2014/06/12

タルト・タタンの夢

タルト・タタンの夢 (創元推理文庫)
近藤 史恵
東京創元社
売り上げランキング: 179

■近藤史恵
ひさしぶりの近藤史恵を読む。『サクリファイス』以来。
料理ネタ本をとりあえず最近のマイ・テーマにしていることもあって。
本書は「ミステリーズ!」に2003年12月号~2006年2月号に不定期掲載され、2007年に創元クライム・クラブの一冊として刊行されたものの文庫化(2014.4.30)したもの。
連作短篇集。

商店街の小さなフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マルを舞台に繰り広げられる「日常の謎」を扱ったミステリー。「ひとが死なない」ミステリーだ。このジャンルはもう本当に多くなったなあ。

目次の次にこのパ・マルの従業員の職種と名前が書かれていたので「これはキャラ立ちしてるってことかな」と思ったらやっぱりそうだった。なんせ4人しかいないので、読んでいくうちにそれぞれの顔が浮かんでくるよう。特にシェフの三船さんは「武士をイメージした」長髪を後ろに束ねて、とか渋い個性を光らせている。名探偵はこのひと。語り手はギャルソンの高築君だ。
料理長の三船シェフで三十代半ばということなので店のメンバーも若いけど、それぞれのお話に登場するお客たちもみんな二十代、三十代ばかり。若いなあ。二十代でフレンチ(庶民派のお店だけど)の常連とかって凄いよなあ。

著者の近藤さんは1969年生まれだから、その同世代がもっと出てきてもいいのに意図的に若くしてあるのかな?とちょっと思った。
フランス料理には全然馴染みがないのでメニューを読んでも舌の上で再現、とはいかないのだけれど(おまけにアルコールに弱いのでワインも飲めない)、読んでいるだけで「ああ、きっとすごく美味しいんだろうな」と思える。とってもグルメな一冊。しかもミステリーとしてもなかなかピリッとしてるし、すべてハッピーエンドなのも良い。
フランス料理店が舞台だけどこの人情と暖かみはまるで日本の定食屋のような、気の置けない空気でとっても心地好い。

目次
「タルト・タタンの夢」
「ロニョン・ド・ヴォーの決意」
「ガレット・デ・ロワの秘密」
「オッソ・イラティをめぐる不和」
「理不尽な酔っぱらい」
「ぬけがらのカスレ」
「割り切れないチョコレート」