2012/08/20

ウはウミウシのウ ――シュノーケル偏愛旅行記

ウはウミウシのウ―シュノーケル偏愛旅行記 (白水uブックス)
宮田 珠己
白水社
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■宮田珠己
先日、ジュンク堂に行ったら、“もしも明日自分の店が閉まるとしたら、 どうしても今日売っておきたい1冊”フェアというコーナーがあって、壁いっぱいの本が書店員各氏の手書きPOPと共に紹介されていた。うおお、楽しい! 本屋大賞がちょっとメジャーな方向に行きすぎちゃっててまぁそれはそれでいーかもしんないけどどうせ書店員さんというプロが関わるならもっとマニアックなセレクトであって欲しかった気がすると常々思っている身には「キタコレ!」なナイスな企画である。

じっくり見せていただいている中にこれがあった。えっ、うわっ、宮田珠己の本だあ、アマゾンで在庫無かったやつだ~(版元の白水社には在庫僅少とある)。他の同氏エッセイとかで「ウミウシのことしか書いてない変な本らしい」とは知っていて、ウミウシにそんな興味ないからどうかな~と思っていたんだけど、うん、ジュンク堂書店のどなたかは存じませんが「明日店が閉まるとしたらどうしても今日売っておきたい」という心意気や良し!謹んで読ませていただきやしょう!(がしーん!と握りこぶしを固めたい)

本書は2000年2月に小学館から出版された単行本が何故か白水社のuブックスとして2007年3月に出されたものだ。白水のuブックスというと物凄いお堅いラインナップなんだが……正直そこにまさかの宮田本、しかも内容がウミウシって超異色というか違和感なんだが、いやはや素晴らしすぎる。「uブックス版あとがき」にはこうある。
いくら読んでも読者の見識が深まらないこのような本を、格式あるuブックスに収録しようなどと、見境いのない勇気をふるっていただいた白水社和久田氏には大変感謝している。
おおおお、わたしも宮田大兄のファンの末席をけがさしていただいているひとりとして、和久田氏に感謝の念を送っておきたいぞ。

いま引用した「いくら読んでも読者の見識が深まらない」というのは、もちろん著者の謙遜ではあって、読んでなーんにもタメにならないかどうかっていうのは読み手の意識の問題だからあれなんだが、まあ正直この本は「読んで自分の見識を深めよう」というスタンスで読むタイプの本でないというのはそのとおりかなと思う。

面白い文章を読みたい! 浮世のわずらわしさを気楽な読書でちょっと息抜きしたい! そんな貴方にこそ本書をオススメしたい。あ、あと海の生き物好きさんが読まれるとにこにこしちゃうだろう。

ウミウシとか変なカタチの海の生き物が好きで、じっくり観察したいという著者が世界のあちこちの海でシュノーケリングし、そこで見たことをご自身のイラスト付きで書いてある、ただし難しいことや勉強になることはいっさい抜きで、というのがこの本だ。1998年くらいはサンゴ礁があちこちで温暖化によって死滅している時期で、そのことへの憂いと警告というのが本書に出てくる唯一の(?)真面目な面だ。あとは愉しく笑って読まれたい。

海の世界ではダイビングのほうがシュノーケルより多いらしくて、出掛けるたびにダイビングを薦められたりなんだりするらしいが、宮田大兄にいわせればダイビングは「めんどくさい」んだそうだ。でもその主張がなかなか理解してもらえないんだそうだ。

それにしてもネットでウミウシの画像を検索していろいろじっと見てみたが軟体系がいまいち苦手なわたしにはちょっと……。海の中で生きているのを見るとまた違うのかもしれないけどうーん。
海の中の生きているイカはちょっと見てみたいと思ったけど。

※追記。2014年7月、幻冬舎文庫から増補版が出た模様。