2015/01/04

プリティが多すぎる

プリティが多すぎる (文春文庫 お 58-2)
大崎 梢
文藝春秋 (2014-10-10)
売り上げランキング: 250,642
■大崎梢
本作は『クローバー・レイン』と同じ出版社である千石社が舞台で、ちょっとリンクしてるというので興味を持ったところ、昨年10月に文庫化したので買ってあった。
編集者工藤が真摯に仕事に取り組むその純粋さ、ハートフルな話に感動したからだった。

で、結論から云うと、本作『プリティが多すぎる』は『クローナー・レイン』で感動した者がそれと同じかあるいは近いものを期待して読むとなんだかとっても残念な思いにとらわれるであろう。
…イヤ、この話なりに最後に向けて盛り上がりとかは作ってあるんだけどなんか環境とか他の要素でどうにもイマイチ乗り切れなくて…首を傾げてしまうところもあって…主人公のキャラが違うっていうのもあるんだろうけどそれじゃないよなあ、この読んだ感じの違いの原因は。

工藤より後輩の26歳、新見佳孝は難関である大手出版社の千石社に入社し「自分は仕事が出来る」と自負するキャリア志向バリバリな青年だ。目指すはもちろん、文芸部。小説好きで、作家と良い本を作っていきたくて、学生時代からいろいろ努力してきたのだ。
しかし、そんな彼に異動の辞令が下りた。行先はなんと、ロウティーンの女の子のためのファッション誌「ピピン」編集部――。

まあ、会社員なら自分の希望とは違う仕事をまかされることなんて珍しくもないし、それが出来ないなら務まらないわけで、異動で一喜一憂というのは誰しも大なり小なり経験したことがある、本人にはそれなりの一大事である。だから新見の気持ちはよくわかる。そこで最初は腐って、でも気を取り直してそれなりに努力していくうちに大事なものは何かに気付いていく過程もまあ、オーソドックスだけど好意をもって読むことができた。

だけどこれ、肝心の十代の女の子が嘘っぽくない?
――というのが、本書を読んで違和感を感じた最大の問題だ。いちいち固有名詞が必要なのか首を傾げたくなるくらいこの長さにしてはたくさんの女の子が登場する。それぞれに設定があるらしいこともわかる。
なのに全然、リアルじゃないっていうか……それこそファッション誌で目にする程度しか彼女たちのことが伝わってこない。みんながある一定以上の容姿を持っている雑誌モデルが何人もいる世界で、こんなにきれいごとだけ言ってられるものかなあ。15歳前後の少女ってもっと複雑だしそこに競争要素がシビアに絡んでるんだからいろいろあると思うんだけどなあ。

つまりこの小説における「ロウティーンの女の子たち」って所詮は新見くんのお仕事小説上に配置された「小道具」扱いでしかない、って感じで……文芸目指してる青年が配属されて一番出鼻くじかれるのって何処デスカ、っていうのの答えで「設定」された「環境」として彼女たちを描いてあるからこうなるのかなあとか考えてしまった。みんな良い子過ぎて仲良しすぎてびっくりしたのだ。モデルさんを主役に据えて小説書いたらこういうふうにはならないんじゃないかなと思うんだけど違うのかなあ……。

なお、この作品の新見は「にいみ→新美→新美南吉」という連想から「南吉」というニックネームが付けられ、ほぼそれで通されている。大崎さん、書店営業マンシリーズでは主人公「井辻」に「ひつじくん」というアダ名をつけていたよなあ。そういうのがお好きなのかな?

ちなみにポプラビーチというwebページで工藤視点で新見も絡む特別短篇「花とリボン」が公開されており、読むことが出来る。