2014/06/26

いとしいたべもの

いとしいたべもの (文春文庫)
森下 典子
文藝春秋 (2014-05-09)
売り上げランキング: 76,703

■森下典子
バスの時間待ちの徒然に大阪駅ブックスタジオで表紙のメロンパンのイラストの鮮やかな黄色に惹かれて購入。全然知らない著者だけど、この方が文章も絵も書かれている。絵描きさんじゃないらしいのに、絵がすごーく上手!本物みたいで、しかも絵ならではのあたたかみがある。すべてカラーなのも嬉しい。

「おわりに」によればこの方は五十半ばになるまで「料理は苦手」として、同居されている料理上手なお母様がずっと台所に立たれていたそうだが、確かにふだん料理をしている女性とはちょっと異なるラインナップではある(「料理は苦手」と思い込んでしまった原因的なエピソードが本書「七歳の得意料理」だと思う。お母様はこの方にお料理よりお勉強の出来る子になってほしかったんだろう。つくづく、子どもの育ち方って親の姿勢に依るよなあ)。

先日読んだ石牟礼さんの本とはガラリと雰囲気が異なり、なんとも現代的で気軽な楽しい食べ物紹介エッセイだ。どっちがイイとかじゃなくて、両方それぞれの良さがあって、素敵だ。
森下さんのはみんな庶民的というか、食べたことのある知っている味が多いので、とても親しみやすい。今風に「どこそこのあれが美味しい」と紹介してある回もあるけど、その書き方も全然気取ってらっしゃらなくて、お人柄だなあと思う。
最も共感したのはメロンパンの回。そうそう、中身も全部、あの黄色くて格子模様のカリッとしたのが続いていると思ってたよなあ! 最初に食べた子どもの時、中はふつうのパンダと知った時のあの落胆をくっきりと思い出した。おまけに全然「メロン」じゃないし…「見かけがメロンっぽいだけなのかあ。中にメロンクリームとか入ってたらもっとワクワクできるのになあ」とがっかりしつつ考えたものだ。

ウィキペディアの短い記述ではよくわからなかったのでもう少し調べてみると光文社の同著者の『前世への冒険』のページの略歴にこうあった。
【1956年神奈川県生まれ。日本女子大学文学部国文学科卒業。『週刊朝日』のコラム「デキゴトロジー」の取材記者を経て、1987年にその体験を書いた『典奴どすえ』を出版。それ以後、ルポ、エッセイなどを執筆している。著書は『日日是好日』(飛鳥新社)、『いとしいたべもの』(世界文化社)ほか多数。】
デキゴトロジー、ってああ、本屋さんでよく見かけたなあ、いまは全然見ないけど、懐かしい。読んだことは無いんだけど…。
1956年=昭和31年。平成14(2002)年の秋にホームページ「おいしさ さ・え・ら」へ執筆依頼があったと「あとがき」にあるから本書内容が書かれたのは46~50歳くらいか。そこへ加筆して単行本(世界文化社・2006年6月)にしたものの文庫化(2014年5月)である。絵はこれは玄人はだしだと思うんだけど、「あとがき」によれば連載3回目から初めて描いたとかあるんだけど、なんでこんなに上手いのかは謎のままである。
なお、「おいしさ さ・え・ら」はまだ現役続行中の模様。

◇目次を写して、項目ごとに・・・として、紹介されている食べ物を記した。
はじめに・・・母手製のラーメン
オムライス時代・・・母手製のオムライス
くさやとバンデラス・・・くさや
わが人生のサッポロ一番みそラーメン・・・サッポロ一番みそラーメン
カステラに溺れて・・・いただきもののカステラ
ブルドックソース、ちょうだい!・・・とんかつとソース
端っこの恍惚・・・塩ジャケの皮・かま
水羊羹のエロス・・・たねやの水羊羹
カレー進化論・・・二日目のバーモントカレー中辛(野菜たっぷり)
父と舟和の芋ようかん・・・舟和の芋ようかん
今年もやっぱり、秋がきた…。・・・鶴屋吉信の栗まろ
それは日曜の朝、やってきた・・・バブル時代の国産松茸(マツタケの銀紙焼き)
夜更けのどん兵衛・・・日清きつねどん兵衛
漆黒の伝統・・・桃屋・江戸むらさき ごはんですよ
黄色い初恋・・・メロンパン
茄子の機微・・・茄子(焼き茄子)と小津映画
七歳の得意料理・・・母と作ったポテサラサンドイッチ
鯛焼きのおこげ・・・人形町の柳屋の鯛焼き
カレーパンの余白・・・新宿中村屋のビーフカリーパン
かなしきおこわ・・・おこわのおにぎり
幸せの配分・・・横浜崎陽軒のシウマイ弁当
おはぎのおもいで・・・父方の祖母手製のおはぎ、映画「紙屋悦子の青春」
この世で一番うまいもの・・・ゆきひらで作ってもらったおかゆ
単行本あとがき
おわりに・・・文庫版あとがき