2014/11/01

世の中で一番おいしいのはつまみ食いである 【再読】

世の中で一番おいしいのはつまみ食いである (文春文庫)
平松 洋子
文藝春秋
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■平松洋子
2005年7月株式会社地球丸刊『こねて、もんで、食べる日々』を改題したもので、2008年8月文春文庫刊。
巻末に「企画協力 深澤真紀」とあって、「アレ!? これって津村(記久子)さんとの対談式共著『ダメをみがく』のひとじゃなかったっけ」と思ったらやっぱりそうだった。編集者でもあるんだもんね。「あとがき」の飴のエピソードが面白い。

本書は「手で料理する」がテーマな感じで、「手で」っていうのは文字通り、包丁や箸などの道具をつかう代わりに手でやっちゃう、むしろそのほうが美味しくなるのよ――というスタンスで書かれている。

この本を初めて読んで以来、選択肢が増えた。例えばピーマン、青椒肉絲を作るときなんかは包丁で細く切るけど、野菜炒めや甘辛炒めなら手でちぎっちゃう。そっちのほうが美味しいかはうーんわかんないけど。
蒟蒻は包丁で切ってひねる、というのは子どものころから母親に教わって煮物のときは必ずそうしていたが、このあいだ平松さんの別著書に「ちぎり蒟蒻」が出ていたのでやってみたら予想より力いっぱい込めないと千切れなくて、歯ごたえもひねり蒟蒻とは違った。
4/3使って残っていたキャベツを手で千切ったら、芯に近くなればなるほど感覚が面白くなっていく。

料理だけがテーマというよりは「言葉遊び」「言葉から派生して生まれるモノ」にもそれは及んでいて、このへんの繊細かつ広い表現の魅せ方は知性派・平松さんならでは。感覚を鋭くひらめかせ、なおかつ自己満足や雰囲気語りに陥らないバランス感覚が発揮されている。それにしても「手で」を追究していくとけっこう官能的な表現に結びついていくことが多いのか、およっというような大人な表現をみせることが結構ある。スレスレに比喩したり、かなり直截だったり、まあ箸じゃなく手でやると「相手」じゃなかった「食材」にダイレクトだもんねえ。

本書に限らず平松さんの本には中国や韓国、インドなどの料理がよく登場する。著作をずっと遡ってみていくと、「アジア」なのだ、このひとの関心のエリアは(そこにはもちろん日本も含まれている)。本書でもお店の味というよりは家庭で昔から作られてきた伝統の料理、調理を教わって書いている部分が結構ある。そこから感じ取れるのは相手への敬意と好意、きらきら輝く好奇心いっぱいの目。「これ食べてみな」とか言われているシーンもあって、読んでいて頬が緩む。愉しそうだ。ああわたしは辛い物苦手で損してるなあ、なんて思ったり。

解説は歌人のほむほむこと穂村(弘)さん。それにしても「冷蔵庫を開けること=料理」ってちょっとヒドくないデスカ……。