2014/07/09

世界ぐるっと朝食紀行

世界ぐるっと朝食紀行 (新潮文庫)
西川 治
新潮社
売り上げランキング: 58,426

■西川治
小説家じゃないひとの書いた本というのは文章が不親切というかクセがあるというか、正直少々読みにくいところもあるのだけどえいやっと続けて。
マガジンハウスから2000年11月に『世界朝食紀行』のタイトルで出たものの2007年11月新潮文庫版。1週間かけてゆっくり読んだ。
「朝食紀行」と云いつつどこまで朝食のことだけなのかなと思いつつ読んでみたら本当に世界各地でいろんな時期に食べた朝食のことがメインな本で、観光的な要素は朝食にまつわる市場や店のこと、出てくる人もそれ絡み。昼食や夕飯ネタはほぼ無し。全然退屈せずバラエティ豊かで面白い。グルメ本では無いし、旅行文・紀行文でも無い。「朝食」の本なのだ。

地元のひとの中にすごく自然にすっと入って行って、好き嫌いや偏食は無いのだろうか、なんでも美味しい美味しいと食べている。日本人の感覚とは随分異なる食べ物や衛生環境もあり、正直(自分には無理だな…)というのもいくつかあったのだが。
モノクロが多いのだが、写真はやはりカラーが目に鮮やか。このかたはエッセイも書くし絵も描かれるようだが本業は写真家だというから納得。
最後のほうにSMAPの草彅剛くんが出てきてびっくり。スマスマの企画だったそうだ。

若いころ初めてオーストラリアに行ったときは楽なので毎日ステーキを朝食に焼いていたとか書いてあったが、筆者自身料理は出来る人らしい。1940年、昭和15年生まれの方だなあという記述も散見される(幼少期に食べた主食がお米じゃなく麦だったとか、鶏を数匹食用に飼っていただとか)。
1ヶ所校正もれかな?「オーストラリア*ティンピンヴィラ(1969年)荒野にて」の昔の自分を書いた話で一人称をふだんの「ぼく」から「オレ」に変えているんだけど、「おれ」になっちゃってる部分がある。この文章だけやたら主語が多いので(ふつうの文章は日本語の慣例にならって省略されている)、最初ハナについたけど読んでみたらすごく良い内容でちょっと感動した。こういう親切なひとって本当にありがたい存在だよなあ。ちゃんとお別れを言いたかったろうな。

本書で一番好きだったのは「オーストラリア*ボタニー・ベイ(1967年)ユダヤ人の経営するホテルで毎日作った朝食」だ。まだ28歳の著者が明るい風景に憧れて写真を撮りにオーストラリアに行くんだけど、お金がないから自炊できる安ホテルに泊まって、近所のスーパーで安い肉とパンを買ってきて、ひたすらステーキばっかり食べていたという話。いかにも若さならでは、のメニュー選択が面白い。そこで出会った白人の女の子とのエピソードもなかなか考えさせられる。当時の日本にはスーパーなんてほとんど無かったと書いてあって、えっ、じゃあどこで買い物するんだろうと一瞬思ったけどそうだよね、むかしはみんな個人商店だったんだ、八百屋さんとか肉屋さんとか。
話によって時系列がばらばらなのでぼんやり読んでいるとちょっと戸惑う。

目次(新潮文庫サイトからコピペ)
トルコ*バザール(1991年)どこへ行ったら朝食が食べられるのだろう
トルコ*トラブソンの街(1991年)骨と肉のエキスのスープ
モロッコ*ホテルと街で(1998年)スークの中の朝食
モロッコ*砂漠の中で(1998年)砂漠民ノマドのハリラ
イタリア*セグロ(1974年)エリカばあさんのマルメラータ
フランス*パリ(1971年)冬。パリ。グラチネ。市場。朝食。
オーストリア*ウィーン(1981年)朝食はカフェで
ドイツ*デュッセルドルフ(1991年)ドイツの朝食はパンにあり
ドイツ*ハンブルグ(1989年)燻製ウナギの叩き売り口上
デンマーク*自然公園(1989年)木洩れ日の下のオープンサンド
スコットランド*古いホテル(1980年)八月十二日の朝食
イギリス*田舎のホテル他(1990年)大英帝国の輝かしい朝食
イギリス*ビクトリア駅(1999年)一九九九年一月一日のロンドンでの朝食
カナダ*一号線(1981年)コンボーイが駐車しているところ
カナダ*森の中で(1984年)雨滴を浴びて
アメリカ*マイアミ(1964年)耀ける朝、輝ける生涯を迎えるための朝食
アメリカ*ロスアンジェルス(1990年)ロスの朝食は、二軒あり
アメリカ*マイアミ(1997年)カリブのクルージング
メキシコ*オアハカ、メキシコシティー(1991年)ピリリとうまい朝食
オーストラリア*ボタニー・ベイ(1967年)ユダヤ人の経営するホテルで毎日作った朝食
オーストラリア*エアーズロック(1982年)エアーズロックの朝食は、すがすがしい
オーストラリア*ティンピンヴィラ(1969年)荒野にて
フィジー*ヴァトレレ(1996年)島での朝食
タイ*バンコク(1984年)寄進は仏徒の証し
タイ*寺にて(1984年)指の食感
フィリピン*セブ島(1993年)市場での朝食
インドネシア*パダン(1994年)ルママカン(大衆食堂)で働く男たち
マレーシア*クアラルンプール(1997年)モハメットの妹の屋台の朝食
ベトナム*ハノイ(1997年)朝食はフォーに限る
ベトナム*ハノイ他(1998年)フランスパンとコーヒー
インド*湖上のホテル(1980年)なんでもカリー風味の朝食
モルディブ*海辺の店で(1980年)一日に五回の食事
モンゴル*ゴビ砂漠(1999年)遊牧民のゲルをたずねて
モンゴル*草原の祭り(1999年)ナーダムを見に行く
韓国*プサン(1994年)着脹れおばさんが作るボリバブ
韓国*ソウル(1990年)酒を飲んだ日には、ヘジャンクックを
香港*ホマンティン他(1970年)香港飲茶
台湾*台南(2000年)虱目魚肝粥ってどんな粥
日本(1945年)茶粥の憂鬱・中国粥の豊饒
日本(1999年)京都の旅・剛くんとの朝食
日本(2000年)朝から麺食い
日本(2000年)鰹節を削る音が
あとがき
文庫書きおろし
 中国*北京(2005年)オリンピックを控えた、二〇〇五年六月十九日の北京の朝食
文庫版あとがき
解説 梅田みか