2015/01/06

半七捕物帳 66~69 【再読】

kindle版
■岡本綺堂
66 地蔵は踊る ★★★
縛られ地蔵というのが世にあるそうだが、その話から事件の思い出話に。なんと縛られ地蔵の次は踊る地蔵という話で、しかもそこに若い女が殺されて縛られていたので事件に。
悪い輩に弱みを握られるとえげつないことになるよなあ。
「半七捕物帳」シリーズでは死んだと思っていた人間が何かの拍子で息を吹き返すというのがいままでに何度か出てきたが、つまり死亡したという根拠が「息してない」とかそのレベルだったからでしょうな。もしそのまま埋められていたら……。お通夜とかお葬式という制度があるのは亡くなってすぐ埋めないための時間猶予としても有効な手段なのかなあ。副次的な効果なんでしょうけどね。

67 薄雲の碁盤 ★★★
主人に忠義を見せた猫の因縁話がある美しい碁盤にまつわるこれも男女のもつれの話。この被害者の女が節操無しなので同情出来ない。浮気相手の男も遊び人だし性格悪いし。
でも元にある碁盤をめぐるお話が良かった。この碁盤があると鼠が来ないというのも不思議のままに描いてあるのが良い。碁盤に女の首を乗せて晒す云々はいただけないが……。


68 二人女房 ★★
小金井の花見の話から展開。意味深なタイトルだが女房の起こした事件が2つ同時期に起こったという話。双方の事件は関連していないが概略が似ている。もう若くないいい年になった妻が若い男に入れあげて……。


69 白蝶怪 ★★
これだけ長篇で、半七が出て来なくて、最後に「この事件の探索に主として働いた岡っ引の吉五郎は、わたしが「半七捕物帳」でしばしば紹介した彼の半七老人の養父である。」という一文があるのでようやくシリーズとしたいんだなとわかる。
真冬の夜に白い蝶が飛ぶ怪。
それを見た娘が寝込んだりするがそのへんの超常現象的な話はいままで半七捕物帳を読んできた者なら(面白いし妖しい雰囲気がいい感じだけれども、まあどうせ結局こういうのは「つかみ」の為の描写で「偶然」で、「気のせいでした」とかになるんだろうな)と予想出来てしまう(でもひょーっとしてすごいどんでん返しがあればイイナアと期待してしまうこのサガよ)。
話そのものは要するにこれも男女のもつれでゴタゴタしているが骨格や登場人物の人数などから考えるともっと短くまとめることも出来そうな感じもしないでもない。要はみんな自分勝手で節操無いからいかんのだ。
夜に白い蝶がほのかに光りながら妖しく飛ぶ様が繰り返し描かれ、想像するだになかなか美しく儚く、綺麗である。
「半七捕物帳」でググると「68の短篇」と出てくるのに青空文庫では69の作品が半七捕物帳として出てくるのでどういうことかなと思っていたのだがこういうことデシタか。

とりあえず全篇コンプリート!
いやあ、長いこと楽しめた。
特にどれがオススメとかいうのはまったく趣味のハナシで、北村(薫)御大の「全部読んでとしか言いようがない」とかいう評はまことに適切だなあ。
江戸時代ファンのみならず、冒頭は大正時代の風俗も出てくるのでそういうのが好きな方には面白いだろうし、今読んでも全然古くなくて読みやすいのが驚きだった。ミステリーとしては、まあ、どんどん進化しているので物足りなく思う向きもあるかもしれないけど明治に書かれた日本初期のミステリーという認識で読めばいろいろ吸収できると思う。
特にどれが好きとかいうのは無いケド、半七親分が気風が良くてイナセで素敵。妹さんも奥さんも好きです。同心さんや子分さんはあんまりキャラ立ちしていないかなあ、せいぜい職業で区別するくらいしか。そうそう、書き手の青年も「閻魔帳」もとい「メモ帳」を常に忍ばせていて熱心でユニーク。穏やかな半七老人と好奇心いっぱいの青年の対話というスタイルがとてもほのぼのして、殺人のハナシばかりなんだけど江戸の語りから現代(=明治)に戻った時になんだかほっこり出来た。いい設定だなあ。