2013/06/02

たのしいムーミン一家 【何度目の再読かは不明】

たのしいムーミン一家 (講談社文庫 や 16-1)
トーベ・ヤンソン
講談社
売り上げランキング: 177,090

■トーベ・ヤンソン 翻訳:山室静
この文庫版のムーミン・シリーズの原作は子どものころ読んだわけではなくて、成人してから購入しました。それまでムーミンはアニメで見たり、ファンシー・グッズで親しんだりしていましたが、講談社文庫で揃っていたので「そういえば、そもそもの原典を読んでいないな」と思って読んだわけです。

アニメではノンノンとかフローレンとか呼ばれていたムーミンのガールフレンドの名前が無くて「スノークのおじょうさん」と地の文ではあり、自らを紹介する段では「わたしはスノーク家のむすめ」としか名乗っていません。これは、平安時代の女性が「菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)」とか「藤原道綱母(ふじわらのみちつなのはは)」とかしか公式には出てこないのと似ているようですが、でも彼女たちだって実生活ではなんらかの名前を家族間では持っていたはずで、スノークのおじょうさんとはちょっと違いますね。

この原作は1948年に書かれたもので、講談社文庫では1巻目になっていますが、「解説」によればシリーズの最初に書かれたものはこれではなく、1945年の「小さいトロールと大洪水」、次に1946年「ムーミン谷の彗星」という順だそうです。
どうも、この二作は出してもあんまり売れなかったみたいで、それは内容が童話にしては暗かったかららしい(山室氏解説によると「生命の不安にたいするおびえがあった」「そういう作風では、童話が成功するのはむずかしいことですし、もともとそれは童話にふさわしい題材とはいえないでしょう」)。本書「たのしいムーミン一家」は大成功で、英訳され、「ヤンソンさんの名をたちまち世界じゅうに知らせました」ということになったようです。

今回また数年ぶりに読みかえし、やっぱり面白いシーンはよく覚えていました。
スニフがすんごいわがままで嫌われる要素満載で書かれていてちょっとげんなり(発言のたびに「きいきい叫びました」とか書いてあるし、物欲は高いわ、自己顕示欲は高いわ)、なんでヤンソンさんはここまでムーミンの友だちを嫌なやつに書くんだろうと疑問に思えてしようがありません。むしろ、悪役として出てくるモランとかのほうがまともに書いてある気すらする、っていうかモランのなにがいけないの? そういうふうに生まれついたってだけじゃないの。
トフスランとビフスラン(ちっこいやつです)は、みんなのものを次々にぬすんで自分たちのものにしちゃう盗癖があるんだけど、何故かおとがめなし。スノークのおじょうさんがそれを無くして困っているとか訴えても返さないんですよ、おかしくないのかなあ。「なくしちゃったものを、誰かが見つけて自分のものにするのはOK」という文化なのかしら、ヤンソンさんのお国では…。
あと、じゃこうねずみの入れ歯を飛行おにの帽子にいれておいたらなにに変わったかが書いていなくて「わからないひとはお母さんに聞いてみましょう」って書いてあるんだけどこれもいろいろネットでググってみたけど答えが無い問題のようですね。
記憶にあったよりもスノークのおじょうさんがわがままでやきもち焼きのつまんない女の子でした。

などとマイナス面ばっかり書いてしまいましたけれども、総合的に、童話としては面白いんですよ、ほんとに。それは、「ふしぎ」と「ぼうけん」と「まほうのようなこと」が出てきて、学校も会社も無くて、みんな楽しく暮らしているという夢のようなムーミン谷だからなのかな。いろんなわがままとかもみんななんのかんので受け入れて、流していく。独特の空気だなあと思います。