2013/02/21

小鳥来る日

小鳥来る日
小鳥来る日
posted with amazlet at 13.02.20
平松 洋子
毎日新聞社
売り上げランキング: 4,441

■平松洋子
タイトルを最初に見たときぱっ、と思い出したのは吉田絃二郎『小鳥の来る日だ。吉田先生へのオマージュとかもありなのかな?とか読む前に考えたりしていた。今年最初に読んだ小川洋子の新刊は『ことり』だったし、なんだか小鳥に縁があるなあ。

毎日新聞・日曜版に2011年4月3日~2012年12月23日まで掲載されたもの。が、2013年1月15日に印刷され、同月30日発行、と奥付にある。
読了後、それをまじまじと眺めて思った。新聞掲載から書籍にまとめられるまでが早いなあ。これ、平均的なんだろうか。とりあえず単行本にするまえの校正というか加筆修正というか、そういうのをするための期間はほぼ無かったんだろうなあ。
でも、分かる気がする。
だって、読んだから。1篇1篇がどれだけ美しくすっきりと無駄なく仕上がっているエッセイ集だったか。
難しい言葉は無く、でも「選び抜かれたことば」がきっちり推敲されて、収まるべきところに収まっている。
――平松さんのエッセイを読んでいると、「ああこのひとは読書家だなあ」「美しい言葉をどれだけさりげなくもっともふさわしい形でつかう、ということに神経を配っておられるのだなあ」ということをしばしば感じる。日曜日に、毎週、おそらくは多くの読み手が休日にゆっくり自宅の居間で広げる紙面に載せるエッセイ。
平松さんの、場にふさわしい読み物をつむぐ「名ソムリエぶり」がいかんなく発揮されたとみた。

最初に平松さんの肩書を知ったときは「フードジャーナリスト」とか書かれていたのだが、ここ数年は「エッセイスト」のほうが多いようで、本書も特に食べ物や料理の話が多いことはなく、いわゆる身辺雑記、身の回りで見たこと聞いたことをもとに書かれている。

とっっっても美しい装丁の御本で、装幀はかのクラフト・エヴィング商會。ちょっとざらつきのある手触りの落ち着きのある白い表紙に黄緑のこれは、版画? 小さくアルファベットでkotori kuru hi hiramatsu yokoと書いてある。カバーをはずすと上品なグレイ。背表紙のラインが美麗である。見返しは直球の桃色。標題紙は少し透け感のあるきれいな紙で印字は淡い灰色。花布はごく淡い卵色で栞紐は萌黄色、帯は表紙と同じ紙でで縦縞がありカバーの緑の丸がうっすら透けて見える……。

本書のエッセイはどれも素晴らしかったが、特に好きだったのは「五月の素足」「猫の隊列が通る庭」「奈良うちわ、ゆらゆら」「なでしこの咲く朝」「ベトナムで帽子をかぶる」「こっそり甲羅干し」「昼下がりはご陽気に」「玉子屋のおばあさん」「いなり寿司通り」「ありがとう」「おとなの椅子取りゲーム」「レース編みのすきま」「女三人、酉の市」「記憶のなかに棲む家」「ひよこの隊列、ごきげんさん」「ストッキングの警戒警報」。
繰り返し楽しんでいきたい、大好きな本がまた増えた。

第28回講談社エッセイ賞 受賞第一作、と帯にあるから「どの作品でだろう」と確認したら野蛮な読書でだそうだ。