2014/10/02

和菓子のアンソロジー

和菓子のアンソロジー (光文社文庫)
坂木 司
光文社 (2014-06-12)
売り上げランキング: 17,070

■坂木司リクエスト
10人の作家さんのうち、4人が初めて読む作家さんだった。
2013年1月単行本刊、2014年6月文庫化。早いなあ。
「まえがき」でわかったのだが、光文社で作家さんリクエストのアンソロジーが3つ出ているけれどもそもそものはじまりは坂木さんが何気なく雑談で喋った、そこから始まっていたのだ。良い企画だなあ。
というわけで作品ごとにざくっと感想を。

空の春告鳥 坂木司 ★★★★
和菓子のアン』の続きというかエピソード。この短篇を読んで、本篇を読んだときに主人公に感じたまだるっこしさを思い出した。なんていうか……高校卒業すぐのアルバイトにしてもあまりにも知識無さすぎじゃないのかなあ。頭は良さそうなのに、無知すぎてブレーキがかかりまくるところが。この話で言えば、あの状況で「飴細工」と言われてその場にそのお菓子がなければ「ああ、なにか例えたんだな」くらいわかりそうなもの。人形浄瑠璃も、詳しくは知らなくたって、聞いたことくらいあるでしょうに。あと、マジで食べ過ぎ。
…とか文句ばっかり書いてしまったので信じてもらえないかもしれないけど、この話『和菓子のアン』好きなのでシリーズ化してほしい。

トマどら 日明恩 ★★★
初。話は姉と妹のことだけでなく人間の情とかを描いたとてもしみじみした良い話だった。でも語り手の警察官をわざわざ数字に細かくケチな設定にした意味がわからない。この話のオリジナルじゃなくて、この著者の読者にはお馴染みのキャラ立ちしたキャラなのかな、それならわかるんだけど、解説とかにも書いてないので不明。オリジナルの、季節の果物が入ったどら焼きというのが美味しそうだった。

チチとクズの国 牧野修 ★★★
初。変なタイトルだなあと思っていたら中身の導入部があれで、どうしてこの題名?と読んで行ったらびっくり展開が。暗く重くはじまったのが、すっきりさわやかあたたかな〆でほっとした。ユニークな三途の川だなあ。

迷宮の松露 近藤史恵 ★★★
忙しすぎる仕事を辞め、モロッコに滞在していた女性が思いがけない場所で出会った祖母との思い出である京都の和菓子。人間、こういう時期もあるだろうなあと思った。松露を検索してみたら、同じ松露でもいろんな色のがあるんだね。

融雪 柴田よしき ★★★★★
きゃあ、ロマンティック! 柴田よしき、久しぶりに読んだなあ~。山間のペンションで山菜や有機野菜中心の料理とか、めちゃくちゃ美味しそうで和んだ。設定が素敵で展開がロマンというね。

糖質な彼女 木地雅映子 ★★★★★
初。ひきこもりの主人公もその母親もイケメン医者もなんだかなあと思って読み進んだらなかなか面白い展開になって、読了後もいろいろ余韻があって良かった。この話はあとでもう1回読みたくなって読み返したけど、最初よりもより良く感じた。二回目読むとユーモアとかがあるなあ、と。著者の視線の向け方が良いんだろうな。

時じくの実の宮古へ 小川一水 ★★
初。これは……ふだん読まないタイプのお話だ。SFだ。和菓子の話でこれは想像しなかったなあ。この状況で和菓子作れるっていうのが凄すぎると思うんだが…。

古入道きたりて 恒川光太郎 ★★★★★
ああ久しぶりに恒川さん読んだけどやっぱりこのひとの世界好きだわ、上手いよなあ。脳内にその絵を思い浮かべるだけで不思議でぞわぞわして面白い。おはぎ、季節によって呼び方が違うんだ。おばあさんがおはぎを作ってくれた心情を思いやるとかそういう細やかな描写が素晴らしい。

しりとり 北村薫 ★★★★★
北村さんだから上手いだろう、とハードルを上げていてもやはりきちんと上手かった、流石。それにしても男の人のロマンチストって本当に繊細ね。高校生の出会い、甘酸っぱいなあ、古き良き時代って感じで、それで長年連れ添うとか素敵だなあ。

甘き織姫 畠中恵 ★★★
謎解き、なかなか面白かった。変人オタクの凄すぎるキャラ、お金持ちで頭が良くて超絶美形で唯我独尊の性格だなんて、京極夏彦の薔薇十字探偵社のあの御方を彷彿とさせる…。でも十代の嫁といい、みんな妙にキャラ立ちしていて、これももしかして畠中ファンにはお馴染みの、なのかしらん?

塩をひとつまみ 坂木司 これはあとがき?ミニ解説?みたいな。
豪華なメンバーというだけではなく、今まで読んだアンソロジーと比べてもこれはなかなかレベルが高くて充実していて、実にナイスだった。
ちゃんとした和菓子屋さんに和菓子買いに行きたくなるなあ(とかたぶん『和菓子のアン』のときも思いつつそこらのスーパーで買った適当な和菓子でお茶を濁しているんだけど……)。