2014/04/04

問いのない答え 【再読】

問いのない答え
問いのない答え
posted with amazlet at 14.04.03
長嶋 有
文藝春秋
売り上げランキング: 24,985

■長嶋有
今年の1月に読んだ本をもう再読してしまう。
こんなに早く「再び読む」というのは異例なんだけど、別に深い理由とかはなくて、単に自室の本棚の「長嶋有コーナー」の幅に入らなくて棚ざしではなくその部分に平置きしてあったから目に留まりやすくてなんとなく手に取って読みはじめたらやっぱり面白いのでそのまま続けて読んだんである。さすがによく覚えているんだけど、読んでいる最中にファスナーが開いていくように(という比喩は変だけど)思い出していく場所もあって、やはり記憶にばらつきがあるのだな、というのを実感した。

二度目の感想だからどう書こうかと思って、まず一度目も思って書き忘れたことを最初に急いで書いておくと、文中に京都の一乗寺の雑貨屋みたいな本屋が出てくるんだけどそれってココのことだよね?恵文社一乗寺店。叡山電鉄とは書いてなくて、「地下鉄を乗り継ぎ」って書いてあるんだけど、しかも「雑貨屋」って書いてあるんだけど。叡山電鉄に乗りながらそのことに関する記述がまったく無い、っていうのは不思議な感じがするんだけど、うーんまったくそういうのに関心なかったらそんなものなのかなあ(わたし別に鉄ちゃんじゃないけど変わった路線とかには萌える)。

もうひとつ記しておきたいのが本書でなるほどな、ふーむ、長嶋さんはこれを書きたかったんだと(勝手に)思ったシーンで、それは「フキンシンちゃん奮闘する!」の章で114頁から120頁くらいのところで書かれていることなんだけど全部は無理なので部分的に写させてもらう。

  今、思う。いいけど、約束できるけど、それは実はおやすいごようなんかではない。(中略)
  私のことを忘れないでいてくれる? というのは大変な願い事だ。
  だって、忘れてしまう。私のことを好きになってとか友達になってという願いに似た欲求のようだけど、まるで違う。榴美の願いに対し明らかに不当な要求をしたことを、言われた榴美自身が気づいていない。
  悲しいことや辛いこともすべてを覚えていたら人は生きていけない。忘れるというのは人間にとって大事な作用なのだ、とかいう。誰がというのでなしに、大勢が。
  そうなのかもしれない。
  他方、忘れないようにという警句もこの世界にはたくさんある。ノーモア、ノーモアっていう。碑を立てて頑丈な石に彫り込む。(中略)
  私のことを忘れないでいてくれる? と願うことは、本当に約束を守ってもらえると期待していることをまるで意味していなかった。(中略)
  忘れてしまうのも、忘れないでという重い要求の重さが伝わらないのも、榴美だけでない。友達になってという言葉と同じように受け止めただろうし、当然だ。


ここを読んで何が心に響いたかというと、世の中でわりとよく気軽に出てくるような「忘れないで」という約束や「忘れてはいけない」といういましめのワードを言うほうも言われるほうも、実はそんなに真剣に重く深く、言葉通りに守り切ろうという決意を持って発信しているわけではないんじゃないか、実はそれはもっと凄い意味を持った言葉なんだよ、という長嶋さんのような言葉に対して誠実にむきあっている作家からのメッセージを感じ取ったような気がしたからだ。こういう繊細さというのかな、そういう面があるから長嶋有の小説というのはいっくらほのぼのしたり飄々としてみせたりしたって、心に入り込んでくるんじゃないのかなと思う。

今回再読して、やっぱり少佐とクニコさんがダントツで好きだなあと思った。一二三ちゃんも良い。
いつか、クニコさんとか少佐が主人公のお話が読めるといいなあ。