2014/07/13

泣かない女はいない 【再読】

泣かない女はいない (河出文庫)
長嶋 有
河出書房新社
売り上げランキング: 277,162

■長嶋有
実はだいぶ前に『長嶋有漫画化計画』を買って読んだのだが(漫画家さんによるそれぞれの解釈が面白かった。原作とまた雰囲気違って)、その中でも特に良かった数作のうちの1つが小玉ユキの「泣かない女はいない」で、さすが恋愛が主なテーマの少女漫画家さん、主人公も主人公が恋する相手も見事に素敵イメージで具現化されていて、「ああ~これって恋愛小説だったんだー!」と感動した。イヤ、原作読んだときは長嶋有ばっかり続けて読んでたときで、「また彼氏とか夫がいるのに他のひとを好きになっちゃう女の話かよ…」とそういう食傷気味な感想がメインに来ちゃってたんで、純粋にひたれなかったんだよね。

今回文庫を買い直して読み直したのだが、大筋はわかっているのでディテールに集中して読めたんだけど、やっぱり上手いなあとしみじみ思うと同時に、この話の主人公は何でこう淡々と淡泊なんだろうと思った。でもちゃんと感情の動きとか伝わってきて、桶川に惹かれていくのとか納得・理解できちゃうんだよなあ。

漫画を読んだときにちょっとだけ微妙にひっかかってた主人公の気持ちの流れが、原作を読んだらすっきりと飲み込めた。いや、少女マンガ的にはあれでいいんだけど、実際は相手が自分のことを「好き」だと云うんじゃないか、っていうのが先にくるっていうのはちょっとアレなんで、やっぱりあの場では「転職」なんだろうなっていうのがわかっている、というほうがこの話の主人公の聡明さに合っていると思う。

それにしてもこれは2005年に単行本が出ているわけで、つまり10年前の話だなあ、というのをしみじみ思った。今なら主人公は正社員じゃなくて派遣社員とかそういうのになってるんじゃないかなあこういう会社だったら、と思うから。
お昼休みに他の女子社員に無理して迎合せず、散歩に行っちゃったり自分のスタイルを続けるところとか、このひと良いなあ、と思った。桶川さんに告白して結果が出るまで彼氏には黙ってても良かったんじゃないかな、というのはズルい考え方かなあ。でもこれは男側から書いた女だしなあ、うーんでもあの彼氏とは結局どう転んでも無理だったのかな、気持ち完全に離れちゃってたわけだし。っていうかこの職場に彼女はずっと居続けるのかなー正社員だしなー派遣だったら速攻やめてるんだろうなーとかいろいろ余韻が残る作品。

もう1篇の「センスなし」は中学生時代に聖飢魔IIのファンの子とそれが縁で仲良くなった主人公の話なんだけど、鬱屈していて読んでいてしんどかった。愛人を作ってあんまり帰ってこない夫がそれを打ち明けたときにかっとして手近なもので殴ってしまったらそれがブロンズの置き物で、当たりどころによっては殺してしまってたかもしれない、そうなると刑務所に入らなければならないから「割に合わない」と考えるところが「ああもうこのひとは夫のひとに全然愛情がないんだな……」と何よりも伝わってきて面白いなと思った。でも離婚すると云われてイヤだと思ったのは夫の思い通りになるのがイヤなんだろうな。
好きなアーティストで世代別の違いがあって、主人公たちよりも若い人たちの方が「センスがある」らしい。チャゲ&飛鳥はセンスが無い例に出てきて、いまちょっとニュースで話題になっているから「あー」と思った。そういえばわたしは聖飢魔IIもKISSも聴いたことが無く、長嶋さんとそんなに大きく年齢は変わらないと思うんだけどそのちょっとの差が大きいのかな。十代の2,3年って大きいもんね。まあ単なる好きな音楽の趣味の差っていうのもあるんだろうけど。デーモン閣下は知ってるけど歌のひとっていうよりはなんか、コメンテーターとしての印象の方が強いんだよね。