2014/06/04

整形前夜

整形前夜 (講談社文庫)
穂村 弘
講談社 (2012-07-13)
売り上げランキング: 106,196

■穂村弘
ほむほむが各媒体に書いたエッセイを集めたもので、だいたい2005年から2008年くらいの初出。穂村さんは1962年生まれなので43~46歳くらいのときに書かれたもの。ちなみに結婚が2005年なので、新婚時代に書かれたものという見方も出来よう。

目次をそのまま写そうかと思ったのだがどちらかというと「この掲載誌にこの内容か」というほうが興味深かったので目次の順序ではなく、初出一覧を写すことにする。連載分も本にまとめるときにバラされている。ちなみに「FRAU」はウィキペディアによれば【対象年齢は25 - 29歳の女性】だそうだ。

「FRAU」のときは若い女性向けのテーマを女性編集者から提案されてというパターンが多く、「素敵男子への第一歩」と提案されて「存在感のうすいひと特集」に原稿依頼されて「目が覚めるような思いがした以来だな」というのが面白かった。ほむほむは「世間知らずの皮をかぶった知的なオオカミ」だと思うんだけど、二十代後半女性から見るとモテようがなんだろうが四十過ぎのおじさんなんてそんなものなのかもね。
テーマを受けつつ、まっすぐには書かないで斜めにそらしたり屁理屈?みたいなのをこねはじめるのも面白い。

本書には本関係の話がけっこう多くて面白かった。そうそうそう、って感じで共感するところが多く「本を読むひと」「最適外出本」「古本と『差額』」「定量制」なんて特にその通り!と激しく同意。本を読まないひととは古本屋や新刊書店に一緒に入ってもさらりとしか見れないし、外出に持って行く本を選んでいて時間がギリギリってことはよくあるし、古本を買って同じ本が違う値段で売られているっていうのはそういう計算しちゃうし、好きな作家だったのにある時点で「もういいや」になるっていうのは本当にそのとおり。嫌いになったとか、作風が変わったとか、そういうんじゃないんだよね。受け手の側の気持ちとかが原因なのだ。

あらゆる物事に向き合った時の「共感と驚異」という異なった受け取り方がある、という指摘には襟を正した。ついつい「共感できる=素晴らしい」となりがちなんだけど、「驚異を驚異のまま受け取る」感受性を失ってはいけない!と危機感を覚えた。この説によれば十代のころはそんなに共感に重きを置いていなかったということになるけど、そうだったんだろうか。じゃあ、読書感想文の定番「主人公はこうしたけど、わたしはこう思いました」系の書き方はどうなんだろう。まあ、あれはもともと大人が考えた型なんだろうなあ。

本書で一番感動したのは「裏返しの宝石」。これぞまさしく「驚異」。あのチャンドラーをそういうふうに読むひとがいたなんて! 虫のくだりはなんとなく覚えているけど、うーん、ほとんど意識してなかったな。変なひとだなマーロウって、って思ったくらい。だいたいミステリーはトリックとかストーリーとか展開に感情の大方を持ってかれがちだしね。純文学だったらまた違う読み方をしたんだろうけども。解説を読んだらトヨザキ社長も同じことを書いておられて、「共感」。

本書を読んで、自分が倉橋由美子を未読であることを非常に残念に思った。まあ今からでも読めばいいんだけど。思春期~二十代前半に読んでおくべき書という感じなので。なんか著者の名前が某アイドルを連想させて読む気を無くさせる感じだったんだよね…。

「ku:nel」2006.3月号 非エレガンスのドミノ倒し 
「FRAU」2005.5.5-2006.12.5号
七三からの脱出/髪型との戦い/男の証/素敵男子への第一歩/映画と現実/もうひとつの時間/女たちが消える日/愛し合える身体/普通列車「絶望」行/京都の学生になりたい/東京のバリア/美への進化/してはいけない恋なんて/一発逆転への挑戦/「うずまき」の肌
「本の雑誌」2006.1-2009.4月号
著者近影/そんな筈はない/共感と驚異/共感と驚異・その2/共感と驚異・その3/〆切/本を読むひと/タイトル・その2/サイン会/ヤシンデ/本を贈る/デッドライン/定量制/最適外出本/書き出し/作品予知/「読者」の謎/生身問題/古本と「差額」/シガレット香/書評/表現の痕跡/言葉と「私」/言葉の迷宮(低次元バージョン)/「変」になる/言語感覚/言語感覚・その2/言語感覚・その3
「an・an」2007.6.20号 檸檬の記憶
「Coyote」№11 はじめての本
「群像」2006.12月号 好き好きセンサー
「毎日新聞」2006.7.22~2006.9.19付
他者の心の謎/絶体絶命/絶体絶命・その2/ホテルとの戦い/20分の3の恐怖/短時間睡眠への憧れ
「PHPスペシャル」2008.11月号、2008.7月号
整形前夜/裸足で来やがって
「野生時代」2008.10月号 逸脱者の夢
光文社文庫 江戸川乱歩全集第28巻『探偵小説四十年(上)』 来れ好敵手
サッポロビールホームページ 1981年の「山伏」/おとなしい動物のような車たちの世界
「望星」2008.5月号 トマジュー
「産経新聞」2008.7.21付 透明な夏
KAWADE道の手帖 倉橋由美子2008.11月号 思春期の薬
「本を選ぶほん 中学校用カタログ」 自意識トンネル
「yom yom」2006.12月号 裏返しの宝石
「歌壇」2007.4月号 濁った色
「読売新聞」2008.5.27、2007.4.11付 感性/恋への挑戦
「東京おさぼりマップ」 ふたつの人生が混ざる場所
「ポプラ文庫 江戸川乱歩・少年探偵シリーズ(10)『宇宙怪人』」 異変への愛
「小説現代」2007.2月号 アロマテラピー
「小説宝石」2006.1月号 グアムとの戦い
「おに吉」2005.10月号 引っ越しと結婚と古本屋
「花椿」2007.8月号 二十一世紀三十一文字物語