2014/11/17

エール! (1)

エール! 1 (実業之日本社文庫)
大崎 梢 平山 瑞穂 青井 夏海 小路 幸也 碧野 圭 近藤 史恵
実業之日本社 (2012-10-05)
売り上げランキング: 19,411
■大崎梢・近藤史恵ほか
大崎さんを最近また少し読むようになって、光文社のアンソロジーがなかなか良かったこともあり、このアンソロジーも読んでみたくなった。
実業之日本社文庫。
実業之日本社は知ってるけど、文庫なんかあったんだ。本書を本屋で探そうとして初めて知った。そういう目で本屋さんの棚をずっと見ていくと、あるんだね、小さな書店にも実業之日本車文庫のスペースが。売れっ子東野圭吾の文庫がここからも出ているとわかり、「おお、稼ぎ頭がいて良かったなあ」なんて思っちゃったり。

調べてみたら実業之日本社の創業は1897(明治30)年と古いけど、実業之日本社文庫の創刊は2010年10月5日とごく最近のようだ。

『エール!』は現在3冊めまで出ているアンソロジーで、ホームページの記載によれば
【笑って泣いて元気になれる、お仕事小説アンソロジー第1弾!!(中略)
オール書き下ろし、文庫オリジナル企画。書評家・大矢博子責任編集。】
ということだ。「1」の解説は大矢さんで、それを読むとこのひとが企画したんだなということは読み取れるようにはなっていた。
働く女性のために、眠る前に1つずつ読んで、ちょっとでも元気になってもらえたら、というコンセプトらしい。わたしはそういう「ためて読む」ことは出来ないタイプなので眠る前に4つ読んで、会社の昼休みに残り2つも読んじゃったけど、いくつか読んだ時点で「これはハッピーエンドが約束されているんだな」とわかったので気を張らずに読めたのが良かった。
本書を読んで仕事をやる気になるとか落ち込んだのが癒されるとかそういう効果があるかというと、少なくともわたしには自分と重ならない設定ばかりなので共感とか引き寄せて考えにくいのでそれは無いなという感じだ。

第1弾はこの6作品収録(2012年10月05日発売)。
全員若い女性が主人公、そういえば全員独身で彼氏もいないっぽい。
お話同士でちょっとリンクというか目配せがあるのが面白い。あの話に出てきたあの店がこっちの話にも、とかそういう遊びがある。

以下、内容に触れています。

大崎梢「ウェイク・アップ」★★★★
◎漫画家が主人公。
漫画家さんの実態がわかって面白かった。それにしてもこの少女漫画家いくたさんは画力が相当あるよね、少女漫画家には若い女の子は描けても背景とか小物や年配の人物は「?」というひとも少なくないから、こういう実力があるひとが狭い枠の中に閉じこもらず新たな才能を発揮できそうなラストですごく良かった。いくたさんが描いた作品を読みたいと思った。

平山瑞穂「六畳ひと間のLA」★★★ 
◎通信講座講師が主人公。
初。
28歳の主人公があまりにも危機感無さ過ぎて腹が立った。なんで個人特定できる情報書いちゃうのよ。しかも相手がヤクザ系……。号泣するシーンは同情しつつもあまりにも型どおりの「泣かせ」でちょっと醒め気味。しかし通信教育ってこんな親切なのかなあ。この先生すんごく純粋で偉いなあと思った。

青井夏海「金環日食を見よう」★★
◎プラネタリウム解説員が主人公。
初。
先月地元のプラネタリウムで解説員さんの「星とか大好きマニアぶり」が伝わるお話に感心したばかりだったので、個人的にタイムリーだった。小学校が急に決めるくだりはリアルだったなあ。
館長がステレオタイプすぎてやや興ざめ。

小路幸也「イッツ・ア・スモール・ワールド」★★★
◎ディスプレイデザイナーが主人公。
昔は大きな百貨店相手に仕事をしていたのに経費節減で切られ、いまは小さな客相手にしなければならないと屈折している主人公の心理などがなかなかリアルで興味深かった。元彼に名前呼び捨てされて嫌じゃないのかなーとちょっと気になる、あ、この著者は男性だからかなるほどねー。

碧野圭「わずか四分間の輝き」
◎スポーツ・ライターが主人公
初。この話に出てくるひとは主人公も含めて何故か全員好きになれなかった。フィギュア・スケート好きでその専門的なライターが、仕事のために「スポーツに興味がないひとにでも食いついてもらうために」選手の恋愛暴露を書けと言われる話。まあ普通にありそうだ。だがそれを断った後にああいう展開はそう無いと思う。ドリームだね。

近藤史恵「終わった恋とジェット・ラグ」★★
◎ツアー・コンダクターが主人公
5㎏や10㎏痩せたって、英語を習ってツアコンが出来るレベルになったって、「自分」は駄目なままだという主人公のボヤきから話がはじまり、のっけから共感できなかった。5~10㎏もスリムになったら着られる服がまず違うし、周囲のひとだって「変わったな」って絶対わかるよ! それに英語が喋れるって絶対便利だし尊敬しちゃう。ましてやその両方を同時にやれるなんてすごく努力家で偉いと思う。
なんでこのひとはそんなに自虐的なの?って感じ。読んでいくとつまり昔の彼に二股かけられた挙句あっさり捨てられて、それで自己否定になっちゃったのかな、でもそれをきっかけに頑張って痩せて英語も習得したんだから立派なのに。嫌な客にも気配りを怠らないプロの姿勢が素晴らしいし。この主人公は自分の魅力に早く気付いて欲しいなあ。