2015/02/28

ヴァン・ショーをあなたに

ヴァン・ショーをあなたに (創元推理文庫)
東京創元社 (2015-02-27)
売り上げランキング: 92
kindle版
■近藤史恵
ビストロ・パ・マル・シリーズ第2弾が文庫版とkindle版同時発売。
「ミステリーズ!」2006年4月~2007年6月に掲載された5篇に2008年単行本初出の2篇の計7篇。
kindle版で予約注文しておいたら発売日の朝kindle立ち上げと同時にダウンロードされ、おかげで朝通勤から読める状態に。おー、便利。
前作『タルト・タタンの夢』が良かったんだよなあ。
話はそれるけど、先月りんごの紅玉が袋売りになっていたので購入して「さてなにを作ろうかな」とネットでいろいろレシピを見ていたら比較的作りやすそうだったのでタルト・タタンを作ってみたりしたんであった(レシピは2カ所から見てアレンジした)。動機は小説の影響以外のナニモノでもない。
さて今回はヴァン・ショー(要するに、ホット・ワインにオリジナルで柑橘類とかスパイス類と砂糖を混ぜるオトナ向けの飲み物、レシピは多種多様)。アルコールが苦手でワインも美味しいと思ったことがないのでこれはどうかな…寒い時期にぴったりらしいが。沸騰させたら飲めるだろうけど美味しいと思えるのかなあ…。

いかん、料理の話じゃなくて小説の話をせねば。
でもこのシリーズはフランス料理のお店が舞台になっていて、事件も料理絡みだったりするから全然無関係ってわけでもないんだよね。
今回のメニューはこんな感じ。
「錆びないスキレット」
「憂さばらしのピストゥ」
「ブーランジュリーのメロンパン」
「マドモワゼル・ブイヤベースにご用心」
「氷姫」
「天空の泉」
「ヴァン・ショーをあなたに」

正直、全体的な感想として、第1作より数段出来が悪いというかあんまり好きじゃなかった。特に後半良くない。
やっぱりこのシリーズはちょっとトボけた気のいい青年・高築くんが語り手だからこそ、そして舞台が美味しい一流のフランス料理を出すけどほんわかあたたかい家庭の雰囲気を併せ持つビストロだからこそ、辛口で変人の三舟シェフに穏やかな志村さん、ソムリエの金子さんがそろっていてこそなんだよなあ、ということをしみじみ考えた。

以下、各話感想。
内容にふれているのでネタバレ含んでいるので未読の方はお読みにならないようご注意ください。

「錆びないスキレット」は切ない話だなあ。あんまり深くリアルに考えたくない。うちはスキレットは無いんだけどやはりフランス・メーカーのストウブという鍋を去年買って愛用してるんだよねー。めっちゃ重たいけどすごい便利なんだよ~(前述のタルト・タタンもケーキの型を持っていないからこの鍋で作った。全部鉄だから鍋ごとオーブンに入れても大丈夫なのだ)。取扱い注意だよなあ。

「憂さばらしのピストゥ」は後味があんまり良くない話…。まあミーハーなノリで勝手気ままにふるまう人間もどうかとは思うけど料理人の矜持は持っていてほしいよね。三舟シェフのそういう面を書くためだけにこんなくだらんヘボシェフの設定が作られたのかと思うと、うーむ。片っ方を「上げる」ために他を「下げる」っていうのはあんまり手法として美しくないよね。

「ブーランジュリーのメロンパン」は良かった。これはわりと好き。パ・マルのオーナーも登場する。オーナーのキャラ、すごい好みなんで(若いくせに変人だけど仕事は出来るとか……めっちゃどストライク、あ、小説のキャラとして、ね)もっとこのひと出してほしい!
それにしてもパンにもいろんなのがあって、菓子パンとか甘いパンとか柔らかいパンを否定して、フランス風の「みっしりと固く詰まっていて、味が濃い」パンこそ素晴らしいと考えるパン職人さんが出てきて、パンにもいろいろあるんだなあ、でも他をけなさなくてもいいのにね、と思った。フランスパンも好きだけどアンパンも好きだぜ!のほうが柔軟じゃないのかなあ。

「マドモワゼル・ブイヤベースにご用心」
三舟シェフが恋?っていうかそれがそんなに珍しいことかよ若者たちよ。
そしてマドモワゼルよ、そんな男と結婚して幸せになれるのか。そりゃ心配はわからんでもないけど束縛激しすぎてドン引き。

今回は後半3篇が変化球で、語り手がいつものギャルソン・高築智行ではない。
「氷姫」は一人称が同じ「ぼく」なんだけど、のっけから「杏子が出ていった」「愛していた」などと高築君のキャラじゃないので別人だとはわかる。途中で「圭一」「圭一さん」と呼びかけられているから下の名前だけは判明するんだけど、このいきなり出てきたモブ人物とちょっとエキセントリックな彼女の話が延々続くので「どこがビストロ・パ・マル・シリーズやねん」という気がしないでもなかった。終盤ようやくビストロが出てきて三舟シェフの推理も出てくるんだけど正直脇役の身勝手な女とそれに振り回された男の話だけという感じで不愉快。

「天空の泉」もいきなり出てきた脇キャラの女性が語り手。南仏のコルド・シュル・シエルという小さな町が舞台。読んでいくと修業時代の三舟シェフが登場する。オムレツにトリュフたっぷりの料理で作り方を見せてもらっても再現できん、というのは勿論シェフの腕もあるだろうけど卵も違うんじゃないのかなあ、どうなのかなあ。『星の王子さま』が絡めてあるけど、こういう使い方はあんまり好きじゃないなあ。

「ヴァン・ショーをあなたに」これも同様脇キャラが語り手。一人称は「ぼく」で名前は「貞晴」だそうだ。このひとと修行中の三舟シェフがフランスのストラスブールという都市のユース・ホステルで出会った時の話。まだユーロ導入前。