2014/07/02

面白南極料理人

面白南極料理人 (新潮文庫)
西村 淳
新潮社
売り上げランキング: 21,439

■西村淳
この本は2009年8月に堺雅人主演で映画化もされた(まだ観れてない)。
小説ではなくて、エッセイというか、まあ「日記」が一番近い感じ。

本書の著者は第30次と第38次の南極観測隊に参加しており、本書はほぼその38次越冬隊として南極で過ごした日々の記録。南極といえば「昭和基地」だと思っていたらそこから1000㎞も離れた、標高3800m、平均気温マイナス57度のより過酷な地、南極ドーム基地がこの話の舞台なのだった。しかも総員たった9名!

有名な本なので、新潮文庫の和田誠のイラストによる表紙なども知っていたのだけれど、ちらりと見た中身の印象がなんとなく読みづらそうだったのでいままで読まずにいた。実際、話があっちこち行く感じの書き方で、作家の書く文章とはだいぶん違うなあ、とは思う。
ちなみに著者はテレビ番組「世界一受けたい授業」に出演されたことがあり、そこで南極での経験を活かした冷凍素材の解凍の方法や料理について紹介しているのを観たことがある。どっちかというとひょろっとした細身の大人しそうな印象の堺雅人とは随分イメージが違う「細かいことは気にし無さそうなおじさん」だなあと思ったものだ。

さて「料理に関する本」をマイテーマとしている昨今なので今こそ、と読んでみた。テレビで観た印象と活字で読んだそれがほとんどブレなし。新潮文庫のホームページには「レシピも」と書いてあるけどレシピは載ってないに等しいし、日本の普通の食卓に載せるにはあんまり参考にならない本ではある。だって南極観測隊というお国の使命を帯びて行ってる立場ならではの豊富な予算を思わせる贅沢な素材をこれでもかと日常に使っちゃうんだもの。何十万する松阪牛をよりによってベーコン包み!?あ、あり得ん…。ステーキとかで素材の味を堪能すればいいのに(超余計なお世話)。
まあ、具体的なメニューが載っている回というのはだいたい誕生日会やなにかのお祝いのとき、お正月などだったので、ハレの日だったことは確かだけどそれにしても伊勢海老人数分のお味噌汁とかいろんな産地の蟹づくしとか、うっはーすっごーいとびっくり。しかも献立が何品もあるのだよね、6,7品はアタリマエ。いろんな魚のお刺身がある上に焼き物も何品もあって、まあ大人の男性9人がお腹いっぱい食べるにはこれ当然なのかなあ、何を作るか考えるだけでも大変そう。
ふだんの「ケ」の日にはどんなもの食べてたのか少ししか出てこないので、詳細な全献立が巻末に付いてたらもっと面白かったろうに(日誌をつけてたらしいから、データはあるはず)。

それにしてもこの本を読むまではこの著者ってタイトル「料理人」って付いてるんだから職業もプロの料理人と思っていたらどうも違うみたいだ。なんで料理人の立場で選ばれたんだろう、料理好き?とかそういうこと?実は管理栄養士の資格持ってるとか…書いてなかったけど。他の料理人は本業がフランス料理のシェフ、割烹の板前、とか書いてあってわかりやすいんだけど、ご自分のこと案外書いてないんだよね(愛妻みゆきちゃんとは高校時代からのつきあいだとかは書いてある)。

新潮社のホームページから著者略歴をコピペ。
【1952(昭和27)年、北海道・留萌生れ。網走南ヶ丘高校卒業後、舞鶴海上保安学校へ。巡視船勤務の海上 保安官となる。第30次南極観測隊、第38次南極観測隊ドーム基地越冬隊に参加。巡視船〈みうら〉の教官兼主任主計士として海猿のタマゴたちを教えた後、 2009(平成21)年に退職。現在は講演会、料理講習会、TV/ラジオなどで活躍中。著書に『面白南極料理人』『面白南極料理人 笑う食卓』『身近なも ので生き延びろ─知恵と工夫で大災害に勝つ―』『南極料理人の悪ガキ読本―北海道旨いぞレシピ付き―』など。】

「はじめに」で例に出されてるひとみたいに、南極観測隊と云われても「タロとジロ?」くらいしか知らなかったのだけど、この本を読むことによっていろんなことを教えてもらえてすごく面白かった。マイナス70度とか経験しちゃうとマイナス30度台が「今日はちょっとあたたかい」とか思えちゃうんだね…ってんなワケあるかぁ、全然暖かくないはずなんだけど! とか、なんでこの気温の中で露天風呂してんの!? え、ジンギスカン? さっさと食べないと即凍っちゃう? イヤなんでわざわざ外ですんの!?とかなんども脳内ツッコミを入れながら楽しく読んだ。

この本に登場する人物はすべて実在・実名みたいなんだけど、たまに個人の悪いところを暴いている箇所があり、それもだいたい同じひと対象になっているのがちょっと気になったけど、まあ、そういう点も含めて「気にしない」タイプの性格なんだろうなあ、だからこそやっていけたというのもあるんだろうなあ、とも。
この環境で1年、健康体で帰ってこれるだけで精神的・肉体的ともに強靭である証明だと思う。