2014/04/19

明暗

明暗 (新潮文庫)
明暗 (新潮文庫)
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夏目 漱石
新潮社
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■夏目漱石
漱石の絶筆。未完ということがあって、いままで読まずに来たが、青空文庫で最初の方を試しに読んでみたらなかなかスジが面白くて展開が気になったのできちんと読むべく文庫で購入した。

これが『猫』『草枕』『坊っちゃん』と同じ作者かと思う。『虞美人草』も不愉快な女が出てきたけどそれが超パワーアップしたような。
主人公だけのじゃなくて、この話ではそれぞれの立場でそれぞれの思考が書かれているので、男女それぞれの内心の心理描写がこれでもかと延々続いてそれがいちいちリアルでまーみんな身勝手なことー、って感じ。エゴっていってもここまで自分の配偶者を信じられない、思いやれないものかしら? 結婚半年なんて、まだまだ幻想でいいのに、欲しがってばっかりいるんだもの。

とりあえず出てくる人物のほとんどが嫌いで、最初は味方していてもその心中のあまりにも自分中心さ、姑息な立ち回り、持って回った言い回しを読んでいるとだんだん嫌いになっていくのであった。こういうの読んでて面白いというのもまあ週刊誌的な俗な興味でわからなくもないが、でもあんまり愉快じゃないなあ。

最初のほうはお延が虚栄心が強くて依存心も高くて嫁いだくせに自分の親戚の家や叔父のほうばっかり見てる気がして、それなのに「自分がこれだけ尽くしてるのに夫がちっとも自分に応えてくれない」と不満たらたらで、結婚半年でそれって大丈夫なのか?って感じで嫌いだなあと思って、彼女がなんらかの反省に至ることを期待して読んでいったのだが、読んでいるうちにその夫の津田の持って回った言い方や勤め人で独立した家庭の主人のくせに実家の親から送金に頼っていてしかもそれが金持ちの家出身の妻に対する見栄であるというので馬鹿らしくなって嫌いになり、お秀は立場的にお延を嫌うのはもっともだと同情したがそれにしても理屈ばっかり言うし自分の感情で誤解したものをひとに言いつけたりして小賢しく立ち回るので「お前はほかにやることないんか。そんなに暇なんか」と嫌いになり、吉川夫人も出てきたときは別に鷹揚で良い夫人だと思ったのが津田夫妻のありよう、とくにお延が嫌いと見えて夫の前の愛人と会うようにセッティングしたり、お延をもっと立派な妻に教育し直してやろうとか言い出して、いくら上司の妻という立場であるとかいろいろあるにしても立ち入り過ぎで「お前はほかにやることないんか(以下同文)」と大嫌いになった。
その他、小林はまわりくどい言い方だが仮にも友人を強請るような真似をするし下品だし下劣だから嫌い。お延の従妹の継子も自分の見合い相手の判定を自分ではしようともせずにひとに頼ろうとするそのなんでもかんでも自分では決められない性質が鬱陶しくて嫌い。その妹も勝手なこと言ってるけどまだ幼さの残るほんの少女だから可愛げがある。津田の京都の父親は自分と息子のお金の問題を自分が出すのが嫌だから娘の夫に理屈を言って出させようとする姑息さが嫌いだし、延子の叔父岡本は尊大で無神経だから嫌い。
この小説に出てきて別に嫌いじゃないのは津田の家の女中さんくらいかなあ。
清子に至ってはなんだかよくわからん。けど逃げて正解だったね。

たしかにこれだけの人間のそれぞれの心の動きをここまでリアルに描き出したこととか、それによってその人間関係の複雑さなどを表現してることとか、明治の作品なのに平成のいま読んでもほとんど違和感なく読める(時代的な道具立てなどはともかく「人間」って100年やそこらじゃ根本は変わらないのねと思える)ところなんかが傑作とされるゆえんなのかなあと思う。
けど、これだけ嫌いな人間ばっかり出てくる話なので、わたし個人としては、どうにも不愉快な話だったなあ、というのが、未完であれ最後まで読んだとき「やれやれ疲れた、やっと終わった」というのがごく正直な感想である。
ドロドロの昼ドラ、恋愛ドラマが好きという読者にはぴったりかも。っていうかこれ新聞連載だもんなあ、たしかに毎朝手に汗握るよね、こんなの載ってたら。それこそ夫婦で読んで感想言い合ったりしたのかしら当時の読者さんたちは!?

結論としては、わたしにはまだ早かったような。
もう10年くらい経ったら読み直してみたい。