2013/02/03

熊の敷石 【再々読】

熊の敷石 (講談社文庫)
熊の敷石 (講談社文庫)
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堀江 敏幸
講談社
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■堀江敏幸
『熊の敷石』には「熊の敷石」という中篇と「砂売りが通る」「城址にて」の2つの短篇が収録されているが、今回再読したのは「熊の敷石」のみで。というのは、この話がすごく好きで、今回読みかえしてハアやっぱり良いなあと思ったんだけど、次の話は舞台とかテーマが全然違うからその読後の余韻をそのままにしておきたかったからだ。

フランスのパリから電車で2時間くらいのカン、友人が住んでいる町の近くにあるアヴランシュあたりがこのお話の舞台。アヴランシュからはモン・サン・ミシェルがはるか遠くに見えるらしい。

久しぶりに会うことになったユダヤ人の友人の話、フランス語の辞書を作ったリトレの話、友人の大家さんとその盲目の幼い坊やの話。淡々としつつも粘り気があるというか、堀江敏幸独特の語り口が読んでいてとても心地よい。

  彼の言いたいことは、それこそ「なんとなく」わかるような気がした。私は他人と交わるとき、その人物と「なんとなく」という感覚に基づく相互の理解が得られるか否かを判断し、呼吸があわなかった場合には、おそらくは自分にとって本当に必要な人間ではないとして、徐々に遠ざけてしまうのがつねだった。ながくつきあっている連中と共有しているのは、社会的な地位や利害関係とは縁のない、ちょうど宮澤賢治のホモイが取り逃した貝の火みたいな、それじたい触れることのできない距離を要請するかすかな炎みたいなもので、国籍や年齢や性別には収まらないそうした理解の火はふいに現われ、持続するときは持続し、消えるときは消える。不幸にして消えたあとも、しばらくはそのぬくもりが残る。

解説は川上弘美。