2015/01/02

洋子さんの本棚

洋子さんの本棚
洋子さんの本棚
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小川 洋子 平松 洋子
集英社
売り上げランキング: 24,043
■小川洋子・平松洋子
対談があったとちらっと触れてあって日記で触れたこともあったが(2014.1.12平松洋子『本の花』)、もう1年前のことなんだなあ。
小川洋子と平松洋子が対談したのが1冊にまとまっているというまるで夢のようなご本が出た。奥付の発売日は1月10日となっているけど年末の書店で既に積んであったので喜びにうちふるえて踊りながら買ってきた。

年末年始でじっくり堪能。おお、全編対談なんだ。それぞれのエッセイとかは無し。
最初にページを開くとこうある。

  ここに、ふたりの少女がいる。
 岡山で生まれ、子どもの頃から本が好きで、
 地元の高校を卒業後、十八歳で上京。
  (中略)
 少女から大人になるまでには
 いくつもの踊り場がある。
 無類の本好きだった彼女たちは、
 いかに読み、
 どんな本に背中を押されてきたのだろう。

つまりそういうコンセプトで、時代ごとに読んだ本、自分にとって意味のある本を数冊ずつあげ、それをおふたりとも読み込んだうえで対談された形。読書家で知識豊かなミセスの対話は本当にハイレベルで、いろんな意味で凄かった。男性同士とか男女とかだとこういう空気感は出ないよなあと。
ある程度年齢を重ねた女性同士、年齢も近い、育った環境、出身地だけじゃなく「家」の雰囲気も近い、その中でそれぞれの違いもあって、個性を生かした作家業で生きているおふたりというので独特の空気があるというか。
たぶん見えない火花も散ってたんだろうけどそれは見えないことにしてあってね。あくまで穏やかに、たおやかに。持ち上げる気遣いを忘れない。そのお互いの距離感のはかり方というか……この年齢、このふたりだからこその、瞬間瞬間の間合いの取りかたとかにどきどきしながら楽しんだ。
女性同士の人間関係って、こういう感じ、大事なんだよなあ。すごく勉強になる。

平松さんの著書というのはエッセイがほとんどなので、ふだんから考えてらっしゃることを読んでいるつもりだけどやっぱり作品という枠があるから出てこないこともたくさんあるわけで、本書を読んで初めて知ったこともいくつかあった。てっきり一戸建てと思っていたら「マンション」という一言が出てきてびっくり。住まい、だったか暮らしだったかは記憶が曖昧なんだけど。でもその後で庭木の剪定を頼む話とかもある。マンションで庭や植木もあるバージョンってことか、えっそれでプロに頼むレベルの大きさの木があるのか…?(東京の住宅事情が全然わからない)。

小川さんの著書にはエッセイもあるけれど、読み手(わたし)が小説中心にしか読んでいないのであまり生活のことは知らなくて、息子さんがいらっしゃるとか阪神ファンとかいうくらいの認識だったんだけど、あらでもお弁当作るときそんな感じだったのねとか、旅行お好きじゃないんだとかいろいろ本書で知ることができた。いやでも基本的にクールで聡明な方よねえ。

平松さんがお母様との間でいろんな葛藤がおありだったこと(でもまだご健在なのに書いちゃっていいのか?)、上京前のふらり旅で新潮社のひとと偶然出会っていたこととか興味深いなあ。
若いころの平松さんがお嬢さんを学童保育に預けて遅くまで働いていた、というのはいままでのエッセイなんかでも何度か目にしたけど、このころのお仕事ってなんだったのかそこには言及が無いんでなんでかなあと思う。会社勤め…で小学生のお嬢さんが就寝した後しか帰れないってかなり遅いよね。なんだろう。やっぱり最初っからフードジャーナリスト、かな。で、出版関係だから遅くなりがちとかそういうことかな?

採り上げられている作品は自分が読んだことのないものがほとんどで、でもなんだか「らしい」感じがした。おふたりの対談を読んで読んでみたいなと思ったものもあるし、おいそれと気軽には読めないなとしり込みしたものも、ハナから「守備範囲と違い過ぎる…」と敬遠したものも。

小川さんの方がこの対談に向けて「予習」的にあらためて平松さんの近著を数冊読んできた、って雰囲気かしら。平松さんはもともと読んでそうだよね、読書家として作家・小川洋子を。
いままでも漠然とは考えていた筈なんだけれども本書を読んで平松洋子って「お姉さま」って感じだなあ、という感想をかなりくっきりと持った。中高キリスト系の女子校出身、というのもあるかもしれないけど(大学も女子大だ)。ご両親に寮に入れられてしまうとか、かなり門限などを制約されていたという点はわたしもそうなんだけど、でも「本人」の成長の速度が違い過ぎだよなあ。小川さんも平松さんのこと「5年ぐらい進んでる」とおっしゃってたけど本当にそんな感じ。きりりとして、頭が良くて、行動派で、オトナになるのが早い。まさに格好いい憧れの「お姉さま」そのものだよ~。やっぱり素敵だなあ。

小川さんはサイン会でご尊顔を拝したこともあるけれど、良家の奥さま、賢夫人、という印象で、物柔らかさの奥にピシッと芯の通った知性がある感じだ。本書を読んでもそれは変わらない。こんな上品な方が、阪神ファンとかフィギュアスケートの高橋選手のファンだとおっしゃってミーハーな一面をちらりとのぞかせてらっしゃるところがチャーミング。平松さんのお子さん時代の写真を見られたときの反応とか、ちょっとやっぱり関西のかたでらっしゃるな、と思った。

とりあえず一読、でもまた読み込みたい。本書に上げられている本も、心して読んでいきたいと思う。
特設ページがあって、これも素敵だったので(なんとおふたりの自筆の葉書が!)リンクを貼っておく。小川さんのサインはいただいたことがあって、きっちり楷書だったんだけどお葉書だと雰囲気変わるなあ。平松さんは素敵な手蹟…初めて見たのか、考えてみれば。イメージ通りというか、なんでもよくお出来になるのねえ…(ほう、と感嘆のためいきをついちゃったり)。