2014/03/16

ここは退屈迎えに来て

ここは退屈迎えに来て
ここは退屈迎えに来て
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山内 マリコ
幻冬舎
売り上げランキング: 15,267

■山内マリコ
しばらく前(2013年6月)に休日の早朝テレビをつけたら「ボクらの時代」をやっていて、又吉(直樹)さんと川上(未映子)さんと、そしてもうひとり知らない三十歳くらいの長い髪をひとつに束ねた女のひとが話していたのでふーんと思って観た。それが山内マリコだった。
番組は川上さんが圧倒的にボスというか姐御的な立ち位置になっているというか、又吉さんはああいうひとだし、もうひとりはどうやら新人作家なので先輩に遠慮しているふうだったので、川上さんが7割喋っている感じで残り2割を又吉さん、山内さんは質問を振られてはじめてぽつぽつと自分の考えを話す…という感じだった。
そしてこの番組の内容は実はあんまりよく覚えていないのだが、とりあえずわたしのそのときの山内さんから受けた印象は「頭が良くて自分の考えがしっかりある、男性が馬鹿に出来ないタイプの和風美人」だった。
書きながら番組の内容を少し思い出してきたが、男女間の恋愛がらみの話をしていて、又吉さんの発言を女性二人が姐御目線で一刀両断していたっけなあ。明らかに女性陣の方がリアリスティックで、男の甘い夢を鼻でわらっている感じで、いろいろ経験がおありのようだった。

本書はタイトルがいわゆる少女マンガの基本理念みたいな言葉で凄く巧い。
短篇集だが、本のタイトルと同じ作品は無い。
8つの話があるのだが、そのすべてに「椎名一樹」という男性がいろんな年代、その話の主人公から見た立場で描かれるので、連作短篇集というふうに読めるのかも知れない。いずれの話でもとりあえず十代の椎名君はめっちゃモテたということは共通していて、同性にも異性にも人気があったということはわかる。「椎名君と喋った」というだけで舞い上がれるような、ああ、そういう男の子、いたなあ~(すっごく遠い目になってしまうが)みたいな。

本書の作品が書かれた順序とか年月日は不明なのだが、一番最初に書かれたのは最終話で、2008年これによって「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞したという。(因みに同賞第1回でデビューしたのが豊島ミホ)。なかなかショッキングなタイトルで(と云っている時点で古いのかもしれんが)、しかし中身は大したことはあるまいと高をくくっていたら中身は結構ぶっとんでいたというか、よくこんなの若い女性が書いたなあ、相当腹くくってるんだなあと思った。

恋愛体質だとかそうじゃないとかいろんな人間がいて、わたしは相当奥手なので、こういうひとの話はなんだかもうカッコよすぎるというか、スタンスが違いすぎるステージも違うとしか思えない、もし同じクラスにいたとしても友達にはならないだろう、ただもう口を開けてどう相槌をうてば軽蔑されなくて済むかな?と考えなければならない感じなのだが、それじゃあそういうひとの書いた小説を読んでも全然共感しないかというとそうじゃないところが不思議なのだった。いや全部まるっと共感とかではないのだけれど。違いを探せば違いだらけの「設定」なのだけど。
でもところどころでびっくりするくらい、それわかる! という文章があるのだった。
それは山内さんが、ほんとうのことを一生懸命自分の身を削って、自分のこころをさらけだして、書いているからに他ならない、と思う。そしてそれが出来る作家というのが現代にどれくらいいるかというと、実はそんなに、ここまで書いてるひとはいないんじゃないか、大なり小なり、もう少し手加減があるもんなんじゃないかと思う。
誤解があるといけないので念のために断っておくが、これは本書の8篇が「実話」だと云っているのではない。8篇の設定、ストーリーはあくまでも創作、フィクションで架空の話である。しかし、ここで書かれている登場人物たちの「こころ」は本当だなあと。嘘やごまかしをしていないなあと。
だから、同じ設定の体験をしたことがなくても、その気持ちは知ってる、とか、そういう状況でそうなったら当然そう考えるよなあ、とかビシバシくるのである。

.私たちがすごかった栄光の話
.やがて哀しき女の子
.地方都市のタラ・リビンスキー
.君がどこにも行けないのは車持ってないから
.アメリカ人とリセエンヌ
.東京、二十歳
.ローファー娘は体なんか売らない
.十六歳はセックスの齢

目次を書き写しながらなんとなく、これらってなにかの有名な作品とかのパロディになってるとかそういうことはあるのかな?すぐわかるのは「2」の村上春樹だけなんだけど。1も4も8もいかにも「原典」がありそうな。

本書は装丁も素晴らしく、使われている写真もタイトルと合っていて凄くおしゃれだ。ちなみにカバーをはずすと淡い色のボーダーになっていて、これもめっちゃ可愛い。
写真:Morton Bartlett "girl at the beach"1994
装幀:佐々木暁