2014/03/28

後藤さんのこと

後藤さんのこと (ハヤカワ文庫JA)
円城塔
早川書房
売り上げランキング: 78,974

■円城塔
円城さんの著作を購入して読むのは初めてだが、その文章を読むのは初めてではないというわたしには珍しいパターン。
というのも、2012年「道化師の蝶」で円城さんが第146回芥川賞を受賞されて後、書店で『Self-Reference ENGINE』とかの文庫をぱらぱらと確かめたらなんだかよくわからなそうな「ザ・前衛文学」っていう感じでだいたいタイトル英語ってなんでやねんという感じでオソレおののいてしまったんであるが、それから後、某新聞の夕刊でエッセイを週一連載されているのをたまたま知り、読んでみたらすんごい普通の親しみやすい日常的な内容だったので「おおこのひとはフィクションは難しいけどなんだかそれ以外は気の良さそうな穏やかな兄さんだなあ」と一気に親近感がわいたんである。年もそんなに変わらないし。うっかりすると読み逃すのだが(っていうか連載曜日も覚えてない程度なのだが)見つけたときは読んでいる。あまり熱心でないのは単に書籍化したらちゃんとまとめて読むつもりがあるからだ。

そんなわけで円城さんのエッセイが出る前に本職(?)のSFのほうの作品もちょっとは読んでおきたい、と思ってあれこれ悩んだ結果、本書を最初に読んでみることにしたのは中を開けたら本文に4色刷りとかが使われていたり、作品中に数学の展開図みたいなのが出てきたり、文章の実験みたいなパズルみたいなのがあったりしてしかも巻末には紫の別紙でなにやら書いたものが挟み込まれていて、とにかく文庫なのに変わっている!とびっくりして楽しくなったからだ(単行本で遊ぶのと、形式決まってる文庫で遊ぶのとでは珍しさが違う気がする)。

読んでわかったが、巻末の紫の別紙はそれ自体が「INDEX」という短篇作品であり、解説で明らかにされていたが単行本ではこの部分は大きめの帯として刷られていたんだそうだ。おおお面白すぎる!

短篇集。
SFというか、安部公房とかむかしの筒井康隆の実験小説的な、「ネオヌル」とかそういう系統の、へんちくりんな作品ばかり。なんとなくわかるもの、よくわからないもの、最初はわかると思ったのにどんどんわからなくなるもの、いろんなのがあったが総合的に云うと「文章は簡潔でわかりやすいのに内容が何言ってんだかというかアタマがおかしいひとが書いたものとのと云いたくなるような支離滅裂さ、だけど感覚的にたぶんわかって著者はズラしていってんだろうなあ」という、そんで好きか嫌いかでいうとけっこう好き~しかもわかんないのに面白いっていうのは全体とか解釈とかはわからなくても部分的な描写とか雰囲気とか展開とか言葉遊びとかユーモアがいいなって思えるからだろうな。

後藤さんのこと ★★★
三色刷りをこういうふうに使うとはね!素晴らしい!「後藤さん」は三分割出来ないけど「後藤後藤さん」にして三分割するとか超おもしろい。

さかしま 
ある種の形式的文章をパロってるんだろうけど、これはなにをひねってるのかなとか考えて読んでいくと結局そんな単純な作りにはなっていないからハズされて、ああそうかーって面白がる感じ。子どもの頃流行った「ゲームブック」というのを思い出した。あと薬の注意書きとか。このタイトルにしてるところがニクいね。

考速 ★★★
なぜか、俳句とか短歌とかそういうのの企画本を読んでいるときと似た感覚になった。こういう「言葉」を題材にした作品って好き。

The History of the Decline and Fall of the Galactic Empire ★★★
こういうのはわかりやすい。パロディっていうのかな。面白い。銀河帝国をいろんな違うものに置き換えながら読んだりね。ひとつのジャンルというか事象のパロじゃないところがポイントなんだろうね。

ガベージコレクション
よくわからんけどこれはそんなに萌えなかった。

墓標天空 ★
これはいっけん少年と少女が出てきて「ボーイミーツガール」みたくわかりやすいかなと思わせるけどそう素直にはいかなくて、しかもちょっと長めなのでダレる。「雌豚」とかあちこちにくすぐりがある、それはこの作品だけに云えることじゃなくて全般的に。円城さんの本質は「おもろいひと」なんだろうなあと思う。

INDEX ★★★
実際に本体を切り離すのは嫌だったのでコピーして製本してみた。豆本みたいになった。切り離す前に裏表ページを探しながら読んでいったらちょっと混乱したけど途中でノンブルと本文文中のページ表記と本文冒頭のページ表記の関係に気づいた、うわあ面白いこと考えるなあ! 楽しい。製本してからもっかい読んだ。やっぱり製本したほうがぐっと読みやすいね。次はどこ?って探さなくていいから。「魔法使い・少年・本」の組み合わせってファンタジーの王道だから萌えるわ~たぶん多くのひとがそうだろう。そこがメインじゃなくてこの作品はその表現方法がメインっぽい感じなのに、でも中身も手を抜かずやっぱりちゃんと遊んでる。巧いよなあ。

解説は巽孝之というひと。
この本の解説というよりは、円城塔の作家論的な解説で、作品の解説が欲しいと思ったのに無かったのでちょっとがっかりしたけどこれはこれで興味深かった。

カバーイラストは市川春子。
カバーデザインは名久井直子。

おーこれ名久井さんだったのかあ。
市川春子ってどっかで漫画の表紙で見覚えがあるなあとググったらやっぱりそうだった。読んだことはないんだけど買おうかどうか迷ったことがあった。



ちなみに↓単行本はこんな。

後藤さんのこと (想像力の文学)
円城 塔
早川書房
売り上げランキング: 322,919