2014/04/29

安全な妄想 【再読】

安全な妄想
安全な妄想
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長嶋有
平凡社
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■長嶋有
2011年9月平凡社刊の再読。

今回読み直して思ったことは「なんだかさびしそうな気がするのは気のせいか」。そういえばこのひとのエッセイには奥さんが出てこないね。
「蕃爽麗茶」をめぐる出版社との闘いに半ばあきれ、天気予報が間違ったときの予報士へのクレームに吹き出しそうになり、ホットコーヒーをあたため続けた話は何度読んでもほっこりする。状況ではなく、長嶋有というひとのその思い出の取り出し方、心情へのおもんぱかり方に。

赤塚不二夫の「ああ無理」にはもう笑わなくなった。前に読んだときは息も絶え絶えになるほど笑いが止まらなかったのに。「これが面白かったんだよな」と確認する感じで文字をなぞっている。
「前は泣いたのに、いまは泣かない」よりも「前は笑ったのに、いまは笑わない」のほうが多い気がする。何故だろう。「いまは~ない」の理由は、「泣く」と「笑う」で同じなんだろうか。同じ部分と、違う部分があるような気がする。感情の磨滅・摩耗・慣れ。笑いのほうが賞味期限が短いようにも思う。
「前はなんともなかったのに、いまは(泣けて・笑えて)しかたない」ということも少ない気がする。なんらかの体験を経て、そうなることもあろう、ということは想像できるのだが。
これは成長なのか、退化しているのか。

文中に出てくるアルファベットで匿名化された交流ある作家たちの名前を想像するのも楽しい。「歌人のH氏」は穂村弘だろう。「作家のS」は柴崎友香かな? 装丁家のNさんは名久井直子じゃないかと。若手のYというのは男性かと思っていたら後のほうで著者自ら山崎ナオコーラのことだと明かしてあった。ふーん。

装画は100%ORANGE、装幀は芥陽子。
カバーを外して本体に描かれた太陽→水金地火木土天のイラストに異様な迫力があるので驚く。前回はカバーのほうに気を取られて、気付かなかったのだろうか。100%ORANGEってこういうのも描くんだと感動。
著者公式サイトでの紹介文が「力いっぱい」な感じで面白いので引いておきたい。

デビュー10周年に満を持して放つ怪エッセイ集。連載時から異様なムードに読者驚嘆、同業者は呆れつつ喝采! 描きおろし多数の100%ORANGE氏のイラストはさらに面妖に。
震災中に連載された東京新聞「放射線」欄、LOVE書店の迷連載「ウットリ堂書店」、朝日新聞「作家の口福」、大反響を呼んだ「ジャパネット考」ほかも精選収録した(魔の)66編に悶えろ。