2014/03/30

青空の卵

青空の卵 (創元推理文庫)
青空の卵 (創元推理文庫)
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坂木 司
東京創元社
売り上げランキング: 30,111

■坂木司
いまごろ読む。というか、ようやーく読んだというか。
ご存知、坂木司2002年のデビュー作である。
当時「ひきこもり探偵」と話題になってたのでその存在は当時から知っていたのだがなんだか気が乗らず、目の端にひっかけつつもここまで来てしまった。そしてノンシリーズの『和菓子のアン』をこないだ先に読んじゃった。

3部作の第1作。
主人公が著者名と同じというか、著者がペンネームをデビュー作の語り手から取ったということらしい。
いわゆる「日常の謎」ジャンルの作品で、人が死んだり殺されたりは無い。

坂木司はいまも覆面作家で、生年(1969年)は明らかにしているけど性別は明らかにしていないということでふーん、どっちかなあとか思いながら読んだのだが、まあ、読んだら「これは女性だろうなあ」と思った。本書刊行時は33歳くらいか。
本書を読んでいちばんびっくりしたのは「ひきこもり」と聞いていたのにその青年鳥井真一というのがちゃんと職業に就いていたこと。コンピュータープログラマーなのでそのために外出とかはしないんだけど。でも友人である語り手「僕」こと坂木司が強引に誘えば近所のスーパーに買い物には行く。話が進んで必要が生じると電車とかにも乗っちゃう。
わたしのイメージしていた「ひきこもり」とはずいぶん違って、十分社会性があるなあ。

まあそれはさておき。
読んでる途中くらいから、「これはファンタジーだなあ」とも感じたのだった。それは読了しても変わらなかった。だって社会人の男性同士の友情(?)でこれはナイでしょー。依存しすぎというかナヨナヨくっつきすぎというか。いやまあ別にゲイとかそういう設定ではないんだけど。だいたい坂木が外資系の保険会社を就職先に選んだ理由からしてそういうのありなのかなあ?って感じで…。

いやでも、お話としては嫌いじゃないよ!むしろほのぼのファンタジーだもんフィクションだもんって割り切って読んだら楽しくってトゲが無いから安心だったし。

いろんな日常の謎っていうか、そういうのはあるんだけど、ミステリーと云うよりは普通小説の、人情ものって云ったほうが雰囲気が近い。しかしその人情ものというのも、リアルとか深みとかはそこそこしかないので、どっちかっていうと勧善懲悪エンタメ時代劇を現代でやった、くらいの。「それおかしくない?」「そんな簡単なもんじゃない」「単純すぎる」とか思わないこともないんだけど、いや、これはそういうのを書くことを目的としてる小説じゃないんだから。
社会派じゃなくて、ライトなエンタメ、ミステリ風味深読みすればちょっとBL風?みたいな。漫画化してるらしいけどその表紙なんかモロだったので笑ってしまった。

引きこもりの鳥井に弱点が多いのはともかく、主人公の坂木司のメンタルがちょっとどうかなと思わないでもないけど。っていうか世の中の平均はこんな感じなのかなとか思って読んだけど、アマゾンレビューを見たら「偽善」と感じるひともいらっしゃるみたいで、いやまあそこまではいかないにしても、高校生みたいなキレイなこころのまま社会人になってるって感じかなあとか。

っていうかね。もうね。
鳥井が可愛すぎる!!
んだよなあこの小説。リアルに想像しちゃだめ、ただもう文中の彼が、彼の言動、表情がもだえるほどすんごい可愛いの。殿様俺様王様みたいな無礼な口のきき方、そのぶっきらぼうさに相反して照れてる感じとか…! ツンデレ?とは違うかもだけど。
最初はそれほどでもなかったんだけど、だんだん中盤あたりから「あれ?もしかして大の男が可愛いなんてそんな馬鹿な」とか思ってたんだけどいやもうある時点で確信したね、著者絶対鳥居を可愛く書いてる!確信犯だ!って。

短篇集。「夏の終わりの三重奏」「秋の足音」「冬の贈りもの」「春の子供」「初夏のひよこ」の5篇。
解説は北上次郎で、三部作通して読んでからの解説になっている。

↓ は漫画版の表紙。これはちょっとゴカイを生むだらう…Σ( ̄⊥ ̄lll)