2014/11/14

ナイルに死す 【再読】

ナイルに死す クリスティー文庫
早川書房 (2012-08-01)
売り上げランキング: 14,245
Kindle版
■アガサ・クリスティ 翻訳:加島祥造
原題:Death on the Nile。1937年発表。
ポアロの長篇もの15作目。
エジプトが舞台。ナイル河をめぐる客船の中で起こる殺人事件。
純文学ではないのでエジプトやナイル河の情景描写はあんまり無いけど物売りの子がわらわら寄ってきて大変だというのはよくわかった。エキゾチックな感じはほぼ無かったかな。西洋人ばかりの船だし。

若くて美人で頭も良い、おまけに富豪の娘で大金持ちというリネット・リッジウェイ。彼女の女学校時代の親友が失業した婚約者を雇ってくれと頼みに来て、リネットは快く承諾するが……。
金持ち娘が貧乏な親友から婚約者を奪って略奪婚、というメロドラマみたいな展開が導入部にあって、そこから舞台はエジプトに移る。ミステリーの始まりである。この話は全篇通して人間の恋愛模様がいろいろ枝葉のも含めて絡んできて、なかなかドラマチックだった。
ポアロさんは仕事じゃなくて休暇を楽しんでいたのだが、状況的に探偵稼業に戻らざるを得なくって……実際的に考えるとこれってタダ働きだよねえ。お気の毒だわ。
クリスティお得意の人間の感情の動きが見事にストーリーを組み上げていて、面白かった。登場人物はけっこう多いのだけれども、最初のほうの「訳者からのお願い」通り、ゆっくり読んでキャラの性格を理解するよう努めて読むと混乱も無く入り込めた。主要なのはみなしっかりキャラ立ちしてるからこそだなあ。
★注意★以下はネタバレはしないように気をつけましたが未読の方はスルー推奨です。


あらすじだけで読むとリネットってとんでもない性悪女みたいだけど、実際話として読むとそう悪い印象でも無いのだよね不思議と。契約書をきちんと読んでからしか決してサインしないとかしっかりしている。「甘やかされたぱっぱらぱーの金持ち娘」じゃないところがとっても魅力的。
この話、初めて読むわけじゃないと思うんだけど、ほとんど覚えていなかったので初読みみたいなものだ。ふつうに考えたら「このひとが動機を持ってるし犯人でしょう」と思うひとがいて、直前に『スタイルズ荘』を読んでいたのでまさか同じパターンじゃなかろうなと思ったりしたんだけど、そのひとたちは完璧なアリバイを持っている。やはり同じパターンは無いか、じゃあほかの誰が、と考えながら読んだ。金持ちの令嬢というのは殺される理由がいくつもあるのだ。恐ろしい。
ポアロさんが種明かしするまで犯人はわからなかった。それにしても3人目は本人がもうちょっと危機感を持って静かにしてたら殺されずに済んだものを。
また、この話の本筋以外でロマンスが数組生まれるんだけど、それがまたなかなか好ましくてよかった。

些細だけど気になること…
本文の中に飲み物を「すすった」という表現が出てきて、しかもそのひとはマナーが出来ている設定のひと。西洋人は「すする」のはタブーなはず。翻訳が適切で無いということなんだろうけど気になったなあ。クリスティの他の作品でも見かけたことがあったけど、やはり翻訳が古いからかなあ。
翻訳の加島祥造と云う方は大正12年生まれだそうだが。うーむ。
ちなみにキンドルで便利な点はこういうときに本文検索が出来ること。本書には飲み物を「すすって」いるシーンが4回出てくるんだなとすぐわかる。