2015/02/25

八百万の死にざま 【再読】

八百万の死にざま
八百万の死にざま
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早川書房 (2013-08-23)
売り上げランキング: 33,814
kindle版
■ローレンス・ブロック 翻訳:田口俊樹
本書は"Eight Million Ways to Die"(1982年)の1988年10月ハヤカワ文庫から出た邦訳の電子書籍版。
アル中探偵マット・スカダー・シリーズ第5作にして最高傑作とされている。PWA賞最優秀長篇賞受賞作。

二十代のころ本書からこのシリーズのファンになり、次々に読んだ。早川と、二見から出ている。
ずいぶん前に文庫版を手放してしまったので、今回電子書籍で久しぶりの再読。
最初のほうはなんとなく覚えていたが、誰が犯人かなどはいつものことで忘れていた。
読みはじめたら予想以上に面白くて、こんなに面白かったんだなとびっくりした。

チャンドラーのフィリップ・マーロウ・シリーズと雰囲気が似ていると思う。
犯人当て(フーダニット)もさりながら、話の展開・雰囲気、主人公の人となり、その生き方やスタンスの格好よさにひたりながら楽しむ小説。
男性受けする内容だと思うが、女のわたしが読んでも嫌悪感が起こらないのは変に都合の良い展開などが無いからだろう(あっても小説ってこんなもんだという程度)。それにあれかな、月並みだけどマットが抱えている弱みというか脆さ、過去の事件による心の傷なんかが彼に人間味を持たせるというか、同情というと語弊があるかもしれないが彼に心を添わせやすくなるというか。

1982年に書かれた小説だから、もちろん携帯電話なんか無いので電話応答サービスが出てきたり、そもそもひとを探すのにあちこちの酒場に行って聞きまわったり、そういう手順を踏まないといけない。でもマットが事件を調べるためにひとりひとりの娼婦に話を聞きに行き、きちんとメモを取るのなんかがなんだかすごく良かった。 こつこつ、ひとつひとつ丁寧な感じが誠実な感じで信頼感を生む。

たくさん娼婦が出てくる小説だけど、お色気シーンはほぼ無いと云っていいんじゃないかな。マットは元警官で、警察絡みのひととか、事件の依頼者とかいろいろ出てくるけどみんななかなか味がある魅力的な登場人物で、話に飽きるところが全然ない。ほんと面白い。


以下の感想は未読の方はお読みにならないでください。
本格ミステリだと犯人は…と考えながら読んでいたので、犯人がわかってそれが揺るがないと知って「ああこれは本格じゃなく、そういうタイプのミステリーだったっけ」と思った。ああそういうことか、成程なあ、うーんあれもそれも全部意味があったんだと記憶のなかを確かめるようにして静かに感動した。
最後まで読んでからもう一度冒頭からしばらくざあっとナナメに見直したけど、巧いなあ~そして良い小説だなあ。