2015/02/21

もぎりよ今夜も有難う

もぎりよ今夜も有難う
もぎりよ今夜も有難う
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幻冬舎 (2014-09-26)
売り上げランキング: 157
kindle版
■片桐はいり
kindleで「日替わりセール」に上がってきたので購入。
はいりさんの本は『わたしのマトカ』以来。
『マトカ』が良かったので『もぎりよ』が出たとき気にはなったんだけど、もぎりといえば映画。映画については全っ然知らないので内容も理解しにくいんじゃないかなと見送っていたのだ。 セール価格ということで、手が伸びやすくなった。そういう意味でこの制度、すごく有難い(1日1冊で、実用書の日が殆どなんだけどたまにこういうアタリがある)。

本書は2010年8月キネマ旬報社より刊行され、2014年8月に幻冬舎文庫化が同年9月26日に電子書籍化したもの。
読む前は「映画のことについて書かれたエッセイ」だと思っていたが実際読んでみるとまあ確かに各回の題名ががほぼ全部映画タイトルのもじりだし、でもなんだろうナニカガチガウ……とぼんやり考えながら読んでいくうちに「そうか、これは映画について書かれたエッセイ なんだ」と気付いた。

片桐はいりさんは女優さんだという認識なんだけど前述の『マトカ』でもそうだったがご自分の職業を「俳優なので」と必ず書かれる。「女優」という言葉を遣わないわけではない(現に本書でも4回、すべて他人に対して用いられている) 。

文章を書くことを生業にされている方ではないが、読んでいてつまづくことはほぼ無く、とてもきれいなさらりとした文体だと思う。変な力みや癖も無い。
映画と映画館に対する深くて身体に沁みついている静かで強い愛情が常にくふくふと湧き出してエネルギーになっている、そんなことを感じさせる内容だった。

毎回映画のタイトルがもじりになっていて、有名なのばっかりだからタイトルは知っているけれども観たことがあるのが1本も無い、と書けばわたしがどれだけ映画音痴かは明らかだろう。もし映画を知っていればもっと深く理解し共感できたのだろうが、そうでないわたしのような無知な読者にもはいりさんの文章はきちんと独立しているから楽しめた。映画に寄っかかっていないのだ。

いろんな町の映画館。最初の方ははいりさんの青春時代にアルバイトをした映画館の話が中心的だったが後半になるにつれ、仕事関係で訪れた町の多種多様な映画館の様子が描かれるようになり、そういう観点で旅を愉しむという発想がゼロだったからすごく斬新で興味深かった。

わたしにとって映画館とはすまんが単なる「場所」だった。映画を観るための「建物」。
だけどそうじゃないんだ、映画館ってこんなにドラマチックな、いろんなひとの想いの詰まった夢のある特別な「装置」なんだ、と本書を読んで目を見開かされた。

そうだよな、考えてみれば本が大好きなわたしにとって本屋さんや図書館はすんごく大切なトクベツな空間だもんなあ。