2014/09/17

なんといふ空 【再読】

なんといふ空 (中公文庫)
最相 葉月
中央公論新社
売り上げランキング: 380,717

■最相葉月
目次を写す。
Ⅰ:わが心の町 大阪君のこと/側溝のカルピス/星々の悲しみ/貝殻虫/わかれて遠い人/鬼脚の涙/時をかける人
Ⅱ:おシャカさまに近い人/遠距離の客/パン屋の二階/あなたはだあれ?/旨いけど/女にはわからんけど/夢見るキャッチボール/まだ、虎は見える/ジュリー、ジュリー、ジュリー/音が気になるツボ/声の力/目で聞く人/左手は戦略家
Ⅲ:テーブルマナー/歩き出す谷間/赤いポストに/蕾/昆明断想/白菊/二十万人の夏/彼女の疑問/黒いスーパーマン/ドラマチック・ドラマ/ふたりのM/サルと呼ばないで/二十五年ぶりの宝塚/こんにちは赤ちゃん/本屋へ/お花畑の悪魔/知らない作家の本を読む人/二百円の災い/なんとお呼びすれば
Ⅳ:壁の穴/ふくろふはふくろふ/夢/ある写真家/ある退社/記憶/心の時間軸/私が競輪場を去った理由/手紙
あとがき
解説・重松清


「わが心の町 大阪君のこと」は映画「ココニイルコト」の原案である。
初読みは10年前か。映画を先に観て、原作があると知り、探し求めて購入したらそのエッセイはものすごく短かったのでびっくりし、少々がっかりというか拍子抜けみたいな気持ちになったものだ。2ページと数行。全部で30数行。しかしそのなかには、とてもハンサムでおしゃれなのに古いものが好きだというちょっと変わったでも素敵な趣味をもつカッコイイ青年がやさしい女の先輩の目線で描かれている。
読み返して思うに、前回もそう考えたかもしれないが、本書の中で「大阪君」の話はちょっと浮いているというか異質な気がする。他は全部最相さんの話なのにこれだけ大阪君の話だからだ。

本書を通して読むと、最相葉月というひとが見えてくるような気がする。仕事の出来る、きれいなひと。頭は良さそうなのに財布を落とすのはしょっちゅうだとか。兵庫県は神戸の御影出身というからお嬢様なのかなあ。中学から受験して私立に通ったというが、周囲が裕福な家庭の子ばかりで学校の中でうまく行かなかったと書いてあるが。
タイガースファン。少女時代はジュリー(沢田研二)のファンだった。さらりと前島密(日本の郵便制度を作ったひとだ)が「おじいちゃんのおじいちゃん」だと書いてあったりして、びっくりする。

昭和38年生まれ。25歳で結婚を機に東京に出てきたが、30歳のときに離婚、8年務めた会社もやめてフリーになり、編集の仕事をしながら雑文を書いた。そしてこのへんははっきり書いていないけれど、35歳までに再婚をしてその御主人は久留米の創業100年になる家具店の長男で、著者の箸の持ち方を直してくれたひとらしい。
最相さんは最初競輪の世界を取材して、惚れ込んで本にしたけれどあまり売れず、次に書いた『絶対音感』がベストセラーになって、そこではじめて「新人作家」扱いになったそうだ。

基本的にルポライターというか、取材して書くタイプのひとらしく、物語や小説を創作して書くタイプのエッセイとはそこらへんの根本的なスタンスが違うなあと思う。祖父だって、父親だって、「取材ネタ」になり得るのだ。

アマゾンで古本を買う話が出てきたけれど、このころはまだアマゾンにも浪漫があったんだなあとちょっと面白く感じた。