2013/01/07

殺す者と殺される者

殺す者と殺される者 (創元推理文庫)
ヘレン・マクロイ
東京創元社
売り上げランキング: 348,231

■ヘレン・マクロイ 翻訳;務台夏子
原書刊行は1957年で、過去に一度邦訳出版されたのち長らく絶版になっていたが、2009年創元推理文庫50周年記念として読者復刊リクエストを募り、見事第3位を獲得したため、新訳で刊行されたものだそうだ。ちなみに第1位は『幽霊の2/3』。

これはベイジル・ウィリング博士ものではなく、ノン・シリーズだ。
思いがけない遺産を相続した主人公は、昔住んでいたことのある、亡き母の故郷に移住してのんびり暮らすことにした。そんな彼の周辺で少しずつ異変が起こる……。

解説氏も書いていたが、この作品の最初の文章がちょっと面白く、書店で冒頭数行読んで買うかどうか決めることが多いのだが、これはそれで決めた。
引用してみよう。

  図書館は自伝をフィクションとして分類すべきだ――――わたしはかねがねそう思っていた。われわれは心ならずも自身の人生の半分以上を忘れてしまう。

ミステリーのはじまりとしては、なかなかユニークだと思う。そして読んで驚き、感動したのだが、この文章は単なる飾りではなかったのだ。この作品は、「主人公の記憶」が大変重要なカギとなっているのである。

ネタバレをしたくはないので具体的には書かないが、このミステリーの後半で判明するある「事実」そしてそこから描かれるシーンにわたしはビックリギョーテンした。そそそそんなのって有り!?としばしボウゼン。
だがまあ、それも含めて頭からシッポまできちんと整合性が取れる美しい仕上がりになっているし、二番煎じは不可能だが、うーんよくもまあ、こんなのを書いたよなあ、としばらくあれこれ考えてしまうのだった。そしていろんな描写にすべて意味があったんだ、ということを確かめて、讃嘆するほかないのであった。

この小説は分類するとしたらサスペンス。
中盤以降の怒涛の展開に、スリリングな驚きと喜びを味わうことが出来る逸品だ。