2014/01/14

わたしの旅に何をする 【再読】

わたしの旅に何をする。 (幻冬舎文庫)
宮田 珠己
幻冬舎
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■宮田珠己
変なタイトルで、変なイラストの表紙で、見るからに面白そうな本であるが、読んで驚くことに中身はもっと面白いのである。素晴らしい。
時々ちょこちょこ拾い読みしていたがまとめてきちんと通読再読するのは久しぶり。ああ初期の宮田珠己節はこうであったなあ、懐かしいことよ、と堪能した。

本書は2000年5月に旅行人から出版された単行本の2007年(平成19年)6月に幻冬舎文庫版である。どうでもいいけどこういう出版情報が同じ1冊の文庫本の中でも表記統一されていないのは非常に不親切というか、文庫の奥付フォーマットが元号表記であるのに、本文がすべて終わった260頁には「この作品は二〇〇〇年五月旅行人より刊行されたものです。」とか西暦表記のみで書いてあるのはどうにかなんないのかなと思う。これはこの出版社だけじゃなくてしょっちゅうあちこちで見かけるんだけど、いささか不便である。

まあそれはさておき。
本書の内容は「あとがき」によれば、雑誌「旅行人」に4年間にわたって連載されたエッセイを加筆修正したものに若干の書き下ろしを加えた、著者4冊目の単行本だそうで、つまり1996年くらいからはじまる。その頃はまだ宮田大兄はサラリーマンだった。
1964年兵庫県に生まれ、大阪大学工学部土木工学科を卒業し、リクルートに就職し、9年と3カ月勤めた後退職し、その後作家として活躍されるわけである。

つまり意地の悪い見方をすれば「阪大出のエリートが一流企業にバブリーな時代に勤めはった後にもっと旅行したいとか言わはって、会社辞めはって、年収は会社勤めのときの5分の1とかになってしもたけど精神的にすっごい楽になったとかいうことが書いてある」わけである。
読む人が読めば「おお、ええ御身分じゃのう」と立腹することもあるのかもしれないが、そういうひとはそもそも本書のタイトル及びイラストなどを見て手に取らないであろうから、余計な心配か。

わたしも就職氷河期に就活をした人間であるので、時々思うには、もし宮田大兄がいまのような時代に苦労の末就職したとして、それでもやっぱり旅行をしたいから辞める、とか考えるのかなあ、ということで、まあよくわからないが、結論としては、旅行云々はさておき、宮田大兄は作家になりたいと小学生のころから考えていたというのがこのエッセイ中に書いてあるし、本文を読めばそういう、文章を書くことが好きだ!というパワーが伝わってくるので、細かい経緯はどうあれ、やはり最終的には作家になったんだろうなあと思う。

っていうか本質的に作家なひとは就職するとかしないとか、そういう次元で考えられることじゃないんだろうなあ。
たぶん、若いときっていろんなことの視野が狭くなってて、例えば「就職できなかったら人生ダメだ」とか思い詰めちゃうこともありがちなんだけど、そうじゃないんだ、そんな単純な損得勝ち負け勘定で人生は判定できるもんじゃないんだ、ということが宮田大兄みたいなひとにはたぶん最初っからわかっているような気がする。わたしはわかるのにだいぶ時間がかかってしまったけど。

人間、自分の人生に本当に必要なこと、大切なことってなんなの?
あんまり本質や理想ばかり追求して自分の資質や度量を度外視していると単純になんにも出来ない口だけ人間になってしまうけど、でも頭の隅っこには常に置いておいたほうがいいような気がする。

話が本書の感想からだいぶズレてしまっているが、まあ再読の感想なので。
……なんでこんな変な感想になってしまったんだろう。
最近読んだ就活を描いた小説があまりにも苦しそうで辛そうだから、というのもあるかな。『何者』とか『ポースケ』の中の1篇とか。
むちゃくちゃ面白かった、宮田大兄大好きだという一言で終わりそうで、そうならないように書いたらこうなってしまったようにも思う。
すみません。
初読みのときの素直な(?)感想はこちら