2014/08/29

散歩が仕事

散歩が仕事 (文春文庫)
早川 良一郎
文藝春秋 (2014-04-10)
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■早川良一郎
本書は1982年7月文藝春秋社から出た単行本が2014年4月に初文庫化されたものである。
帯には解説の江國(香織)さんの文章から「こんなふうに“声”のある文章を書けるひとが、いまどのくらいいるのだろう」と引いてある。
1982年。2014ひく1982は32年前。32年経っての文庫化というのはすごいなあ、正直埋もれてたのを掘り起こしたんだろうけどいったいどういう経緯でいま、なんだろうなあ。
1982年は元号でいうと昭和57年。
まだまだ日本が元気だった時代だ。

早川良一郎という方はどういうひとかをカバー折り返しのプロフィールから引く。
1919(大正8)年、東京生まれ。麻生小学校から麻生中学へ。中途でロンドン大学へ行く。日本大学文学部卒業。兵隊、海洋少年団本部を経て、経団連事務局に勤める。79年に定年退職。74年、初めての著作『けむりのゆくえ』で第22回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。他の著書に『パイプと月給』『さみしいネコ』などがある。1991年没。

本書は定年後の著者が気の置けない友人と「アッハッハ」と笑ったり、町で見かけたことや昔を思い出しての話などがのほほんとした感じで書かれている54のエッセイ集。
読んでいくと、家族構成はご自身と、奥さんと、娘さん、それと愛犬のチョビ(メス)だとわかる。また、下戸でお酒は飲めないこと、煙草をパイプでたしなむ愛煙家(パイプ愛好家)であること、朝が弱く寝坊の常習犯。そしてどうやらかなりの女好き(?)であること……。

定年後のおじさんというと「枯れた」というイメージがどうしても抜けないのだけど、実際はそうではないというのはまあ頭ではわかっているんだけど、やっぱり本書を読んでいると「おじさんと思って油断出来ないなあ。やっぱり(同世代じゃなく)若い女のひとが好きで、ミニスカートとか脚線美とか見てるんだなあ」としみじみ。まあ個人差はあるんでしょーが……。

仕事人間で定年したらガックリ、というタイプもよく聞くけれど、この著者はこういうふうに文章を書くというのもあったろうけれど、そのほかにも気楽なバカ話の出来る友人が複数いたり、ちょいちょい若い女性と出歩いたりして隅に置けなかったり、また愛犬に非常にメロメロで嬉々として餌をやったり散歩に連れて行ったりしており、すこぶる元気そうである。朗らか。多分、同席したひとを明るく楽しませるお人柄なんだろうな。

戦争とか兵隊時代のこともちらっと出てくるけれど重くならないようにさらりと書いてある。英国留学のことは本当に少ない。第一次ベビーブームの折の定年退職者がたくさん出るご時世だから今頃文庫化したんだろうか……にしては数年遅いような気がしないでもないが。

それにしてもナマの(というのも変だな、生きているときの)ハチ公が出てきたのにはびっくり。著者はその尻尾をうっかり踏んじゃったそうである。ハチ君は吠えずにだまってちょっと見上げただけだったそうである。えらーい!かしこーい!さすが、ハチ公!