2015/03/24

ピーターとペーターの狭間で

ピーターとペーターの狭間で (ちくま文庫)
筑摩書房 (2013-10-18)
売り上げランキング: 28,367
kindle版
■青山南
何年か前にこの本の存在を知り買おうとしたら絶版重版未定だったのであら残念、となったことがあった。
kindleで何かいい本はないかと暇つぶしに検索していたらこれが¥600で読めることがわかり、即購入。

青山南という翻訳家のことを知ったのは「本の雑誌」誌上での連載によってであり、残念ながらこの先生の訳した本を読んだことはざっとウィキペディアを見る限り無さそう(絵本系が多いのかな?)
エッセイはちくま文庫の『木をみて森をみない』を2004年9月にざっくり読んだ記録があるがこのときはちゃんと最後まで目を通したのかな…。

本書は1987年2月本の雑誌社より刊行され、1991年8月にちくま文庫に収録された。2006年3月筑摩eBOOKS版発行。
タイトルや著者の職業から翻訳にまつわるよもやま話だろうというのは想像できており、そういう話が好きなのでこれも読みたかったのだ。

で、読んでみての感想だが、内容的にやや古くなっているものもあるがいまでも充分通用する興味深いエッセイで、なかなか良かった。当時の日本の翻訳出版業界ってそうだったんだとわかるのとか面白い(ブローティガンが流行ってたんだなあ)とか(『ガープの世界』にタイトルが決まるまでにそんなことがあったとは)とか(英訳の場合「百年の孤独」の「百」に付くのは「one」か「a」か論争だなんて面白すぎる)とか。
ほかにも、黒人の訛りは何故全部東北弁なんだ・地理的位置的に九州のどこかの方言が正しいだろうという説があったり、ニューヨークの当時最先端の文芸誌紹介はいま読んでもかなりクールでカッコ良かったり。

英語の単語で日本でカタカナ表記されているもののいくつかを挙げ、原語の意味とあわせてその遣い方間違ってるよ、おかしいよ的な指摘記事が後半で、これも今もそのまままかり通っているのが結構あるなあなどと感心しながら読んだ。スタンスとか、使っちゃってる。うっ。コンセプトとポリシーの違いとか、うわ、そうだったんだーみたいな。

それにしても本書で村上春樹について触れた部分がけっこう目についたのと、関連で「デレク・ハートフィールド」なる作家についてまるで実在するかのように書かれているので目をぱちくりしてしまった。くだんの作家については村上氏『風の歌を聴け』に詳しいのだが、そしてそれを読んでハートフィールドを読みたいと図書館や本屋で探しまくる読者が続出したらしいのだが、その存在は完全なる村上春樹の創作ということでファイナル・アンサーらしいんだよね。過日、同著を再読したときにネットで調べて納得していたのにまたもこんなところでさも本当らしくその伝記作家のマックルーア氏との会話など書かれていて、ちょっとだけ信じそうになって混乱しちゃったよ。
ハートフィールドについてはウィキペディアにも載っている。

目次を書きだしておこう。
翻訳うらばなし
失語症で何が悪い/ガープ戦史/不妊の星々の伝説/一百年の孤独/本屋と棺桶/ブローティガン釣り/リタの片想い/ロスのある生活/ピーターとペーター/翻訳書のタイトルについて/なんでい・ヴォネガット/キール切り切り舞い/南部の東北弁/ニューヨークの文芸誌/特殊浴場異聞/ヴェトナムのゴム判/おぞましい言葉/訳者不在と著者不在/訳注の傾向と対策/江戸川橋の本の虫/ミス・グッバイを探して/カタカナの魔術師/ミスター・よしきた/長谷川四郎の教え/フォークナーを食う/アコガレの英会話の先生/終りを待ちながら/小判鮫の反乱/ピクニックは〝イン〟だな/ピュアでレイジー
いまは早くも死語なれど
ハイテク/フリーク/ゲイ/ソフィスティケイテッド/フェミニスト/ディグ/パフォーマンス/ブルシット/ナード/スノッブ/コンセプト/シミュレーション/ヘヴィメタル/エグゼクティヴ/スタンス/オーセンティック/コンテンポラリー/フリー
ピーターとぺーターの狭間で
ピーターとペーターの狭間で

あとがき/文庫版へのあとがき

この本が絶版なのはまあマニアックだからかな? それにしても青山南はタイトルをつけるのがうまい。