2015/03/29

素晴らしき犯罪

素晴らしき犯罪
素晴らしき犯罪
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グーテンベルク21 (2012-12-19)
売り上げランキング: 29,643
kindle版
■クレイグ・ライス 翻訳:小泉喜美子
本書は1943年に原著が発行された"Having Wonderful Crime"の小泉喜美子翻訳による1982年2月ハヤカワ・ミステリ・文庫版が久しく絶版重版未定になっていたものがグーテンベルク21という版元から2012年12月19日付けで配信された電子書籍版である。

kindleはまだまだソースが少ないからいろいろ検索して読むものを探しているのだが、その中でふっとこれが上がってきた。クレイグ・ライスで検索していたわけではなく、全然別の、「中公文庫」というくくりで検索していた後の方で(どういう理由かは不明)。

最初見たとき、「えっ、クレイグ・ライス? 『素晴らしき犯罪』って、読んだ記憶無いような…しかも翻訳者小泉喜美子さんって、えーと、これ既読だっけ?」。翻訳書の場合、邦題が見たこと無くても実は別の邦題邦訳で既読、ということがままあるので油断できない。しかもハヤカワとか創元推理とか書いていない、版元がわからない(グーテンベルク21とは表紙に書いてあったがそれが版元名とはその時点では知らなかった)。で、原タイトルの"Having Wonderful Crime"を自分のパソコン内検索してみたらわたしがクレイグ・ライスにハマった2003年頃に既に書店で探しても見つけられなかった、絶版本だと判明、当然未読、半分信じられないような喜びにどきどきしながらクリック購入した。

気になるので最初に「訳者あとがき」を読んでみたが、1982年時点のハヤカワ文庫として出版されたときの内容でしかなく、「グーテンベルグ21」についての記述はいっさい無かった。
奥付を見てみると、著作権所有者は小泉喜美子。
【グーテンベルク21(Gutenberg21)は(有)グーテンベルク21の商標です。】と書いてある。
パソコンのインターネットでググってみた。
最初にホームページを見たら「デジタル書店」とは書いてあるが「グーテンベルク21」が何なのかの説明などは見つけられなかったので他を見たらこんな感じだった。
ウィキペディア:プロジェクト・グーテンベルク
はてなキーワード:グーテンベルク21
プロジェクト・グーテンベルクはアメリカの話みたいだし「著作権の切れた…」と書いてあるからグーテンベルク21は直接は関係ない、のかなー。だってこの本の著作権はまだ小泉さんにあるって書いてあるしね。でも絶版だから早川から買い取ったってことなのかな。

とにかく読めて有難い!

本書は弁護士J・J・マローンとジェイク・ジャスタスとヘレン・ジャスタスのトリオが繰り広げるドタバタ・コメディ・ミステリ・シリーズの第7弾。
「訳者あとがき」によればかの江戸川乱歩氏が旧版の解説で激賞しているらしい。

実際読んでみての感想は、うーん、これは初読み時より再読時が楽しいパターンの作品かも。
初読み時はとにかく五里霧中だから、主筋の「誰がどのようにしてどういう理由で殺人を行ったか」にどうしても意識が向きがちで、だけどこのシリーズではお馴染みのこととは言え、かなり脇道に逸れがちというか時には冗長とすら思える各人が勝手に行動しておとなしくしておいてくれればもう少しすんなり行くであろう成り行きをしっちゃかめっちゃかにしてくれる、のである。そして犯罪事件とは別に描かれる主要キャラたちの動き――そもそもジェイクがヘレンにサプライズで喜ばせようと試みていることの目的と効果が理解しがたいうえに、それをなさんが為に行方不明になって連絡も入れずに心配のあまり食事ものどを通らない状態にまでさせるとか意味不明だし!

このシリーズを偏愛していればこそ、最後まで投げ出さずに読み通すしそれなりに楽しめもしたが、単に「ミステリー読者」として読んでいたらかなり忍耐力を要される話のような気がする。3人がほとんど一緒にいないのがよくないんだよね。そしてそもそもはジェイクが良くないんだ。
いつもはシカゴが舞台なんだけど、これは珍しくニューヨークが舞台。マローンは始終シカゴに帰りたがっている。

以下は未読のかたはスルー推奨。最後の展開についての感想になっています(★~★は白文字。反転してお読みください)。

最終部の犯人判明、ミステリーとしての大筋がわかってみればそれはなかなか興味深い展開だったが。犯人は★そう意外では無かったが、犯人以外のある人物のとった行動がこのミステリーを非常に複雑な素晴らしいものにしていたことがわかったのだ。でも、そのひとの心理は想像するだにもの凄い壮絶な、想像を絶する決意と行動力であったなあ。凡人には無理では。いや、でもその状況に置かれて、その状況でなおかつ犯人に対する唯一にして最大の復讐を思い立ったとしたらそれくらいのことは出来てしまうのか。★などと読み終わってからあれこれ忖度してみたり。

クレイグ・ライスのこのシリーズの多くが現在絶版になってしまっているのはさびしく思う。
マローン・シリーズについて別途まとめた過去の記事を最新版に直したので、関心のあるかたはどうぞご覧ください。