2015/03/30

みちのくの人形たち

みちのくの人形たち (中公文庫)
中央公論新社 (2012-12-19)
売り上げランキング: 21,917
kindle版
■深沢七郎
小川洋子と平松洋子の共著『洋子さんの本棚』で平松さんが挙げて小川さんと絶賛していて興味を持った本。
1981年に『みちのくの人形たち』で谷崎潤一郎賞を受賞しているそうだ。
このかたの代表作である『楢山節考』は読んだことが無いんだけど嵐山光三郎『桃仙人』は読んだことがある(わたしは2001年にちくま文庫で読んだけどいま調べたらちくま文庫は絶版になってて中公文庫から新たに出てるようだ。感想は残っていない)。
あとエッセイ『言わなければよかったのに日記』の感想はあるけどごく短いので独立記事にならない。ついでにここに写しておこう。

言わなければよかったのに日記 (中公文庫)
深沢 七郎
中央公論社
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このあいだから少しずつ読んでいるのは深沢七郎『言わなければよかったのに日記』。嵐山光三郎さんの『桃仙人』のモデルってこの人だったと思う、タイトルにも非常に共感して(笑)、それでちょっと読もうかと。ああそうか『楢山節考』書いたひとなんですね……。未読ですけど、「姥捨て山」とかのハナシだったと思う、テーマが強烈なので覚えていた。そういうイメージとは違う、なんか子どもみたいなひと、驚くべき少年ぽさというか、マイペースというか、……なんて言ったらいいのかなあ。今でいう、「天然」だと思う。純粋といえば純粋。フーン。。。と思いつつ読んでいます。(2003.5.31)

みちのくの人形たち』は表題作をはじめとする7篇の短篇集。
表題作は小川さんもおっしゃってらしたけど、知らなければ実話かと思っちゃうような凄みというか独特の文体が朴訥さがあるというか。
特に「みちのく」で強く感じたんだけど決して美文じゃないしこなれていない文章で、同じ意味の文が何回も出てきたり、会話のカギカッコの後にいちいち「と私。」「と彼。」とか書いてあったり、深沢七郎が書いたと思うからこそ読んでいるけど無名のひとが書いたんなら「なんてひどい文章だ」と切り捨てられそうな。
しかし翻訳についてのエッセイなんかでもしばしば云われているように、スラスラ読める文章だけが作品として良いかというと決してそうでもない。むしろこういうあちこちで引っかかってしまうような、その変な文体が絶妙な効果を生んだりするのだ。7篇読んでみればわかるけど、話によって書き方が違う。これは、わざとなのか、無意識によるものなのか……深沢七郎のキャラから云って、天然のような気がする。

みちのくの人形たち ★★★★
もじずりの花の話からみちのくの村里へ、逆さ屏風はまだふつうに「そういうこともあるか」と読めたが両手を切り落とされて云々、こけしのくだり、帰ってきたきょうだいの気を付けのぴっちり腕をくっつけた姿勢、そして帰りのバスでの主人公の視線、考えついたことに「ああ、洋子さんたちがおっしゃっていたのはこの世界か」と思った。これを無防備に予備知識なしに読んだらそりゃぶっ飛ぶだろう。わたしはだいぶ構えて読んだのである意味もったいないことしたような、でもあの本読まなければ知らない世界だったし。
こけしを無心に見られなくなりそうだなあ。
ちなみに百人一首の「しのぶもじずり」はねじ花のこととは習わなかったような気がするが。
そしてねじ花は昔住んでいた近所で見つけて写真に収めたことがあったし、なんと現在住んでいる場所でもよく見かける花だったりする(近畿在住でみちのくじゃないけどね)。写真を貼っつけておきませう。

秘戯 ★★★
身体に異常を感じて自分の死期が近いことを悟った「私」が知人と息子を誘って、懐かしの土地である博多を訪れ旧交を温める話、なんだけどいちいち話し手の自意識が高くてなんだか癇に障る。地元の人間じゃないのに四十年ぶりに博多に帰って博多弁を話すのはまあいいんだけどそれを「連れの三人に聞かせたい」が為に「大声になった」り「俺は博多通なのだ」と意識したりしてる部分が何度も出てきてうんざりする。
それを我慢して読んでいったら博多の「博多人形」というのか「童謡人形」というのの「夢」というのが出てきて、これは裏がどうやら猥画的なものになっている、そしてそれは見たらすぐ割って壊す、そういう風習があったみたいな話になって、それと昔からかっていた純朴なひととのエピソードが良かったので最後まで読んで良かったなあと思った。

アラビア狂想曲 ★
これはギターのターレガ作曲「アラビア狂想曲」を弾いて「想いうかべた」作品らしいが、まあうんとよく云えば『百年の孤独』的な猥雑で雑多で狭い集落の中のぐるぐる回るような人間関係というか。読んでいてなんじゃこりゃーと思った。

をんな曼陀羅 ★★
フランスの画家フォートリエが日本に来たときに顔を合わせて、そのときに絵をもらって、それをめぐる話。何故かいろんなおんなのひとがその絵に影響されてどうのこうの、という不思議な感覚。それにしても絵をもらってそれがあんまり気に入らないからといって虫の糞まみれになってるような扱いとかちょっとどうかと思う。

『破れ草紙』に據るレポート ★★★
「破られたこと」に公式にはなっているけど破られていない草紙に書かれていた「畳屋せい妻きちの自白書き留」の話。最初のほう、その草紙のモデルになった実話(?)の名前のこととかそういうのをぐだぐだ云っているところはちょっと冗長だったけどそのあとの本筋に入ったらぐっと面白くなった。「かまいたち」ってほんとにあったのかなあ。いまもあるのかなあ。でも清吉のはえげつない、まあ相手が全部悪人なので勧善懲悪的にはすっとするのかもだけど。

和人のユーカラ ★★
北海道の大雪山の話からはじまり、3年前に「私」が出会った不思議な青年の思い出と彼にまた会いたくて捜し歩く話。最初アイヌ人かと思った彼は後でアイヌのひとに聞いてみるとアイヌ人より前から蝦夷に住んでいたひとだった…。北海道にそのイメージは無かったけどタンポポがたくさんたくさん咲いているとこの話では書いてある。そして種になったふわふわのあの丸いやつを「幽霊タンポポ」と云うと…。異文化の侵略とか民族排斥とかそういう話なのかなあ…と考えながら読んだけど難しかったな。

いろひめの水 ★
都内の下町のはずれのスーパーの隠居した「ワシ」は妻と37歳の息子とその妻とで真面目に暮らしていた。あるとき近所の知人が入院してその後出身地の九州に「大名旅行」をしてその後あっというまに亡くなったという話を聞いた。それから季節が変わり秋も深まった頃、「ワシ」は60年ぶりに故郷である北海道に行くことを思い立つ。そして電車を乗りつぎ訪れた根室で旧友に出会い、突如思いついて両親の墓参りをする……。
そこで話が展開していくのかと思いきやすごくあっさり家に帰ってきてしまって、そしてそこでまた近所のひとの訃報を聞く。そこで「まっ青」になって、北海道のサケ川で遊んだときのことを思い出すところからなんだか現実と妄想の境目が曖昧になっていっていきなり「いろひめの水」が出てくるそのへんのくだりがよくわからないなあと思っていたら突然話が終わる。うーん。


桃仙人―小説深沢七郎 (ちくま文庫)
嵐山 光三郎
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