2015/03/03

こなもん屋うま子

こなもん屋うま子
こなもん屋うま子
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実業之日本社 (2014-03-28)
売り上げランキング: 7,783
kindle版
■田中啓文
本書は2011年10月実業之日本社刊の単行本『こなもん屋馬子』の2013年8月実業之日本社文庫版『こなもん屋うま子』(改題)の電子書籍版である。
文庫本で買うと¥669円だが電子版は¥245円とかなりお安い(ただし、解説{熊谷真菜}は載っていない)。
この作家は笑酔亭梅寿謎解噺シリーズでギャグ系の話が面白いことはわかっていたし、関西在住で「こなもん」は大好きなので買ってみたら大正解だった。

「こなもん」は「粉もん」で、大阪弁で小麦粉を主とする食べ物全般をざっくり指す言葉。ウィキペディアの「粉食」の項目の中に【特に関西圏の食文化について言及する際、たこ焼きやお好み焼き等の小麦粉を使ったそれらを総称し、「粉物文化」などと呼称することがある】との記述がある。
どのくらいをイメージしているかは個人差があると思うのだけれども、本書ではラーメンやピザも「こなもん」のくくりに入っていたのでちょっとびっくりした。「まあ、そら小麦粉つこてるけどなあ」という感じだ。小説としてバリエーションを出すためだろう。

本書の目次はこうなっている。

・豚玉のジョー
・たこ焼きのジュン
・おうどんのリュウ
・焼きそばのケン
・マルゲリータのジンペイ
・豚まんのコーザブロー
・ラーメンの喝瑛

文庫本の内容紹介文をコピペさせてもらう。【その店は、大阪のどこかの町にある。仕事に、人生に、さまざまな悩みを抱える人びとが、いかにも「大阪のおばはん」の女店主・蘇我家馬子がつくるたこ焼き、お好み焼き、うどん、ピザ、焼きそば、豚まんなど、絶品「こなもん」料理を口にした途端…神出鬼没の店「馬子屋」を舞台に繰り広げられる、爆笑につぐ爆笑、そして感動と満腹(!?)のB級グルメミステリー!

何故「大阪のどこか」かというのは読んでいけばわかるのだけれど、話ごとにその店のある町の名前が違う。しかもその話がとりあえず収まるたびに店の所在を登場人物が見つけられなくなっている、という不思議設定なのだ。店主・馬子の正体も謎で、読めば読むほど人間離れしており「もしや、こなもんの妖精さんなのでは(そんな儚げな外見では無いが)…」なんて思っちゃうし。
つまり、これはファンタジーなんである。
そして、各話ごとにちょっとした謎とか問題が出てきてそれを解決していくというスタイルなのでミステリー的な要素もある(人が死ぬとかは無し、かといって日常の謎、という雰囲気でも無い)。
各話の話し手が毎回その道のちょっとした有名人で、最後にその正体が明かされるというパターン。

毎回ハッピー・エンドなのですごく安心して読めた。馬子さんの作るものは全部めっちゃ美味しそうなのだがレシピが載っていて真似できるというものではない。だってこなもんの妖精さん(とは書いていないが脳内解釈)が作るんだからそりゃ美味しいんだろうな、と。妖精さんというか神さんというかそんな感じだ。
コテコテの大阪、ディープな・そんなヤツほんまにおるんか級の「大阪のおばはん」がカリカチュアされているのが馬子さんだから、「ええーっ、大阪ってこんなひとばっかりなんだー」と思われると大いに心外というか誤解だけど、まあ、そういう雰囲気をちょっとかすっているひとに対して愛情を持って接するのが大阪のひとのやさしさやと思う(?)。
関西弁や関西人が苦手だという方にはオススメできないが、そうでなければこのナニワのB級グルメ・ファンタジーをぜひ笑って楽しまれたい。

ちなみに店があると書かれる場所は「大阪難波の宗衛門町」「大阪天神橋筋商店街」「大阪ミナミの谷町筋沿い」「大阪ミナミの三津寺筋」「JR天王寺駅周辺」「心斎橋筋の裏通り」「鶴橋の駅周辺に広がる商店街」とどれもゴチャゴチャした人通りの多い「いかにも」な場所だ。三津寺筋なんかは知らなくて行ったことないけど他から推して間違いないだろう。ていうかこの本読んだら楽しそうだから今度探検してみようかな。もちろん「コナモン全般・なんでもアリマッセ」の看板を探して……。