2014/03/02

深夜の初会 内田百閒集成21

深夜の初会―内田百けん集成〈21〉 (ちくま文庫)
内田 百けん
筑摩書房
売り上げランキング: 169,073

■内田百閒
ちくまの集成21は百鬼園先生の対談・鼎談・座談記事をまとめた巻。

あの頃の機関学校★★
(昭和19年)
豊島与志雄 黒須康之介 内田百閒
百閒先生は横須賀の海軍機関学校で教師をしておられたことがあるのでその関係。兵学校とは違いがあるらしい。機関学校というのは特殊ではなく、バランスが取れていて優秀で、素晴らしかったという話。芥川龍之介のエピソード(?)も読めて嬉しい。

豚小屋の法政大学
(談話筆記 昭和27年)
多田基 奥脇要一 内田百閒
法政大学で教鞭をとられていた関係で。騒動以前の話まで。昔は穏やかで良かったなあという内容。(笑い)という表記が頻出し、煩い。

貧乏ばなし
(昭和21年)
中村武羅夫 長谷川仁 
「頬白先生」という映画があったんだね。調べてみたら、古川緑波が百閒先生役だったと。ふーん。
百閒先生といえば借金、貧乏というイメージがついてしまったが貧乏とは清貧とは何ぞやという。画家の貧乏と小説家の貧乏はただの貧乏と違うか。50銭にまつわる思い出など。

ユウモアコンクール
(昭和22年)
徳川夢声 高田保 内田百閒
何か面白いことを喋ってください、というのは困るというのはもう昔っからなんだね。時事が絡んだのもあるけど基本雑談であんまりタメになることは言ってないしユウモアというほどは面白くもない。

対談★★
(昭和22年)
辰野隆 河盛好蔵 内田百閒
クラシック音楽の話とか、漱石先生の思い出とか、桂離宮の話とか。

酒仙放談
(昭和23年)
井伏鱒二 三木鶏郎 内田百閒
「頬白先生」についてまた。ラジオの話、雷の話、貧乏話など。せっかく井伏鱒二なのに文学の話は無い…。

金の借り方作り方★★
(昭和24年) 
獅子文六 森脇将光 内田百閒
お金の話。高利貸しの話。森脇というひとの若いころの話が興味深かった。

逢坂閒談 
(昭和25年) 
三淵忠彦 宮川曼魚 内田百閒
日本各地の珍味の話。メフン、ベラタ、シャコ、シラウオ、鰻の皮鮭の皮、そば等。

薬剤金融椿論 
(昭和25年) 
神鞭常泰 久米正雄 内田百閒
お金を貸す借りるの話。病気の話。

漱石をめぐって★★
(昭和26年) 
安倍能成 小宮豊隆 和辻哲郎 内田百閒
百閒先生は漱石を純粋に尊敬していたが他のお弟子さんは晩年ちょっとねという話。百閒先生は中盤までずうっと黙って聞いてらっしゃる。先輩に囲まれて、かしこまっておられたのかな。質問を投げかけられて、ようやくのご発言。そういえば、『百鬼園随筆』に「太宰に教わって」というような記述があり、太宰治のわけはないし、誰だろうと思っていたらここの225頁に「太宰施門」とフルネームが出てきて解決した。

問答有用 
(昭和27年) 
徳川夢声 内田百閒
お金の話、忘れるために覚える説、小鳥の話、女性に関する「伝説」の真偽。

汽車の旅 
(昭和27年) 
戸塚文子 堀内敬三 内田百閒
汽車、機関車、鉄道サービス。

倫敦塔を撫でる★★
(昭和28年)
宮城道雄 内田百閒
洋行帰りの宮城道雄さん。百閒先生は飛行機がイヤダカラ外国も行かれなかった。

西小磯雨話★★★ 
(昭和31年) 
吉田茂 徳川夢声 内田百閒
なんとこの記事は途中から始まる。最初はかなり警戒していたが、お酒が入ると元総理の吉田茂相手によくもまあ……という目を剥く展開に。乗り物の話、犬猫の話、陛下ラブの話など。

深夜の初会★★★
(昭和31年) 
古今亭志ん生 内田百閒
落語の話とか噺家の話。漱石『三四郎』に出てくる小さんの話とか、お酒の話とか、飛行機の話とか。

虎の髭 
(昭和35年) 
古賀忠道 内田百閒
上野動物園園長との対談なので、そういう話。

漱石先生四方山話★★★
(昭和41年) 
高橋義孝 内田百閒
漱石先生の思い出エピソード。独特の送り仮名の校正の話とか、お酒を召し上がらなかった話とか。百閒先生が漱石先生の全裸を目撃した話など。

解説 阿川佐和子 ★★★
いろは交遊録 徳川夢声 ★★★★★


対談は2人、鼎談は3人、4人以上は座談会。
4人いるはずなのに、百閒先生のご発言がなかなか無いなあというのもあり、やはり先輩に遠慮されているのかなあとか空気を想像する。
吉田茂、志ん生なんていう大有名人もいるけど「ええと、誰?」っていうひとが多くて、収録当時は有名だったのかもしれないけれど、ちょっと簡単な人物紹介略歴くらい載っていてもいいのになあと思ってしまった。内容を読むと、だいたいわかるんだけどね。ああこのひとは大学関係者か、とか、たぶん文学関係の研究者だろうなあとか。
たとえば森脇将光さんという方なんかは、お金を貸すとかそういう話題で出て来られたので「金融業の方?事業家かな。なにしろお金儲けが関係する職業だよなあ、それも成功したひとだよね」などと考えながら読んで、後でインターネットで検索して確認した。まあだいたい合ってるわけだが、例えば「金融王と呼ばれた」とかそういうのは想像ではわからないよね。
宮城道雄さんは琴の大先生だけど百閒先生の作品にたくさん出て来られて、そういうの読んでるととてもエラい方とは思えない親しみやすい感じで書かれているからお馴染みな感じ。井伏鱒二と内田百閒という顔合わせは近代文学ファンには愉快極まるんだけどほんとにざっくばらんな話しかしてなくてね、とか。獅子文六はこういうところに出てくるのかと思った。ちゃんと読んだことが無いのだけど(絶版が多いし)。
阿川さんの対談の現代の名手ならではの感想、解説が面白い。
わたしは徳川夢声というひとを黒柳徹子『トットチャンネル』で高校生くらいのときに知ったクチだが、このひとも昔の本のあっちこっちに登場するので相当人気者だったんだろうなあ。「いろは交遊録」は回想エッセイだが、百閒先生との交流エピソードがものすごく面白い。竜虎相搏つ。変人どうしというかなんというか、すごいなあ。