2015/01/24

七つの時計 【再々読】

七つの時計 (クリスティー文庫)
早川書房 (2012-08-01)
売り上げランキング: 14,743
kindle版
■アガサ・クリスティ 翻訳:深町眞理子
本書は1929年に発表された"The Seven Dials Mystery"の邦訳で、バトル警視ものの長篇である。
翻訳が深町さんというのはなんか安心感。
同著者『チムニーズ館の秘密』(バトル警視もの)と同じくチムニーズ館が主な舞台になっている。

煽り文句を考えてみれば、
青年が不可解な死を遂げ、そのマントルピースの上には七つの時計がきれいに並べられていた。
そしてまた次の犠牲者が。
彼のダイイング・メッセージにあった“セブン・ダイヤルズ”とはなんなのか。
謎の組織の秘密に迫る!

――といったところか。

この話については細かいことは覚えていなかったが、目覚まし時計をたくさん仕掛けて寝坊の青年を驚かせようと若者数人がいたずらをしたら……という導入部と、「面白かった」「好きな話だった」ということだけを覚えていたので読んでみた。そしたらやっぱり面白くて楽しくてスリリングな、良質のミステリーでありエンタメであった。
犯人全然わからなかったし! わかってから冒頭に戻ってしばらく読み直してしまったよ。そうとわかって読めば「なるほど、この描写はそういう意味でも読めたのか」などという解釈も可能だけど普通に読んだら流してしまうような何気ない言い回しだし、……いやあ違和感なかったわ、気付かなかったなあ~。

ミステリーとしても一流だけど、このお話の愉快なところとして是非挙げたいのが登場人物たちのキャラの若さ、明るさ、ユーモア。
主人公の通称バンドルなるお嬢様が可愛くて勇敢で行動派なのも良いし、その他のキャラもなかなかみんな良い(個人的にはボンゴが好みなので、彼の話をもっと読みたい気も。バトル警視も落ち着きがあって渋くて恰好イイけどね)。若いのだけじゃなくて大人たちも良い感じなんだよね。バンドルのお父様もユーモラスで茶目っ気があるし、執事さんは素敵だし、庭師との攻防も面白い。そういえば他人に屋敷を貸して、そのあいだにそのひとがお客を招待して……とかいう世界、イギリスの上流階級ではそう珍しいことでもなさそうだけど日本の感覚じゃちょっとわかんないなあ。まあ英国でもこれはクリスティの時代ならではなのかも知れないけど。
スパイスリラー的な「絵に描いたような」場面もあるし、なのに上質のラブコメでもあるのがすごいよなあ。

それにしても日記によれば前回読んだのは2003年で、そのときも「セブンダイヤルズ」を先に読んでその後「チムニーズ館」を読み返していたみたい。「チムニーズ館」の内容をアマゾンのレビューなどを見ても全然思い出さないどころか「読んでたっけ?」レベルだったんだけど(パソコン内検索機能って実に便利ですな!)。というわけで次は「チムニーズ館」を読むぞ、なんだか前読んだときもとっても楽しんだみたいだしワクワクだ!

◆2003.8.17(日)の日記(当時はホームページ上で公開してました)
A・クリスティ再読続く。昨日寝しなから『ゴルフ場殺人事件』、朝起きて続きを読んで午前中読了、続いて『七つの時計殺人事件』これを夕方読了。続いて(まだ読むか、)『チムニーズ館の秘密』読書中。
「ゴルフ場」はポアロもので、ヘイスティングスのあるロマンスの話、ゴルフ場といっても日本のを想像してはいけない。個人の貴族の庭の延長にあるものです。スケール違うね。いわゆるホームズ式の、物的証拠至上主義のジロー刑事と心理的推理をモットーとするポアロの比較対決でもあります。でもジロー刑事をステレオタイプに書きすぎのような気も?いつも読むたびに思う疑問なのだが「何故シンデレラはあんまり公に疑われないのかなあ」。まあ女性だし動機もなさそうだからかな。でも人を見たら犯人と思えという最近の日本のミステリーなんか読み慣れてるといささか違和感。まあでもこのお話も好きです。
「7つの時計」はお寝坊さんに友達がいたずらで目覚ましをいっぱい仕掛けて驚かそうとするところから始まるんですが、まあそんな感じで全体的にユーモラスな空気が感じられます。これは「バトル警視もの」。とてもかわいらしくて勇ましくて好感のもてるバンドルお嬢さんの活躍が楽しいです。彼女が隠し部屋に潜入して一夜を過ごすシーンは何度読んでもわくわくします。ちょっと『ビッグ4』を思い出すシーンでもあります。
「チムニーズ」も「バトル警視もの」。「7つの時計」より以前の話で、これにもバンドルとかその家とか父上とか出てきます。出版はこっちのが先。私の再読の順序が逆なだけです(7つを読んでこれも読みたくなったと云う)。これから続きを眠るギリギリまで読む予定です。いひ。