2014/10/18

平台がおまちかね

平台がおまちかね (創元推理文庫)
大崎 梢
東京創元社
売り上げランキング: 128,860

■大崎梢
2008年6月創元クライム・クラブの1冊として刊、2011年9月創元推理文庫化。
『配達あかずきん』書店シリーズでデビューした大崎さんの、出版社営業マンを主人公に据えたシリーズ、をいまごろようやく読んだ。
というのは書店シリーズで、ほのぼのしつつ書店が舞台ということで面白かったんだけどけっこう毒もあって、毒は嫌だな~とちょっと敬遠していたから。
でも最近読んだ近著が面白かったからこれも読もうと思って。
読んでみたら本書には毒が無かったのでほっとした。
出版社の営業さんといえば「本の雑誌」の杉江さん……と思ったらそのひとが解説を書いていたのでビックリ! 最初に読もうかと迷ったけど色眼鏡無しに読みたかったので最後まで本編を読んでから読んだ。

大崎さんの著書などで出版社の営業さんは出てくるからまったく初めて知ったとかではなかったけど、本書を読んでそのお仕事内容がすごくよくわかった。解説によれば、新人のテキストに使えるくらいリアルだそうだ。

ひとの死なないミステリー。というか、ミステリーと仰々しく言うと誤解があるかな、日常の謎、ちょっとした「何故だろう」を主人公の羊くん、じゃなかった、井辻くんがいろいろ考えて明らかにする話(どうも、キャラ的にも推理・解決という感じじゃないんだよね)。

井辻くんは大学生の時に出版社でバイトを2年やっていて、卒業後は営業として採用された。まだ2年目。営業として書店回りをし始めて4ヶ月。まだまだ知らないことがたくさん。
本人は自信がなかったり、前前任者がイケメンで超優秀であちこちにファンがいたような営業さんだったから比べて落ち込んだりもするようだけど、すごく頑張っていて、よく出来るので感心する。

最初のほうで、井辻くんが編集部には配属されたくなかったとか、なにか重大な事情があるっぽく謎めかして書いてあるのでなにかと思って読んでいたら出てきた答えがものすごく拍子抜けする程度のものだったので「なんじゃそりゃー」とちょっと思ってしまったが。

わたしも吉野さんのファンです。井辻くんもかわいいケド。「ニックネーム・ひつじくん」は断固として否定するサガなのね。いいじゃん他社の先輩方に可愛がってもらって……。

短篇5つ収録。
「平台がおまちかね」★★★
このタイトル、こういう話だったとは!平台や書店飾りつけにはやっぱり書店さんの思い入れ、熱意があるんだね。素敵。

「マドンナの憂鬱な棚」★★
マドンナの笑顔を守る会のメンバーが判明する話(違)。オチを読んで、そういえばそこには注目したこと無かったかも~とあらためて思った。喫茶店とか他の店だったらそういうのにも意識が行くのにね~なるほどな~流石元書店員さんだな~(あんまり書くとネタバレになっちゃう)。

「贈呈式で会いましょう」★★★
これの犯人にひつじくんが云ってやったヒトコトはなかなかピシャリ!と相手の愚かさ、視野の狭さを突いていて上手い!とすっきり。

「絵本の神さま」★★
この書店には続いて欲しかったけど個人書店ってそんなに厳しいんだ。ネット書店や大型チェーン店ばかりでなく、町の個人書店でも出来るだけ買おう!(まあ欲しい本が置いてないという悪循環がどうしてもあるんだけど…)。

「ときめきのポップスター」★★★
各社営業氏が自社本と他社本のポップを書いて売上を競う、というその催しがすっごく面白そう!
しかも実在のタイトルが10点出てきたので楽しかった。ラインナップはこうだ。
①新堂冬樹『忘れ雪』角川文庫 未読
②井上ひさし『青葉繁れる』文春文庫 未読
③竹内真『カレーライフ』集英社文庫 未読
④恩田陸『ライオンハート』新潮文庫
⑤隆慶一郎『柳生非情剣』講談社文庫 未読
⑥三浦綾子『母』角川文庫 未読
⑦筒井康隆『旅のラゴス』新潮文庫
⑧若竹七海『サンタクロースのせいにしよう』集英社文庫
⑨加納朋子『ななつのこ』創元推理文庫
⑩ジョン・ダニング『幻の特装本』ハヤカワ文庫 未読?

未読のがけっこうあるなあ。既読は④⑦⑧⑨だけだ。ダニングは『死の蔵書』は読んだとはっきり云えるんだけどこれはどうだったかなあ。
でも正直、既読の4冊の自分の中の評価から、「これぞわたしのイチオシ!」とするレベルなのかどうかはちょっと疑問というか……まあ、現在あんまり売れてなくて、これをきっかけにその本と著者の本がブレイクするきっかけとなる本、という設定があるので難しいんだけど、それを差し引いても詳しいことはネタバレになるけど話の持って行き上、ある程度制約があってこうなったっていうのがあるのかもね。まあ趣味の違いと云われたらおしまいなんだけど。読んでみたいなと思ったのは『カレーライフ』かな。全然未知の作家さんなので、楽しみ。
肝心の謎解きは……「おおこれに何か意味が?」と意気込んだだけにさすがにこれはちょっと苦しいというか別にどうでもいいというか……。