2014/08/24

それからはスープのことばかり考えて暮らした

それからはスープのことばかり考えて暮らした (中公文庫)
吉田 篤弘
中央公論新社
売り上げランキング: 26,572

■吉田篤弘
『つむじ風食堂の夜』の姉妹作ということで。
読みはじめたのだが、主人公も違うし、舞台も「月舟町」じゃないので「なんで姉妹?」と、気になって先に「桜川余話――あとがきにかえて」を読んだら、うーんそうか、隣町なわけね。っていうか著者の頭の中の思い出の地とこれらのお話はリンクしてて、同じ場所の話なんだ。「正確に言うと、これは『月舟町・三部作』の二番目の物語」なんだそうだ。ふーん。3つめのお話は『レインコートを着た犬』というタイトルだそうで、ググってみるとweb小説中公で連載中?の模様。

ちょっと長いタイトルで印象には残っていたんだけど、実際問題として「スープのことばかり考えて暮ら」す、というのはあまりにも現実味が無くて、だからこれはあくまでも抽象的な言い回し、雰囲気タイトルだと思っていたのだが、実際に読んでみると本当に主人公はある時点から「スープのことばかり考えて暮ら」すのだった。その理由は、なるほど、そういうお話でしたか、という。

このお話にはサンドイッチ専門のお店が出てくるんだけれども、このサンドイッチがむちゃくちゃ美味しそう! 別に変ったものを挟んでいるとか、特に高級志向というわけではなく、ごく平凡な、あたりまえの具なんだけど、作っているひとが誠実なのがいいのかな。注文を受けてから作り出すとかどんだけ優雅なの。

ほんとでもサンドイッチって美味しいのと不味いのの差が歴然とあるというか、コンビニのサンドイッチとちゃんとしたお店で食べるサンドイッチのあの雲泥の差はナニゴト!?っていっつも思う。ふつうのパンではそこまでの差を感じないんだもの、アンパンとかコロッケパンとかでは。
このお話に出てくるお店は「3」と書いて「トロワ」と読むんだけど、その店名の由来が意外で面白かった。駄洒落みたいなもんだよね。まさか駄洒落とは思わなかったわ。「おっさんか!」って感じなんだけど結果がオシャレ過ぎてなんということでしょう、みたいな。っていうか考えたのは吉田さんなわけで、吉田さんってそうかこういうこと好きなんだなーって。店名以外でも登場人物のリンクの仕方とかが駄洒落的な、これとこれとこれが繋がってる、っていう世界の作り方だよね。そんなに世間狭くしなくても、ってちょっと思っちゃうけど、まーそういうファンタジーなんだなあと。

あとがきに岸本佐知子さんを「姉と慕う」と紹介してあり、へー、と思った。クラフト・エヴィングさんは作家さんのいろんなところで「リンク」してるなあ。やっぱりこれはそういうお人柄というか、そういうのがあるんだなあ、なんて作品の雰囲気と関連付けたりして。

サンドイッチも美味しそうだけど、このお話のメインテーマの「スープ」もすんごく美味しそうで、しかもなんか不思議なパワーを秘めていそうだ。もはやただのスープとは思えない。どうなってるんだそのスープ。というかサンドイッチの何倍原材料費かかってるんだろう、いくらで売るのか知らないけど原価割れしないのかなそんなにいろいろ贅沢に食材注ぎこんで。とちょっと余計な心配をしてしまう。

っていうかね、サンドイッチって涼しい場所で保管してあるでしょう、パン屋さんでも。準冷蔵ケース的な場所で。
で、スープは熱々。
これをテイクアウトするのって、やっぱ袋は別で、うーんなんだか持って帰るのひと手間だなあ、とか思わないでもないというか……。
発想が机上の空論っぽいというか、まあ、わたしが面倒くさがりなんだろうけどね。イートインも出来る店ならなんの問題も無いのに!とか無駄な思考をしてしまったり。

このお話に出てくる小学生はふたりとも妙に大人びていて、独特。とくに宙返りをする子のほうはなんでこういうキャラになっているのかその意義がよくわからなかった。
というかまあそのことだけに限らず全体的に「意義」を考え出したら興ざめなこと限りなしいうお話なので、雰囲気をまったりと味わうべきなんでしょうな。

ちなみに単行本はこんな感じの装丁らしい。↓
手書きタイトルが山藤章二っぽくて面白い。

それからはスープのことばかり考えて暮らした