読んだ。

読んでみると大阪観光、というふうまではいかないが、とりあえず会話が現代の大阪弁よりもっとコテコテのそれで、なかなか読んでいて面白い。今日び、こんなのを喋っているのは落語家さんくらいではないかと思うが「味のある言葉やなあ」と思う。逆に関西弁が苦手なひとには向かないシリーズでもあるということだが。
大阪弁と江戸時代の武家言葉とのコラボレーション!(違うか)が小気味良いというか、新鮮というか、台詞読んでいるだけで頬が緩むわぁ。特に勇太郎の母御、かつて難波新地一の美妓と云われた芸子・文鶴、現在は武家の村越家の奥・村越すゑの女言葉がやわらかくていい。「だんない」とか今は周りに喋るひとはいないが意味はわかる。ドラマとかで観たことがあるからかなあ。

短編集だけどいちおう時系列で地味なリンクもあるから連作短篇集とも云えるのかな。
事件が起こってそれを解決するという流れなのでミステリーでもある。グルメ・エンタメ・ミステリー。あと、シリーズが進むと勇太郎の恋愛関係ももっとくっきりしてくるのかしら、小糸ちゃんが有力かなやっぱ(彼自身はいまのところ女性の前でへどもどしてしまう奥手タイプ)。

第一話 フグは食いたし
第二話 ウナギとりめせ
第三話 カツオと武士
第四話 絵に描いた餅

タイトルで中身に書かれている食材がだいたいそのままである、第一話には鯛も出てきてそれを使った鍋料理がすんごく美味しそうだったけど(豆腐とかつかってふわふわにしてあるとか書いてある、江戸時代の武士の食べ物がふわふわとかイメージと全然違うけど実際どうだったんだろ)。
この話はお腹が空くシリーズでもあるかもしれない。
影響を受けて、本日の晩ごはんのメニューにはカツオのタタキを加えた(さすがにフグは無かったしウナギも昨今は高いし中国製しかないし)。ああでも美味しいうな丼(マムシ)が食べたいなあ~今年の夏はどうにかなるかなあ~。