2014/09/06

クローバー・レイン

([お]13-1)クローバー・レイン (ポプラ文庫)
大崎 梢
ポプラ社 (2014-08-05)
売り上げランキング: 17,983

■大崎梢
ひさしぶりの大崎梢。
この前に読んだのは2009年の『スノーフレーク』でそれ以来だ。
文庫買い溜めをしているときに書店で見かけ、帯に「本をつくる仕事には、あらゆるものが詰まっている」と書いてあり、編集者の仕事がらみのミステリーか~面白そうだな~と軽い気持ちで買ってあったのを本日読みはじめたのだが、読みはじめるやかなり面白くて、仕事の前&昼休み&夕食後と空いた時間はずっと読んで、あんまりいっぺんに読んでも疲れるしもったいないから、と半分くらいのところでいったん伏せたのだが続きが気になってまた読み出し、とうとう最後まで読んでしまった。
おおお、面白かった!良い話だった!ハートフル!
でもミステリーでは無かった。大崎さんは初めて読んだのが創元の書店絡みのミステリーだったしわたしが既読の5作はすべてそうだったのでミステリー作家だと思っていたけどそうじゃないお話も書かれるんだなあ。

主人公は大手出版社に勤める29歳の若手編集者。彼がある晩、ある作家の家で偶然まだ行先の決まっていない原稿を目にしたことから物語がはじまる。
作家が書いた小説がどういうふうに出版社を経て本屋さんに並ぶのか、その工程などがとても興味ぶかく面白かった。いや、他のいままでの読んだ本などから漠然とある程度は知っていたのでまったく未知の世界とかいうんじゃないけど、このお話はそこに主人公の熱意、素晴らしい小説だから本にして売りたい!という素直な気持ちがあって、でもいろんな問題があって、そうすんなりとはいかなくてそれで悪戦苦闘するんだけど、いつまでたっても真っ直ぐにへこたれないで努力を続ける主人公にこっちも「どうなるんだ、無事出せるのか、大丈夫なのか」と手に汗握る感じではらはらどきどきしてしまって、途中でやめられなくなってしまったのだ。そういう意味では、広い意味でミステリーでもあったわけだなあ。

読後、興奮した頭で他のひとの感想を知りたくてネットでちょっと見てみたら、「泣いた」というひとも少なくないみたいだ。わたしは泣くとか泣きそうとかそういうのは無かったんだけど、でも良いお話だったし感動した。まあ、ちょっと「良い話」すぎる気はしないでもないんだけど、っていうか、あんまりにも悪人が出てこず悪い展開にならないので、「そんなにうまくいくはずがない」と勝手に心配し、なにか落とし穴があるんじゃないかと勝手にヒヤヒヤしたりしてしまったというか。娘の難病でお金の無心、ってまんまそういうチェーンメールがあるよなあ、実はなおちゃんが悪党になっていて詐欺だったりしたら後味悪いよなあとか、最後のあるひとが主人公を人気のないところに誘うシーンでうわあ、逆恨みで刺すんじゃないでしょーねとか…。

この本は、本好きにはとっても身に沁みる、共感のわく本で、そしてすべての働くひとに「情熱をもって仕事をする」ことの喜びを思い出させてくれるお話である。まあ、「こんな甘くねーよ!」というツッコミもあるでしょーが、理想だよね、あと環境はどうあれやっぱり自分の気持ちと真っ直ぐ向き合って直球で頑張る姿勢は清々しいし潔い、忘れたくないハートだと思う。
主人公は根っからの本好きでもあるので、文中に実際にいる作家とか作品名が飛び交うのも愉快。