2015/01/17

おしどり探偵 【一部再読】

おしどり探偵 (クリスティー文庫)
早川書房 (2012-08-01)
売り上げランキング: 15,770
kindle版
■アガサ・クリスティ 翻訳:坂口玲子
トミーとタペンスの唯一の短篇集。創元推理文庫版では『二人で探偵を』という書籍タイトルになっている。2004年11月3日の日記に【あんまり読書意欲が湧かなくて大島弓子の漫画をちょっと再読したり、クリスティ『二人で探偵を』(創元推理文庫)から短編2つばかり読んだ程度。】とあって、その後続きを読まなかったのかなあ。
そもそもトミーとタペンスものは偕成社文庫の『アガサ=クリスティ推理・探偵小説集(2)』で十代前半に読んだのは確かなんだけど、手元にないのでどの話を読んだのかは不明。読んでいても忘れるような人間だし。「なんだかユーモラスでほのぼのして元気いっぱいの奥さんが出てきてポアロものとは随分雰囲気が違うなあ」というような印象だけは覚えており、今回きちんと読んでみて実際そのとおりだった。
お手伝いの少年(オフィス・ボーイ)は15歳と若い!労働基準法とか児童福祉法とか関係ないもんね。タペンスは25歳以下らしいけど、トミーはタペンスと同い年なんだろうかちょっとは上なのかな、最初の事件(長篇)を読んだらわかるんだろうなあ。

トミーとタペンスがいろんな名探偵の口癖や癖を真似して「名探偵ごっこ」をするので、詳しいひとほど楽しいのだろうと思う。いやあ、ミステリマニアの若い夫婦ならではだねえ。
わたしといえば中学生の時に買ってもらった学研まんが事典シリーズ 『世界の名探偵ひみつ事典』で読んだことはあるけどそれで詳細にネタバレされていたこともあり大人向けというかちゃんとした翻訳本では読んだことの無い名探偵が多く、細かいパロディはよくわからないのもあった(さすがにホームズやポアロはわかるけど)。まあでも「隅の老人はいつもチーズケーキとミルクを頼み、紐で遊びながら推理するんだろうな」とかいう感じで読んだ。

以下、ざっくり感想。
内容に触れているので(直接的なネタバレはいちおう避けたけれどもカンの良い方にはバレバレかもだし)、
未読の方はスルー推奨で。

二人で探偵を (創元推理文庫 105-12)
アガサ・クリスティ
東京創元社
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アガサ=クリスティ推理・探偵小説集〈2〉 (偕成社文庫)
アガサ クリスティ
偕成社
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アパートの妖精 (A Fairy in the Flat )
長篇の導入部みたいな話、これだけ読まされても成立しない。何故諜報部のトミーとその妻であるタペンス(元看護婦)が探偵事務所を引き受けることになるかという前置き的な話。

お茶をどうぞ (A Pot of Tea )
探偵事務所を始めて最初の事件。ひょっとしてこの本て「短篇集」って書かれているけど連作短篇集っぽい長篇なんじゃあ?これは単独で読んだら成立しないレベルの話だよなあ…。

桃色真珠紛失事件 (The Affair of the Pink Pearl )
ようやく、これだけで出てきてもいちおう成立する話。でも前の話の「いきさつ」が必要だし、順番に読んでいかないと意味がないみたいだし、やっぱり本書は純粋な短篇集とは言いにくいわねえ。石鹸のくだりが面白かった。

怪しい来訪者 (The Adventure of the Sinister Stranger )
最初のシガレットケースのくだりが利いてくるね。

キングを出し抜く (Finessing the King )
これは殺人事件。そんなものに出くわすとは「持ってる」というところか。ちょっとセイヤーズっぽかったわね(舞台立てが)。

婦人失踪事件 (The Case of the Missing Lady )
この話は読んだことがある、とネタバレした段階で気づいた(遅!)。この話はシャーロック・ホームズごっこをしている。最後の台詞とか、ホームズを読んだことがあるひとはニヤリとするだろう。

目隠しごっこ (Blind Man's Bluff )
アーネスト・ブラマの生んだ盲目の名探偵マックス・カラドス(ちゃんと読んだことない)ごっこをしていると……。

霧の中の男 (The Man in the Mist )
霧の都ならではの事件。思えば、トミーが神父の格好でお店にいて誤解を招いたというのもテーマ的にちゃんと意味があったのね。ブラウン神父系かな。

パリパリ屋 (The Crackler )
パリパリ屋って何だろうと思って読んでいくとトミーの造語だと判明。パリパリの新札の偽造紙幣を作って儲けているヤカラのことを云うんだって! なんと、アンデルセンの「火打ち箱」のエピソードが絡んできたのにはびっくり。楽しいシリーズだなあ本当に。

サニングデールの謎 (The Sunningdale Mystery )
新聞を賑わすゴルフ場で起こったミステリーの謎をトミーとタペンスが現地に行かずして解く。尤も、以前にそのゴルフ場に行ったことがある、という経験を活かしているが。オルツィ「隅の老人」(ちゃんと(ry)ごっこ。

死のひそむ家 (The House of Lurking Death )
田舎の農場を継いだ若く美しい女性から毒入りチョコレートの件で依頼を受けたが訪れる前に彼女は毒殺されてしまった…。
 毒殺ものはクリスティ真骨頂という感じ。
 メイスンのアノー警部ごっこ(ちゃ(ry)

鉄壁のアリバイ (The Unbreakable Alibi )
恋する男性が依頼人。相手の女性から出されたアリバイ問題を解いて欲しいという。この話は覚えていた。アリバイと云えば、というわけでクロフツのフレンチ警部ごっこ。

牧師の娘 (The Clergyman's Daughter )
牧師の娘が依頼人。伯母の「赤い館」を相続したのだが奇妙なことが続いて起こって…。

大使の靴 (The Ambassador's Boots )
ベイリーのフォーチュン医師ごっこらしいがこれは聞いたことすらない、全然知らなかった…。
アメリカ大使がイギリス到着時にいつのまにか鞄が入れ替わっていたらしく、すぐにもとに戻ってきたが、その間違えられた相手に後日挨拶をしたのにそんなことは知らないと云われて疑問に思い依頼に。


16号だった男 (The Man Who Was Number 16 )
最終話。いままでの事件にふれる発言もあるので最初に読んだら台無し。いよいよこの事務所を借りた本元の事件に挑む。
 タペンスが危機に陥りトミーがかなり頑張る話。エルキュール・ポアロの台詞でアルバートが励ましたりするシーンがしみじみしちゃう。投げ輪のくだりはぞっとしたけど…(危なすぎる)。