2014/10/25

羊をめぐる冒険 【再々読】

羊をめぐる冒険 文庫 上・下巻 完結セット (講談社文庫)
村上 春樹
講談社
売り上げランキング: 154,960

■村上春樹
極私的な感想なのだけれども、本書は初読みして衝撃を受けてそれ以来ずっと自分の中で大事にしていた物語だったんだけれども、今回読んで【いまの自分】にはこの小説はもう響かなくなってしまっている、賞味期限が過ぎてしまったんだな……ということをじわじわと確かめていくような読書になった。つまりこれは、わたしのなかの変化を読書によって確かめた、ということなのだと思う。それを「青春の終わり」だなんてカッコよく言うつもりはない。でもある種の【若さゆえの】時間はもう過去になってしまったんだろう。

この話のすごく表面的なアラスジで主人公の「僕」を見ると、『1973年のピンボール』で出てきた会社にいた女性と結婚していたが、4年で離婚となった。その時点から物語はスタートする。そして共に働いていた男はアル中寸前(彼は家庭を維持しており、子どももいる)。「僕」はある謎めいた権力者の秘書に「体に星のマークのある羊」を探さざるを得ない方向に持って行かれる。その羊と旧友「鼠」はつながっており、つまりこれは「鼠」を探す旅でもあった。
…というふうになるんだけど、脇にすごく耳の綺麗な不思議な若い女性が出てきて「僕」と行動を共にしたり、羊に脳を支配された人間が出てきたり、そのひとりは「羊博士」になっていたり、羊の着ぐるみを着た「羊男」が出てきたりして、ファンタジーの世界が混じっている。『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』には無かった要素のように思う。例の「やれやれ」もたくさん出てくる。

右翼の大物が住んでいる屋敷がお金はかかっているけど悪趣味っていうのが面白い。その運転手さんがすんごく普通に良いひとなのも面白い。ドルフィン・ホテルがぼろぼろなのに受付・経営者のおじさんが喋ってみると意外に知的で良いひとなのも嬉しい。彼らに幸あれ、と思う。

いけすかない秘書は読んでいるうちに脳内で「ムスカ@天空の城ラピュタ」の絵になっていた。うんうん、ぴったり。

読後、ウィキペディアを見てみたら、《川本三郎との対談で、村上はレイモンド・チャンドラーの小説『長いお別れ』を下敷きにしていると述べている[13^:「対話 R・チャンドラー、あるいは都市小説について」『ユリイカ』1982年7月号。]。》とあって、読んでいる途中に主人公の言動がフィリップ・マーロウっぽいなと思っていたのでおお!という感じ。秘書に言われてジャーナリスト倫理を盾にすぱっとなんの躊躇もなく断るシーンとかね、マーロウの美学っぽいよね。

わたしの手元にあるのは↓こちらの版。1985年10月15日第1刷の1995年12月第29刷(上)、1996年2月第29刷(下)。

羊をめぐる冒険 (上) (講談社文庫)
村上 春樹
講談社
売り上げランキング: 247,015